TJAR2012ほぼ逆走記(2012/8/10-17)

 日本海から太平洋までアルプスを8日間で駆け抜ける「Trans Japan Alps Race」(TJAR)というレースがあります。今年はぜひ出場したいと思っていたのですが、事前に大会要項をよく読んでおらず、「昨年以降2度のビバーク経験がある」という要件を満たさなかったため選考会に出ることができませんでした。

 それならばということで、今年は2年ぶりの太平洋〜日本海横断を敢行!2年前は9日間かかった行程を、今年はTJARの制限時間と同じ8日間以内で横断を目指します。しかも今年はちゃんとTJARと日程を合わせて、道中でTJARの選手を応援する計画です(^-^)


【荷物の準備】

 長大山行となると、まず色々と考えなればいけないのが持ち物。限られた容量のザックの中に、必要かつできるだけ軽いものを詰める必要があり、ウルトラライト(UL)の品物に色々とお世話になります。幸い2年前の山行の経験があるので、その時に持参したものをベースに、前回の経験を踏まえて削れるものは削り、必要なものだけを最小限付け加えることにします。

 テントは前回と同じくterranovaのLaser Photon Elite。トレランの場合、軽さを重視してツェルトを持参する方も多いですが、自分は夜寒かったり内部に露が付くのが嫌いなのでテント(しかもダブルウォール)は絶対条件です。Laser Photon Eliteはダブルウォールにもかかわらず700gと軽量で、居住性も悪くないので山でも平地でも重宝しています。前回の山行ではポールを折ってしまったので、それだけは気を付けないと(^^; テントの床を保護するためのグラウンドシートと、軽めのペグ(12本!)も持参。テント内で快適に過ごすための銀マットシュラフ(isuka エア280Xショート)も自分的には必需品です、なんて言ってるから荷物が軽くならないんだな(笑)

 食料は、山の上での朝食・夕食用にアルファ米を13食分持参。1回で2食分食べることも想定して多めに持っていきます。また、山に入って最初の方で食べる予定のカップラーメンは、食べ終わった後は食器として使う予定。それ以外のおかずはレトルトスープと乾燥カレーだけにして、前回重宝したミックスナッツ、黒砂糖、マヨネーズを今回も行動食として持っていくことにしました。昼食は基本的に山小屋でがっつり食べる計画です。
 コンロはお湯を沸かすことができれば十分なので、軽くて小さなアルコール用コンロを持参。ウルトラライトで有名な三鷹のHiker's Depotのオリジナルです。
 他にサプリメントとしてパワージェルとカーボショッツを10袋、アミノバイタルの粉末を8袋持参。ジェルは10袋で450gになり、ザックに詰めようとして結構ずっしりと来ることに今更ながら驚きました。

 雨具は上がORのヘリウムジャケット、下がGOLITEの製品(品目不明)。GORE-TEXそのものではありませんがそれっぽい機能が付いていて、水蒸気は通すけれども水は通さない(らしい)という山用の軽い雨具です。
 その他、防寒下着麓着(できるだけ軽くハーフパンツとTシャツ)、ライトセルフレスキュー用品、地図やコンパス、携帯電話、ノートなどの小物等々を持参。こまごました物ばかりですが、積もり積もると結構な重さになるので、それぞれをできるだけ軽くするよう気を使います。たとえばノートは、ザックのバックルのポケットに入るサイズで、ペンもできるだけ小さいものを銀座の伊東屋で購入しました。財布は持参せずビニール袋で済ませます。

 シューズはクッション性のあるSALOMONのXA PRO 3D ULTRAを選択しました。前回履いた靴(asics GT-2150オールロード)は山行後半にソールのつま先部分が剥がれてカブトムシの角みたいになってしまったので、今回は先っぽが剥がれない形状のものというのが必須条件。それ以外には特にこだわっていません。

 今回新たに持参したのがFOMA用のソーラー充電器。前回の山行では携帯電話の電源が途中で切れてしまったので、山でも充電できる太陽電池式充電器を探していたところ、ドコモが純正品を販売しているということで即購入。心配していた重さも200gとそれほどでもなく、ザックの天蓋に忍ばせることにしました。

 そんなこんなで、荷物を削ろうと思っても「これは必要だろう」ということになって結局ほとんど削ることができず、さらには新たに持参したギアもあって、結局は前回とほとんど同じ、水を除いて約10kgという重さになってしまいました・・・。TJARの選手の中には荷物4kg台という方もいるそうで・・・ぜひ見習いたいものです(^^;

     

     

 

