笊ヶ岳はいい山です。山行記+貯金記

 静岡、長野、山梨県の県境に延びる南アルプスに、笊ヶ岳という山があります。実際は主稜線からははずれているのですが、そのために主稜線の眺めは格別、という話だったので、7月15日から17日にかけて行ってきました。

 笊ヶ岳はコースによっては日帰りも可能らしいのですが、最近テントを買って、それを使ってみたかったので、早川町の田代入口バス停から入り、雨畑湖に下りるというコースにしました。

 前日は飯田線の身延駅の構内で一泊させてもらい、翌日のバスで田代入口まで行きます。ここから林道に入りますが、既にこの林道も「崩落注意」の状態でした。1時間ほどゆっくりと登り、9時40分、登山道入り口に到着。この辺で雨が降り出してきました。天気予報は怪しげだったので、これからの天気もあまり期待できないなと思いながら、「通行止」のトラロープをまたいで沢沿いの道に入っていきます。

 いきなり金属製の橋を渡ります。橋を2つ3つと渡るにつれ、この先の道はある程度予想できてしまいます。登山口から30分、非常に大きな土砂崩れの跡に出くわしました。道や鉄製の橋は埋まっていて、自分がどの方向に進めばいいかわからなくなるほどでした。またその先にも橋が45度に傾いていて渡れないところや石が落ちているところなどがあり、ひとりでヒヤヒヤものでしたが、11時15分、東京電力の管理小屋に到着しました。ここには壊れそうだけれど使えるベンチがあり、また水もあります。吊り橋の前で写真を撮り、おにぎりを食べて出発しました。

 ここから30分ほど登っていき、いよいよ沢と別れます。水を補給し、いざ登山道へ。このあたりで2人の男性と会いましたが、これは全行程の3分の2にあたります。あとはありきたりの登山道をぐねぐねと登っていき、13時30分、水が流れているところに出ました。何か小屋がありました。ここから9分登ると今夜の宿泊地、転付峠に到着。目の前を車道(非舗装)が走っています(写真)。

 早速テントを張り、中で一眠り。雨は降ったりやんだりしていましたが、展望台があるという事なので行ってみたところ、景色は悪くはありませんでした。また翌日気付いたのですが、ここから2分ほど南に行ったところにはトイレもあります。この日の夕食はカレー。一人だと特に何もすることがなく、あしたは早いので、7時頃には寝ました。

 16日は、来るときに通過した水場で水を4リットル補給し、4時20分に出発しました。林道を南に行き、5分ほど歩いて下に続く別の林道と別れましたが、このあたりからは「林道」とは名ばかり、まるでバイクも通れないほど。途中には土砂崩れの跡や、間に木が高く立っているところなどもあり、林道ではありません。それでも5時、ここが林道の終わりだと分かるところに到着しました。ここには笊ヶ岳の方向を示す小さな標識もあります。

 ここからは「本当の」登山道をゆっくり高度を上げていきます。鬱蒼としていますが静岡県側からは並みの強さの心地よい風が吹いていました。この日は、静岡県側を歩いている間は本当に快適な山歩きでした。

 この道は所々見えなくなっているところもありますが道を見つけるのは楽で、300メートルごとに早川町が設置している標識も助けになります。林道終点から1時間15分で、天上小屋山に到着。主稜線が見えます。日も出てきました。ここから40分歩き、三等三角点とケーブルテレビのアンテナがある生木割山に着きました。テントが2張ほど張れそうですが、展望はありません。

 歩き始めて13分、巨大なガレの上に出ました。この上を歩いていき、少し行くと偃松尾山の頂上への分岐と思われる場所に着きます。ここから道は少し分かりづらいのですが下っていき、水場マークを見つけました。ザックを置いて水を探しに行ったのですが、テープに沿っていったところ小さなガレに出くわし、その先の道が不明瞭だったので、結局戻ってきました。

 ここから30分、最低鞍部のあたりに椹島への分岐がありましたが、それと一目で分かるような標識はなく、下に赤テープと道が続いている、といった感じでした。ここから登ること40分、いよいよ笊ヶ岳に到着です。

