●バーコードと言っても
「郵便バーコード」というものをご存じですか?おそらくほとんどの方は「郵便とバーコードにどういう関係があるのか?」と思われるでしょう。
バーコードといってもいろいろあります。一番なじみがあるのは、いろいろな商品に付いている、細い線と太い線、数字から出来ているものでしょう。郵便でも、大事な物を送るときに使う書留郵便などではそのようなバーコードを使うみたいですが、この仕組みはよく分からないので以下ではふれません。
では、「郵便バーコード」とは何でしょう?送られてきた葉書や封書を手に取ってみてください。バーコードみたいなものがあるかもしれません。「もしかして、これかな?」と思った人もいると思います。下のような図柄ではないでしょうか?
●カスタマーバーコード
これが郵便バーコードのひとつ、カスタマーバーコードと呼ばれるものです。あとで触れますが、簡単に言うとここには相手先の住所のデータがつまっています。つまり、このバーコードから住所が読み取れるわけです。もちろん普通は、人が読むのではなく機械が読み取ります。
何故このようなバーコードがあるとよいかというと、郵便局にある機械は葉書や封書に書かれた住所を読み取っているのですが、時が汚かったり曖昧だったりすると、これがうまく読めないことがあります。しかしちゃんと規格化された上のようなバーコードが印刷されていれば、読み取りに失敗する確率がうんと少なくなります。
このため郵便局では、一度に多く送る郵便物(請求書、ダイレクトメールなど)に上のようなバーコードが印刷されていれば、郵便料金を割り引くという制度を設けています。そしてそれに対応して、宛名を印刷するときに上のようなバーコードも一緒に印刷するという印刷機も発売されています。
●隠れたバーコード
・・・しかし、一度にたくさんの郵便物を送るような送り主はほぼ大口に限られていて、一般の人が上のようなバーコードを宛名に印刷することはまずないでしょう。「なんだ、郵便バーコードってそれだけの話か」、いえいえ、それではもう一度手紙や封書を手に取ってみてください。ほかに何かそれらしいものはないでしょうか?
よほど運がよくない限り(というか紙の材質がよくない限り)、何も発見できないでしょう。発見できないように「して」いるのです。もしもこれが見えてしまったら、たちまち「郵便物が汚れてるぞ!」という苦情が郵便局に殺到するのではないでしょうか。下の写真を見てください。
驚きましたか?
「こんなのが印刷されているのかはこの葉書だけじゃないの?」なんて思われるかもしれませんが、おそらくみなさんの手元にある定形郵便物(葉書、80円〜90円の封書)の80%以上には上のような変な線がたくさん印刷されているのではないでしょうか。これは投函してから相手先に届く途中で経由した郵便局で印刷されているものです。
上の右側の写真は葉書に紫外線(ブラックライト)を当てたもので、このように郵便物には、目には見えないけれど紫外線で見える特殊なインクがべたべたと印刷されているというわけです。バーコードらしき線は2本入っていますが、これがIDバーコード、局内バーコードと呼ばれるものです。
それではこれらのバーコードが何を表しているのかというと、局内バーコードはさきほどのカスタマーバーコードと同じように相手先の住所を表していて、一方IDバーコードは、このバーコードが印刷された局名や日時などのデータが詰まっています。これらについてのあとで触れていきます。
●なぜバーコードが必要なのか?
郵便局はなぜこんなにバーコードを使っているのでしょう。
各地から出された郵便物は、一度近くの大きな郵便局(集配局A)に運ばれたあと、地域区分局と呼ばれる大規模局(東京23区は「新東京郵便局」、多摩地区は「東京多摩郵便局」、神奈川は「横浜郵便集中局」または「綾瀬郵便局」、などというように全国に百弱あります)に運ばれます。そしてこの地域区分局同士を結んでいるトラック便、鉄道便、航空便などによって相手先の地域区分局に運ばれ、そこからまた大きな郵便局(集配局B)に分散し、集配局が各戸に郵便物を配達する、という流れになっています(概念図)。この流れの中で、上のようなバーコードを印刷するのは主に集配局Aにある機械です。そしてこのバーコードがのちに集配局Bで大きな役割を果たします。
集配局Bでは、郵便物を配達するわけですから、配達順に郵便物を揃えなければなりません。しかし郵便バーコードが導入される以前(平成10年2月導入)は、この並び替えの作業は手で行っていました。それが、上のような体系化されたバーコードを読み取ることによって、この並び替えが機械で出来るようになりました。もちろんすべての手紙がちゃんと読み取れるわけではないので一部は手作業ですが、手間が大きく省けたことは間違いありません。
これが局内バーコードの役割で、もう一つのIDバーコードはどうやら不着郵便物や迷子になった郵便物などを調査するときに役立っているようですが、はっきりとは知りません。