品目 種類 重量 備考
ザック karrimor trim 35 810g
ザックカバー paine 30L用 145g 中央アルプス登山中にザックカバーのゴムが切れたため、以降はたるんだ布地を紐を結んで何とかしのいだ。
テント terranova Laser Photon Elite 730g テント、ポール、収納袋
グラウンドシート arai トレックライズ用アンダーシートT1 185g 袋込み
ペグ arai 正方形のスティックペグ(10g)×12 120g
銀マット 1cm厚のロール型の銀マット 220g 市販のものをテントの広さに合わせて少し切断
シュラフ isuka エア280Xショート 570g 袋込み
雨具 上:Outdoor Research(OR) ヘリウムジャケット 170g
下:GOLITE 品目不明 140g
ポリタンク EVERNEW エバーポリタン2L 170g ハイドレーションシステムは持参せず
g
コンロ・コンロまわり ・Hiker's Depot アルコール用コンロ 18g
ゴトク(コンロ固定用) 27g 包装込み
風防(アルミ箔) 2g
ライター 20g
燃料 アルコール(250ml程度) g ペットボトルに入れて持参
クッカー EPI ATSチタンクッカー(一人用) 160g 袋込み。その他、カップラーメン(大・中)の空き容器も食器に使用
ロールペーパー トイレットペーパーの芯を抜いて持参 約80g
ライト PETZL ティカ2 80g 単四×3本 含む
予備電池 単四×3本 35g
セルフレスキュー用 消毒液 100g 靴擦れ防止パッドは靴擦れの防止のために何枚か使用した。中央アルプスで手を擦りむいた時に消毒液・ガーゼ・テープ・絆創膏・ウェットティッシュ使用。その他は使用せず
三角巾 56g
ガーゼ 38g
テープ 12g
絆創膏 14g
靴擦れ防止パッド 20g
サロンパス 39g
ウエットティッシュ 32g
ワセリン 50g
ホイッスル 8g
レスキューシート 51g
29g
予備メガネ 78g
スタッフバッグ 17g
ソーラー充電器 ドコモ FOMA ecoソーラーパネル01 205g 携帯の電源をほとんど切っていたため電池は最後まで残存。お試して20分程度充電したのを除き使用の機会無し。これもやや戦犯か?
その他小物 登山地図(5種類) 165g
コンパス 20g
反射材(UTMF) 12g
通帳、保険証、登山届予備、身分証、切符など 120g
携帯電話×2 210g
カメラ 210g
AC充電器(携帯・カメラ) 160g
腕時計 30g
メガネ 16g
ノート、ボールペン 35g
10g
歯ブラシ 13g
紙幣、硬貨 g
輪ゴム 1g
缶バッジ 3g
袋類(ゴミ袋、スーパーの袋など) 約100g
食料 アルファ米 13食分 1450g 全て消費。内容量は1300g。尾西の2食分タイプは切り込みが無いので注意
服部幸應の香るカレー×2(チキン・野菜) 70g 1袋消費
ミックスナッツ 350g ほとんど消費
黒砂糖 300g ほとんど消費
マヨネーズ 150g ほとんど消費
しじみわかめスープ 約10袋 75g 半分程度消費
カップラーメン×2 180g 全て消費
井村屋 スポーツようかん×2 120g 1個消費
サプリメント エネルギージェル 10袋 450g 今回の一番の戦犯。エネルギージェルと固形菓子は全く消費しなかった。レースなどで手軽にエネルギーを採りたいときは重宝するが、山小屋などで食べ物を調達できる山行ではエネルギージェルは必要ないと思う。
ソイジョイ、アミノガレット 1本ずつ 60g 消費せず
アミノバイタルプロ 8袋 40g 4袋消費
シューズ ・SALOMON XA PRO 3D ULTRA 380g
ウェア 半袖ウェア 150g 靴下がすり減ったため、途中で新しいものを購入して履き替え
ハーフパンツ 125g
帽子 100g
靴下 50g
タオル 100g
予備ウェア 半袖ウェア 150g
ハーフパンツ 125g
靴下 30g
下着類 ユニクロ ヒートテック上 150g 防寒用の下着を上下それぞれ2種類持参したが、全く使用せず。重いだけだった
ユニクロ ヒートテック下 125g
防寒用アクリル下着(上) 185g
防寒用ウール下着(下) 250g

計:約7.1kg(ベースウェイト)+水・燃料・食料

※網掛けの紫は身につけるもの。黄色は変動が大きいもの。



【スタートまで】

 今回の山行はTJARと同じく8日以内での完走を目標にしていますが、道中には未訪問の郵便局がいくつかあるので、可能ならばそこは平日の昼間に通過したいもの。特に気になっていたのは伊那市の高遠周辺の郵便局と、木祖村の小木曽簡易郵便局、地鉄立山駅・有峰口駅周辺の郵便局です。(ちなみに地鉄立山駅周辺の郵便局は14日(火)〜16日(木)はお盆休みのためNG!)さらには静岡県の長島ダム、井川ダム、長野県の美和ダム、味噌川ダムも訪問してダムカードをゲットしたいところ。
 そんな条件を考慮して、郵便局の通過が平日になるように8月10日(金)00時に静岡市の大浜海岸(TJARのゴール地点)をスタートし、静岡市内や立山以降などのコースはTJAR正規コースにこだわらず別のルートを通って、17日(金)24時までに富山湾のゴールを目指すことにしました。


 木曜夜。お盆前だというのに仕事がけっこう溜まっていて、職場に泊まったりすることもあって本当に出発できるのかと心配でしたが、何とか18時半に職場を抜け出すことに成功。残っていた出発準備を急いで終わらせて、東京駅から高速バスで東名静岡ICバス停へ。
 天気は曇りですが雨は降っていません。暗い中を大浜海岸まで歩き、海岸でシューズを塩水に浸す「儀式」をとり行います。


 腕時計で時刻を確認。3、2、1・・・、0時になったのを確認していざスタート!8日間の長い旅の始まりです。






【1日目 8月10日(金):大浜海岸〜横窪沢小屋】

 1日目はいわば前哨戦、大浜海岸から南アルプスの南の玄関口の井川を目指します。大浜海岸からTJARの正規ルートで逆走するなら口坂本経由で井川ですが、自分は長島ダムでダムカードをゲットしたいので、まずは峠越えをして大井川鉄道の千頭駅に向かいます。9.5kgのザックを背負っているのでスピードは全く出ませんが、まだ先は長い長い、ここは気楽に一歩一歩。

 

 道中に郵便局があると、カメラの電池残量を気にしながらもつい写真を撮ってしまいます。写真は2時頃に通過した中藁科郵便局と、3時頃に通過した清沢郵便局。

 3時25分、バス路線の終点になっている久能尾集落に到着。自動販売機でポカリスエットを買って椅子に座って飲んでいたら、犬が吠え出していつまでも哭き止まず、住んでいる人に何事かと家の窓から顔を出して確認される始末・・・ご迷惑をおかけしました。

 久能尾から先は勾配のややきつい登り坂、林の中に入って道も細くなり、霧っぽくなってライトを付けないと道がわからないような状態でしたが、淡々と走っているうちに夜も明けてきて、やや涼しく走るにはちょうどいい感じになりました。5時20分に峠に到着。峠からの下りは勾配がけっこう急で、2年前はザックの重さで肩が非常に痛くなったのが思い出されます。今回は前回の反省を踏まえて、ザックの紐に銀マットの切れ端を縫い付けているので、衝撃は幾分和らいでいます。

 山肌のカーブを曲がると千頭の街並みが姿を現しました。街並みを俯瞰できる場所はいつでも気分がいいものです。6時30分、千頭に到着。

  千頭市街と千頭郵便局

 スタートしてから6時間半走り続け、そろそろお腹が空いてきました。まだ朝早くて開いている店が無かったので、とりあえずペットボトルのコーラを購入してエネルギー補給。ゆっくりと走っているのでそんなに疲れているというわけではありませんが、30分ほど駅で休憩します。
 天気は悪くなく、むしろ暑くならないかが心配。それでも風が吹いている分いくらか心地よく走ることができます。途中、大井川鉄道の線路沿いを走っている時に列車が通ったので突発的に撮影。都会では考えられないくらいゆっくりと列車が通り過ぎていきます。

 

 8時ちょうどに長島ダム到着、管理事務所でダムカードをゲット!