 笊ヶ岳はすばらしい!行ってみれば分かります。個人的にはここで一泊してもいいくらいです(場所がないけど)。でも人はいません。

 時間があったので小笊にも行ってみましたが、ここには小さな標識が2個ほどあるだけで、景色もあまりよくありませんでした。

 残念ながらいつまでもいることはできないので、11時05分に出発しました。ここからはロープなどもある下りで、20分で最低鞍部に着くとまた登り、出発から50分ほどで布引山に到着。はじめはここで泊まるつもりだったのですが、まだ行けたのでもう少し行きました。といってもあとは下るだけで、13時45分、桧横手山に到着し、テントを張りました。途中に水場標識があり、それにつられて少し行ってみたのですが、これは全くのダミー。本当の水場はもう少し下にあったらしいのですが自分には分かるはずがなく、転付峠で4リットル汲んで全く正解でした。

 この日の夜は皆既月食が見えるということだったのですが、木に隠れて見えなそうだったので早めに寝ました。この日すれ違ったのは、日帰りで笊ヶ岳に登りに来たという男性一人。もちろんテン場にはだれもおらず、寂しいというより怖い夜でした。

 翌日も4時半出発。本当に下りだけなのですが、残りの水が少なくなって苦労しました。軌道跡などを過ぎて、どんどん沢の音が近くなってきます。6時13分、待望の広河原(沢)に到着しました。沢を慎重に渡り、荷物を降ろして、頭を洗ったり歯を磨いたり体を拭いたり水を飲んだり。沢に到着したときはかなり嬉しい瞬間でした。

 ここからの道は沢沿いなので楽です。石がゴロゴロしていて歩きにくいのも最初のうちだけで、あとは散歩をしているような感じでした。40分で、一軒家とトイレのあるところに到着し、まもなく林道に出ました。林道はタイヤの跡もあり、結構使われているのかもしれません。林道を30分歩いて老平のゲートに到着。10分で雨畑です。

 普通なら山行記はここで終わるのですが、自分にはまだやることがあります。今日は一日、郵便局めぐり。早川町の硯島局からスタートしました。

 ここから4〜5キロほど離れた所にある七面山口局に向かって早歩きで歩いていると、硯島局の局員(局長?)さんが途中でひろってくださり、そのおかげで七面山口のバス停でバスに間に合いました。七面山口局は数年前まで「本建」という局でしたが、棟上げをして改称したそうです。

 バスで曙入口バス停まで行き、ここから40分ほど歩くと曙簡易局です。さらにトンネルを越え、1時間ほど歩くと52号線に出て、切石局。外見からは分かりませんでしたが、集配局です。さらに共和局に行き、次は大須成簡易局に行くつもりなのですが、場所が分かりません。局員さんも分からないようで、さっき行った切石局に電話をしてくださった結果、もう一回切石局に行くことになり、そこで地図を手にいれて、いよいよ大須成局に向かいます。

 大須成局は国道から結構離れているようで、重い荷物を背負って行くのは結構苦痛だったので、途中のバス停に荷物を置いて空身で行きました。ここから歩くこと30分、大塩の集落に入ります。見ると旧農協の建物があり、そこには「郵便 為替・・・」という例の看板もぶら下がっていました。大須成局はそこからすぐ、診療所と同じ建物にあります。

 玄関には木で出来たいい感じの看板が3つほど並んでいました。中に入ると右側に窓口のようなものがありますが、カーテンがしてあります。「まさか、今日は休み?」とか思いながら左の20畳くらい(もっとあるかな)の大広間に目をやると、隅っこに簡単な仕切りがしてあって、その入り口の扉には手書きで「大須成簡易郵便局」の文字があり、中には女性の局員さんがいました。

 暑くて喉が乾いていたので水をもらえないか頼んだところ、コップいっぱいの水を下さった上に、桃を丸ごと一つ頂いてしまいました。大広間で扇風機にあたりながらおいしい桃と水を頂きました。普段見かけるものよりは固い桃なのですが、このあたりでは桃は皮を向かずにそのまま食べるという事で、これがまた結構いけます。

 ここでは貯金の他に、所用で為替もお願いしました。局員さんは「あんまりやらないから慣れていないのよ」とか言いながら奥からノートを引っ張り出して為替を発行してくれました。局員さんはここで診療所もやっていて、また昔は先ほどの農協でも同じように働いていたそうです。今は郵便局は町の委託だそうです。いやいや、本当にいい郵便局でした。これだから郵便局巡りはやめられません。

 この日はその後西島局に行き、それから富士川を渡って峡南局に行ったところで4時になりました。駅の近くのスーパーで冷やし中華を買って食べ、それから帰途につきました。
(2000/7/15-17)