  

 ダムの目の前の長島ダム駅で再び少し休憩してから、ダム湖や奥大井湖上駅を右手に見下ろしながら走ります。途中で左手から寸又峡温泉への道と合流。2年前は寸又峡温泉からこの道を通ったなあと思い出されます。長島ダムから40分ほどで接阻峡温泉に到着。既に汗ダラダラなので公園の蛇口で着ているTシャツを洗い、駅前にある「天狗石茶屋」に入って「しいたけ味飯」を頂きました。走り始めて9時間、待ちに待った炭水化物です。やっぱりご飯はうまい!

 

 接阻峡温泉から閑蔵駅入口までは広い道ですが、その先は林の中の1車線の道が5kmほど続きます。道路に出ていた看板によると、災害からの道路復旧工事中でこの時間帯は10:00〜10:15の間しか通過できないとのこと。現在時刻は9時45分なので少し急いで歩を進めますが、行っても行っても工事区間には到達せず。そのうちに対向車がやってきたので道路の通行止は解除された様子ですが、なかなか辿りつけないまま10時15分を過ぎてしまいました。まあ工事の人もいるわけだから歩行者は大丈夫だろう、という思いはありつつもやはり少し不安。10時20分になってようやく工事箇所が見えてきました。静岡と井川を結ぶ県道60号線との交叉点のすぐ近くで工事をしていて、何と!歩行者用の迂回路が斜面にきちんと確保されていてちょっとびっくり。一般人でこの道を通った人はいるのか?わざわざ斜面にこの道を切り開く必要はあるのだろうか・・・。でもまあこれで時間をロスすることなく前に進むことができます。

 県道との交叉点に大きな荷物を置いて、県道60号線を静岡方向に戻るようにして井川駅と井川ダムに寄り道。井川ダムは国交省とは関係ない中部電力の発電ダムですが、にもかかわらずダムカードを作っている珍しいダム。もちろんゲットしました(^-^)

  井川駅と井川ダム

 先ほどの交叉点まで戻り、荷物を回収して井川本村へ。集落内にある井川郵便局は既訪ですがせっかくなので寄り道して貯金してきました。

 井川郵便局

 郵便局では局名入りのマグネット付き書類挟みと、大きな静岡市内の郵便局マップを頂きました。マップはザックに収納しないといけないので泣く泣く折り目を付けることに・・・

 先ほどのしいたけ味飯から3時間経って、再びお腹が空いてきたので郵便局近くの売店でアイスとあんパン、スポーツドリンクを購入します。甘いものばっかりですね。2年前は1日目の行程はここ井川まででしたが、今日はまだまだ先に行けそうな感覚があるので、調子が良いうちに先へ先へ。田代の自動販売機で再び水分補給し、いよいよ畑薙までの登り道に差しかかります。

 この道には0.5kmごとにキロポストが設置してあって、表裏で静岡までの距離と畑薙第一ダムまでの距離がわかります。両方を合わせると約80km。TJARの選手は、長いアルプスを越えて畑薙まで降りてきて、そこからフルマラソンの約2倍の距離を走らないといけません。改めて考えてみると本当に御苦労な話です・・・

 今日はとりあえず茶臼小屋の手前の横窪沢小屋を目指しているのでまだ時間的には余裕があります。勾配のある上り坂は無理せず歩き、緩い坂や平坦な道だけ走る作戦。途中の流水で喉を潤おしつつ、畑薙第2ダムが現れるのを心待ちにしながら走り続け、14時35分にやっと畑薙第2ダムを越えて白樺荘に到着。

  カツカレー最高!!

 さらに4km走って畑薙第一ダムに到着。この夏は東日本のダムはどこも貯水率が少ないようですが、こちらもダム湖の肌がかなり見えていました。

 畑薙第一ダム

 沼平で東海フォレストのゲートを通過。ここを通ると「南アルプスに入った」という実感が何となく湧いてきます。畑薙大吊橋は長くて高くてスリル満点!

 写真中央にかかっているのが畑薙大吊橋

 畑薙大吊橋を16時半に渡り、ヤレヤレ峠とかいう峠を越えて17時35分にウソッコ沢小屋に到着。小屋に宿泊する方がいるようですが自分はさらに先に進みます。急坂を頑張って登って、18時15分に本日の目的地である横窪沢小屋に到着しました。

 横窪沢小屋

 先に張られているテントは2張りのみ。場所的にも決してメジャーな小屋ではありませんが、水場も近くてなかなかいいところです。夕食はここまで持参したカップラーメンBIG。中の麺も砕けることなくほぼ原形を保っていて美味しく頂きました。今日は18時間半みっちりと運動したので夕食を食べてすぐに就寝。明日は高山裏まで行けるか?




【2日目 8月11日(土):横窪沢小屋〜荒川小屋】 

 朝はできるだけ早く起きて歩行時間を長くとりたいものですが、結局は前日の疲れに負けて3時20分に起床しました。明るくなってからのスタートが確定・・・。

 高度が2000m無いからかシュラフだけで十分温かく、テントも露がほとんど付いておらず助かります。ただ、右足の膝の内側がちょっと違和感あり。昨日10kgの荷物を背負って90km近く走ったので、知らないうちに1か所に衝撃が集中してしまったのでしょうか・・・。テントの中で足を曲げようとしてもちょっと痛みが走ります。開始2日目、まだまだ長い行程が待ち受ける中でこの症状はかなり気がかり。

 アルファ米のわかめ御飯と、昨日一日走って揺らし続けたどん兵衛miniが今日の朝食。こちらも麺が粉々になることはなくほぼ原形をとどめています。インスタントラーメンは意外と衝撃にも強いようです。

 ゆっくりと朝食を食べてテントを畳んで4時45分に出発。もう明るくてライトは要りません。

 足の痛みを気にしつつも、登りは特段問題なく登れるようで、6時ちょうどに茶臼小屋に到着しました。小屋のある沢は風が吹き抜けていて半袖では少し寒いくらいです。さらに少し登って、いよいよ南アルプスの主稜線に到着!これで暫くは気持ちの良い稜線歩き、と言いたいところですが、稜線上は西風が強く吹いていてあたりはガス。眼鏡にすぐ水滴が付く嫌なパターンです。「梅雨明け十日」とはよく言ったもの、やはりお盆の時期になると山の上は天気が悪い日が多くなるみたいですね・・・。

 茶臼岳頂上はカット。天気が悪いので上河内岳の頂上も行く気が起こらずパスしました。7時55分に聖平小屋分岐に到着。茶臼小屋であまり水を汲まなかったため水の残りが少し気になりますが、手持ちの地図を見ると聖岳の手前に水マークが打ってあるのでそちらに期待し、時間短縮のため小屋もパスして先に進みます。

 ここからは聖岳までの登り。しばらくして聖岳から降りてきた人とすれ違ったので水場があったかどうか聞いたところ、そんなものは無かったとのこと。ん?
 小聖岳を過ぎて聖岳までのガレ場の厳しい登りに差しかかります。森林限界を超えたガレ場で、確かに水場らしい気配は全くなし。なぜこんな所に水マークが打ってあるんだろう?手持ちの地図は2000年版なので、最新版では水マークは消えているかもしれません。

 9時35分、今回の山行で初の百名山にして初の3000m峰である聖岳(3013m)に到着。



 朝方からのガスがようやく切れて、赤石岳や富士山も見えてきました!山の頂上から富士山が見えると「頑張ろう」という気持ちになりますね(^-^)

 続いて目指すは兎岳。聖岳との間には「聖兎のコル」という因幡の白兎みたいな有難い生き物がいそうな場所がありますが、コース上にそれらしい標識は見当たりませんでした。歩き始めて5時間たってややシャリバテ気味なので、百間洞でのランチを想像しながらますはナッツ・黒砂糖・マヨネーズでエネルギー補給。コルから登り返して10時55分に兎岳到着。風が適度に吹いていて気持ちいいです。

 兎岳

 ここまで来たら次の目的地は百間洞!途中の中盛丸山も意外と高くて大変でしたが、12時35分にやっと百間洞山ノ家に到着しました。何はともあれカレー!

 カレー!

 小屋の中でカレーを食べながら、地図を広げて今日これからの行程を検討します。多分今日は荒川小屋までは問題なく行けるでしょう。高山裏まではさすがに厳しいか?

 ポリタンの水も補給して13時10分に小屋出発。相変わらず晴れたり曇ったりの落ち着かない天気で、赤石岳の頂上は完全にガスに覆われてます。ガスはともかく、雷が無ければいいのですが・・・

 百間平。赤石岳はまだまだ上・・・

 赤石岳まで途中で何度か休憩。基本的には休憩ごとにミックスナッツと黒砂糖を数個食べてエネルギーを補給します。2年前の山行では黒砂糖が疲れに非常に効いたという記憶があるのに、今回の山行では黒砂糖を食べてもあまりエネルギーが回復したという気がしないのがやや不思議。黒砂糖にも種類があるんだろうか。今回はむしろマヨネーズが疲労回復に効いているという感覚があります。
 赤石岳に向かう途中のコルからは、山肌にへばりつく登山道がしっかりと見えます。やがてガスの中に入り、ひたすら登って15時にようやく赤石岳避難小屋に到着。赤石岳避難小屋にはエネルギーをがっつり補給できる食事は残念ながら無いようです。(リンゴはあります。)そして避難小屋の目の前が赤石岳頂上(3120m)。

  赤石岳頂上。左の写真ですぐ後ろに見えるのが避難小屋

 3100mを超える頂上なので、さすがに携帯がつながるんじゃないの?と思って試してみたところ、職場のドコモは繋がりましたが私用のソフトバンクは全く繋がる気配なし。「山で繋がらないソフトバンク」はここでも健在です。プラチナバンドとかいうのが実用化されたら本当に山で繋がるようになるのか?Twitterでの山行経過報告はここでも断念。やはり市野瀬に降りるまでは全く繋がらないのか・・・

 頂上で15分ほど休憩し、荒川小屋(あわよくば高山裏小屋)を目指して出発。ところが小赤石岳の頂上あたりで雨がポツポツと・・・。嫌な感じ。小赤石岳から下る頃には雨がさらに強くなってきました。荒川小屋はそんなに遠くないし、雨はしばらくすれば止むだろうと思って、ザックカバーだけで雨具は着ずに荒川小屋を目指しますが、雨はいつまでたっても弱まる気配無し。強い雨が続く中を小赤石から30分以上歩いて(走って)16時15分に荒川小屋に到着しました。

 上下とも既にずぶぬれで、小屋の隣の倉庫で10分くらい雨宿り。それでも雨が弱くなる気配は全く無く、雷も鳴っているので、この先の荒川岳越えは諦めて、荒川小屋(本棟)に入ってテント泊の手続きを済ませました。とはいってもこの雨の中でテントを立てたくはないので(Laser Photon Eliteって設営が面倒で時間がかかるんですよね。エアライズなら屋根の下で組み立ててテン場に持っていけばいいんですけど(笑))、小屋の玄関で座ってうつらうつらしながら1時間くらい(!)雨宿り。それでも雨はまだ止まず・・・。このまま待っているとそのまま暗くなってしまいそうなので、仕方なく雨の中でテントを設営しました。

 小屋でカップヌードルを購入し、雨の中アルコールストーブでお湯を沸かします。ちなみに、持ってきているアルコールストーブはガスカートリッジと違って台が不安定なため、中でアルコールストーブを点けるのはテント全焼の危険を伴うので御法度です。
 今日の晩御飯はアルファ米の炊き込みご飯2人前とカップヌードル。お湯が沸いて、さあご飯を作ろうと思ったら、尾西のアルファ米(200gタイプ)には切り込みが無い・・・。ナイフなどを持ってきていないので、あーでもないこーでもないと色々やってみた結果、袋に箸を突き刺してようやく袋が破れました(^^; 何で切り込み入ってないかな・・・

 お腹が満たされ、そのまま19時半に就寝。雨は結局まだ降り続いています。  




【3日目 8月12日(日):荒川小屋〜熊ノ平小屋】 

 雨は日付が変わる頃になってやっと止んだようです。今日の0時は本家TJARの出発時刻でしたが、起きてから気が付きました(^^;

 3時起床。朝食はアルファ米の白米1人前としじみわかめスープで軽く済ませます。テントは雨と露ですっかり濡れてしまいました。出発前にできるだけ水分をタオルで拭いて置きたいものですが、フライの内側の水滴を拭くのは毎回面倒です。テント本体の両側にファスナーがあれば楽なんですけど、それ以外に用途が無いので多分実装はされないだろうな(笑) フライとテント本体の間の固定を外して露を拭いたりしているうちに時間がどんどん過ぎて、結局出発は起床から1時間45分も経った4時45分になってしまいました。おかげで今朝もライト要らず・・・

 荒川小屋を振り返る。なんかかわいい!

 反対側には富士山。

 昨日から違和感がある右足が今日も引き続き結構気になりますが、何はともあれ睡眠をとった後は調子良く進むことができます。出発から約1時間で荒川前岳(3068m)に到着。



 稜線上は風がやや強く、雲も出ているものの、遠くの山がしっかりと見えています。頂上付近では早くも向こうからの登山者とすれ違いました。自分と同じトレランスタイルで(荷物はもっと小さいですが(笑))甲斐駒の黒戸尾根から登ってきて畑薙まで下るとのこと。やっぱり夏はアルプスのトレランに絶好の季節ですね!

 荒川三山で一番高い悪沢岳(3141m)は往復すると1時間半くらいかかるので、時間短縮のため今回はパスします。荒川前岳からはガレ場の大下り。この道を逆に登ってくる登山者はかなり大変そうです。しばらく下って樹林帯に入ってからも、足元は大小の石がゴロゴロとしていて足運びにかなり疲れます。6時55分ににようやく高山裏小屋到着。



 こちらはこのあたりではかなり規模の小さな、「雰囲気のある」小屋です。小屋番の方は水場に水を汲みに行っているようで不在。日差しが強くなりかなり暑くなってきました。

 しばらくは樹林帯の中の道で草などが這っていて、昨日降った雨の水滴がどんどんシューズや靴下に浸みていきます。まさに露払い状態。今回の山行で使うシューズを買いに行った時にゴアテックスのシューズを見て「トレランシューズにゴアテックスは必要ないよなあ。重くなるし」と瞬時に候補から外したのですが、確かにこういう時には恩恵を受けますね。(でも、じゃあゴアテックスを選ぶかと言われればやっぱり選ばないと思いますが・・・。)途中で靴がグチュグチュ言い出したので我慢できなくなって立ち止まって靴下を絞ってみましたが、完全に水分が抜けないので結局またグチュグチュ言って効果なし。このまま歩き(走り)続けて自然に乾燥するのを待つしかないようです・・・。

 9時に小河内岳到着。2年前は御来光の少し後の時刻にここを通過して最終的に16時頃に両俣小屋に到着したので、今日はこの調子で行けばぎりぎり両俣小屋か、その手前の熊ノ平小屋か、少なくとも仙丈ケ岳を越えるのはかなり難しいだろうな、などと早くも本日の宿泊地を計算してしまいます。2年前よりも爆走できれば仙丈ケ岳を越えて北沢峠まで行けるのだろうけど、走力は2年前とほとんど変わっていないということがこの2日間で早くもわかってしまったので、実際にはかなり非現実的。

 「山の天気は9時まで」の言葉通り、まだ晴れてはいるもののあたりは雲がかなり湧いてきています。少し休んで再び出発。向こうに見える塩見岳は早くも雲の中・・・。

 三伏峠小屋はパスしてショートカット。三伏山を越えて10時55分に本谷山に到着。親子(父子)連れの登山者が休憩していて、話の流れで太平洋から日本海までの縦走計画を聞いてもらったところ、「時間があってもそれはちょっとしたくないわ〜(笑)」との正直な感想を頂きました(笑)そりゃそうだ。ここから塩見岳への登りに差しかかり、森林限界を超えて12時に塩見小屋到着。

 

 歩き始めて7時間たってかなりお腹が空いているので、カップラーメンとゼリーの中で一番エネルギーが高いものをチョイス。ゼリーは最近はゼロカロリーとか低カロリーとかを謳っているものが多いみたいで、写真のマンゴーゼリー(200kcal)はかなり貴重な存在です。少しでも先を急いで時間短縮したい気持ちに駆られつつも、エネルギーをちゃんと採らないとこの先でシャリバテすることは目に見えているので、ここで食事に20分を費やした結果、小屋のあたりもすっかりガスってしまいました。塩見岳附近の稜線は雷の巣と言われている所なので、雷が鳴る前に通過しないと・・。

 昼食を食べて小屋を出発し、岩場もある登りを慎重に登って13時に塩見岳西峰(3047m)到着。誰もいない・・・。頂上は薄くガスっていますが、これから進む稜線はしっかりと見えています。

 塩見岳西峰。向こうに見える東峰の方が5mくらい高いようですが標識などは見あたらず

 ガレた道を下ったあと、樹林帯と見晴らしの良い道を繰り返します。今のところ雷は鳴っていないようです。塩見岳から結構走った気がしましたが、途中の見晴らしの良いところ(竜尾見晴?)に「熊ノ平まであと2時間」という標識があり、本当かな・・・と思って進行方向に目を向けると、向こうの山腹に小屋の屋根が白く見えています。ここから確認する限りはそんなに遠くは無いようです。

 1ピッチで行けるかと思いましたがけっこう疲れていたようで、安倍荒倉岳でもちょっと休憩しました。15時40分に熊ノ平小屋到着!



 もう夕食の時間が近いけれど、軽食を作ってもらえるだろうか・・・小屋の方に聞いてみるとOKとのこと。というわけで、ここでも注文したのはカレー!

 カレー!

 山小屋のカレーは1000円くらいのところが多いですが、ここは700円で何とサラダ付き!下界よりも安い?いや〜美味しくて腹に浸みわたります。

 時刻を考えると、やはり今日これからの仙丈ケ岳越えはとても無理。となると両俣小屋まで行くかここで泊るかの選択になります。両俣小屋は途中で稜線を外れてかなり降りないといけないのでどうも気が進まず。しかもカレーを食べて先に進む気持ちが急速に失せてきた(^^; 「ならば明日の朝こそは早く起きて、両俣までの分の距離を取り返そう」と(いちおう)決意を固めて、今日はここに泊まることにしました。

 お盆ということもあり今日はかなりテントが多いみたいで、普段は使っていないという小屋の上の方のテン場を使うよう案内されました。小屋の下の通常のテン場よりもトイレや水場に近いのでちょっとラッキー。快適なテン場で、小屋には水もとうとうと流れていて本当に素晴らしいところです。3日間の行程でかなり汗をかいているので、髪を洗って体もタオルでしっかりと拭いておきました。また明日も汗をかくんですけど(^^;



 心配していた夕立も今日は無く、さっきのカレーとは別に夕食はアルファ米の白米1人分と服部幸應の「香るカレー チキン」(笑) 山で食べるカレーは本当においしいんですよ!こちらはインドカレー風で、これまたなかなか良かったです。

 1時間20分ぶりのカレー

 夕飯を食べながら明日の行程を検討。仙丈ケ岳から、TJARコースである地蔵尾根を下るか、丹渓新道を行くか、北沢峠経由にするか。一番行程が短く、うまくいけば早く下れそうなのは地蔵尾根ですが、自分がこれまで通ったことのない道で地図上は破線なのが結構心配。また、道が狭かったら背中の大きなザックが木々に引っ掛かりそうなのも気になります。また、国道152号線に早く降りることができたら、そこから市野瀬経由ではなく美和ダム・高遠経由でダムと郵便局に寄り道したいので、だとすると南アルプス林道経由で戸台橋に下る方がいいかなあ・・・。結局迷ったまま、明日の仙丈ケ岳まで最終結論は持ち越すことにしました。

 18時には全てのことをやり終えて就寝モード。明日こそは早起きする予定なので、今日は明るいうちにもう寝ます。




【4日目 8月13日(月):熊ノ平小屋〜駒ケ根】  時々

 頑張って1時起床。アルファ米の白米としじみわかめスープの朝食を済ませ、テントに着いた露を拭いたりしているうちに、今日も出発までに1時間45分経ってしまいました。さすがに今日の出発時はまだ夜空です。見上げると満天の星空!天の川もはっきりとわかります。「これは今日も山旅を楽しめるかな」、と思ったら・・・

 4時前に三峰岳に到着する頃には星空はすっかり雲に隠れて見えなくなってしまいました。ガスの中に入っただけだろうか、などと考えながら頂上を後にして北へ。三峰岳からはどちらかと言えば間ノ岳方面のコースがメジャーで、仙丈ケ岳に向かう仙塩尾根はマイナーなので、道を分けた途端にマークが少なくなります。まだ空は暗いので何度も道に迷いそうになったりして思ったほどスピードを出せず。暗い時間帯にガスに包まれた登山道を歩いていると、強烈に「一人ぼっち」の感覚に襲われて心細くなることがあります。ここで何か事故があると、もう二度と誰にも気づかれることは無いのではないかと。少なくとも夜明けまではこの状態を我慢するよりほかありません。

 2年前は三峰岳からすぐのように感じられた野呂川越も、今日は行けども行けどもなかなか辿りつきません。もしかすると知らないうちに通過してしまったのか?いや、でもわかりやすい分岐なのでさすがにそれは有り得ないか・・・と半信半疑になりながら歩を進めます。そのうちにようやく明るくなってきて、5時20分頃ようやく野呂川越に到着。ここで両俣小屋から上がってきた2名の登山者とすれ違いました。

 あたりは一面の曇り空。稜線上を風がヒューヒューと通り過ぎていきます。これ以上天気が悪くならないでほしいという思いもむなしく、7時頃に雨がポツポツと降り出してきました。

 大仙丈ケ岳に近付くにつれて、稜線上にチングルマが顔を出すようになりました。雨が降っているのであんまり立ち止まる気になれないのですがとりあえず立ち止まって撮影。

 

 稜線上で靴を履き直している時に、靴下を強く引っ張って足首の部分を破いてしまい、気分はさらにブルーに・・・。8時20分に大仙丈ケ岳に到着しましたが、風が強いので立ち止まる気も起こらずそそくさと通過。さらに歩いて8時45分に南アルプス最後の3000m峰である仙丈ケ岳(3033m)に到着しました。ここでも休憩したくないくらいの強い風が吹いています。それでも一応百名山なので写真だけは撮っておくことにします。

 何も見えない仙丈ケ岳頂上

 仙丈ケ岳から仙丈小屋に降りる途中に、下山道の候補の一つである地蔵尾根への分岐がありますが、この天気と風の中、知らない道を下りたくないので瞬間でパスし、とりあえず仙丈小屋まで降りてきました。小屋は軽食の営業はまだだったのでカップラーメンを食べながらしばし雨宿り。雨がどんどん強くなってる・・・。

 結局45分くらい雨が弱まるのを待ってみましたが状況は一向に変わらないので、下れば天気は回復するかもしれない、と意を決して出発。最初は丹渓新道に入ってみたものの、数百メートル進んだところで、この先の道も稜線沿いで風がビュンビュン吹いてそうなので嫌気が差して引き返しました。結局のところ順当に(?)藪沢大滝経由で北沢峠(峠から少し下ったところにある大平山荘)に下る道をチョイス。北沢峠そのものには繋がっていないので人が通らないコースなのかと予想していましたが、登ってくる人も降りる人もそれなりにいるようです。

 沢沿いの道に入ってすぐに風は止みました。しばらく下ったところで、本来は雪渓の上に付いていると思われる道が切れていて、脇の急斜面を滑り落ちそうになりながら通過しました(でも登ってくる人はいかにも普通だったので、もしかすると別の場所にしっかりとした道が付いていたのかも・・・?)。無事にやり過ごしてさらに下り、11時にようやく大平山荘に到着。思ったよりも長かった・・・

 南アルプス林道沿いにある大平山荘。ここまで降りればあとは車道

 風は弱いですが雨は相変わらず降ったりやんだり。小屋の屋根の下で三ツ矢サイダーを飲みながら暫く休憩。登山バスの運転手さんに声を掛けられて、「これから林道を下ります」と答えると「21kmあるから頑張ってね」とのこと。21kmか・・・結構あるなあ。頑張っても3時間はかかりそう。国道152号線に出るのが14時とか15時とかになりそうなので、美和ダムはともかく高遠地区の郵便局を訪問するのはすっかり諦めモード。

 山荘で20分ばかり休憩して南アルプス林道ランに入ります。久々の車道ラン、当然ながら凹凸は少なく、下り基調なので走り自体は楽ですが、何しろ連続で走り(歩き)続けて4日目、キロ7分とか8分とかがせいぜいで、途中で休憩を挟んだりしているので1時間に進める距離は6,7kmほど。何か特徴がある道というわけでもなくひたすら山の斜面の緩い下り坂が続き、途中でバスにすれ違ったり追い越されたりしながら、走り始めて2時間10分後の13時30分にゲートのある戸台大橋に到着しました。稜線とはうって変わって、日差しが出て暑い(-_-;

 戸台大橋のゲート

 橋のたもとには管理人がいますが歩行者を見てもゲートを開けるでもなく、ゲートの脇の狭いところからすり抜けて通過。道路には「↑高遠 16km」の標識があり、高遠まで行く気は完全に滅失。こうなればとにかく目先、仙流荘でカレーとおやきを食べることが楽しみです。戸台川では家族連れや仲間同士でバーベキューや水遊びをしている人たちがいて楽しそう。自分も川に飛び込んで体と服を洗いたい気持ちは山々ですが、出てからまたすぐに汗をかくのがわかっているので、ここはまず昼飯を目指して走り続けます。カーブを曲がって盆地に出て、14時ちょうどに仙流荘到着!さっき大平山荘で話をした運転手さんがいて「早いねー」と声を掛けて頂きました。

 早速おやきを売っているはずのバス待合所に顔を出してみると、食堂はどうやら閉まっている様子。「まさか仙流荘で食事にありつけないのか?」と一瞬心配になりましたが、仙流荘の建物の中にちゃんとした食堂があって、そこで定食を食べれると知って一安心。で、仙流荘で風呂には入らず食事だけとることにします。ちょうど建物に入ったところで外は土砂降りの雨に!まさにジャストタイミング(^^;

  仙流荘で鹿カツ定食!

 1日目の白樺荘以来で携帯電話の電波が入ったので、ここでやっと進行状況をTwitterで書き込み。本家TJARのGPSトラッキングとは雲泥の差です(笑)

 しばらくして雨が弱まったのを見計らって15時過ぎに仙流荘を出発。結局は本家TJARと同じコースで市野瀬〜中沢峠を越えて駒ケ根に入ることにしました。戸台口でやっと国道152号線に入り、止みそうで止まない雨に再び打たれ、15時50分に市野瀬に到着。市野瀬郵便局は既訪ですがせっかくなので立ち寄って貯金してきました。

 市野瀬郵便局

 ここ市野瀬は本家TJARのチェックポイントかつ荷物をデポできる地点になっていて、それっぽい場所がどこなのか集落内を歩いて探してみましたが特にそれを示すものは無し。ただ、国道沿いに大きな旅館があるので、もしかするとここで荷物の受け渡しや入浴ができるのかもしれません。地区にある運動場では大音量で音楽が流れていてテントがいくつか設営されていましたが、こちらはこの日の夜行われる夏祭りの準備のようで、TJARとは関係なさそうでした。(註:あとで確認してみたところやはり旅館がチェックポイントのようです。)

 しばらく休んで市野瀬を出発。いよいよあとひと山越えれば駒ケ根。コース上で唯一、食べ物とかギアとか欲しいものが何でも手に入るパラダイス(笑) 特に名物のソースカツ丼に早くありつきたい!

 ゼロ磁場で売り出している分杭峠行きのシャトルバスが出る駐車場でスポーツドリンクを補給し、再び降り出した雨に打たれながら坂道を登ります。勾配がきつくなり、途中からは歩きが入るようになりました。知っている道なので気分的には楽ですが、いい加減おなかが空いた・・・。17:15にようやく中沢峠通過。ここからは駒ケ根まで下りです。

 下りに入ってスピードが少し上がり、先の方になんとなく見える駒ケ根市街に思いを馳せながら下っていると、向こうから北海道マラソンのTシャツを着たランナーが登ってきました。立ち止まってちょっと立ち話。実家がこのすぐ近くで、お盆休みで実家に帰って走っているとのこと。坂道の往復ランで足がかなり鍛えられそうですね。そんなランナーに日本横断の話がてら、とにかく駒ケ根でソースカツ丼を食べるのが楽しみだと話したところ、小町屋の「いな垣」という蕎麦屋のソースカツ丼がおすすめという情報を頂きました。これはもう行くしかない!

 中沢峠から10km以上下り、途中からは駒ケ根駅方面ではなく隣駅の小町屋方面に進路をずらします。ようやく下り終えて天竜川を渡る頃にはあたりはすっかり暗くなり、そこからまた河岸段丘を登って小町屋に至るまでが意外と遠い・・・。19時20分に小町屋駅にようやく到着。下界の店に入るので最低限清潔にした方が良いと思い、服を簡単に洗って体を拭いてから「いな垣」へ。待望のソースカツ丼大盛り!

 「いな垣」のソースカツ丼

 腹に滲みる美味さだ〜!さすが地元の方の情報は貴重です。(まあ何を食べても美味い美味いと言うわけですけど^o^;)

 で、ついでにもう一軒、駒ケ根駅前の「水車」でも「駒ケ岳セット」というソースカツ丼と信州そばのセットを頂きました。

 「水車」の駒ケ岳セット

 今日は16時間くらい行動して、しかもソースカツ丼をはしごしたのでなんだか無性に眠くなってきました。明日の中央アルプス越えのことを考えると明日も早めに行動開始した方がいいのですが、とりあえずは駒ケ根で少し仮眠をとろうと思い、しばらくは駒ケ根駅の待合室でうつらうつら。その後は駅前のバス停で少し横になりました。雨はまだ降ったり止んだりで、強く降っている時間帯もあります。しかも夜遅くなって雷交じりに(-_- ) 明日の中央アルプス越え、大丈夫かなあ・・・  




【5日目 8月14日(火):駒ケ根〜薮原】 

 駒ケ根駅のバスターミナルの椅子で横になっていると、何やら呼びかけられる声が・・・巡回の警察官でした(^^; 時刻は1時半。怪しい者ではないということは何とか分かってもらえたようでしたが、せっかく目が覚めたので今日は早めに行動を開始することにしました。

 前回のTJARでは中央アルプスで空木岳がショートカットされており、TJARのサイトには「空木岳を経由することで3時間以上遅れ気味となる」とあったので、「空木岳を通っても余分にかかる時間は3〜4時間くらいかな、木曽側には午後の早いうちに降りられるだろうから、今日中にできるだけ上高地に近付こう」などと皮算用。(結果は・・・続きを読んでください(笑))

 雨は相変わらず降ったり止んだりですが、今の時間はちょうど止んでいます。手早く荷物をまとめて出発。途中のサークルKでパンやおにぎりを購入して栄養補給し、昨日靴下を破いた足首の部分に靴擦れ防止パッドを貼っておきます。結局ここでかなり時間をつぶし、菅の台に到着したのは3時過ぎ。雨も再び降り出し、何となく気分が重くなってまたまた休憩。結局登山道に入ったのは3時半くらいでした。

 どうやら今日も一日天気が悪くなりそうとのことで、中央アルプスの稜線に出るとまた西からの風が強く吹くのでしょう。天気は全く期待できませんが、いよいよ今日は本家TJARの選手の皆さんにコース上で続々とすれ違う事になるはずなので、そちらを楽しみに登ることにします。

 最初のうちは整備されたハイキングコース。しばらく登っていくと、同じく登り方向の3名の登山者の姿がありました。出発がすごく早いなあとびっくりしたのですが、後で空木岳駒峰ヒュッテの方が「TJARの取材でNHKの方が登ってくるはず」とおっしゃっていたので、おそらくその取材クルーだったのでしょう。さらに登ると「←水場100m」という標識が。中央アルプスはこの水場を過ぎると登山道上は木曽駒ケ岳の向こうまで水場が無いので(少し下るとあるようですが)、100mほど笹薮をかき分けて水場に行き、ここでしっかりとポリタンクに水を補給します。

 そして少し登ると休憩好適地に到着。なんと水道が!



 沢からわざわざコース上まで水が引かれているようです。だったらさっきの水場の標識出さないでいいじゃん!(笑)

 こんなことは小さな話ですが、さらに少し登って休憩している時に予想外の事態発生。何やらザックカバーがおかしい。いつもはもっとピシッと締まるはずなのに何だかだらんとしています。調べてみるとザックカバーのゴムが切れてましたΣ(゚Д゚|||)
 雨も降ったり止んだりで、稜線に登ると風も強く吹くだろうし一体どうしようか・・・。とりあえず、たるんだ生地をザックカバーから出ている紐で結び、曲がりなりにもザックを覆えるようにしましたが、なんだか結んだところがすぐに緩んできそうで不安だ・・・。

 気を取り直し、TJARトップの望月選手はまだかな〜と考えながら登っていくと、しばらくして空木岳頂上の少し下にある分岐点に到着しました。ここから空木岳までは40分くらいですが、道が避難小屋経由と尾根経由の二手に分かれているのでどちらに行くべきか迷いどころ。もしここで望月選手と違う道を通ってすれ違ってしまったら悲しいことになってしまいます。でも通ったことのない道でどっちがいいかわからなかったので避難小屋経由の道を選択。

 ・・・そして、5分ほど走ったところで「違ったな・・・」と後悔。巻き道になっていて、どちらかというと下り気味の道がしばらく続きます。ということは逆コースでは、頂上からガーッと下ったあとに登りがあるということ。コースを知っている人ならおそらくこちらの道は選択しないでしょう。

 でももうここから引き返したくないので、そのまま避難小屋経由の道を行くことにします。避難小屋にはここで宿泊したと思われる方が4名ほどおられました。そして、このあたりで稜線から降りてきたと思われる登山者とすれ違ったので、稜線は風が強いかどうか尋ねてみると「そんなでもない」との答え。「あれっそうなんだ」と少し拍子抜けしながら再び登山道を登り、しばらく歩いて先ほど別れた道と合流し、8時10分に空木駒峰ヒュッテに到着しました。


 ・・・すごい風!!

 空木駒峰ヒュッテ

 まずは小屋に入って小屋番の女性に挨拶し、TJARの選手がここを通過したかどうか尋ねたところ「私も気にしているんだけど、まだ通ってはいないみたい」との答えでした。よかった〜。
 全身濡れている姿を見かねたのか、わざわざお茶を入れてくださいました。「稜線上はすごい風ですね」などと雑談しながら、小屋の入口の扉の隙間から風吹きすさぶ外の様子を覗いていたところ、ふと向こうから人影が!

 青い雨具を着てフードをすっぽり被り、両手にストックを持った男性が小屋に到着しました。「望月さんですか?」と声を掛けるとそうですとの答え。ここまで丸二日走ってきたとは思えない軽やかな足取り!

 小屋番さんも望月選手を温かく出迎えます。やはり稜線上は雨と風がものすごかったとのこと。夜の闇の中、この荒れ狂う稜線を通過してエネルギー消費はかなりのものだったのでしょう。望月選手は「ここで食事ができて本当に良かった」とかなり安堵の様子でカップラーメンを2つオーダー。小屋番さんは他にも色々と食事を提供したいようでしたが、望月さんは「ルールですので・・・」と固辞されていました。もちろん気持ちは伝わっています。

 食事中で申し訳ないとは思いながらも、いろいろとお話を伺うことができました。スタートしてからここまで2日と8時間ちょっとになりますが、それで駒ケ根の手前まで来てしまうというのは驚異的。ここまでの睡眠時間は木曽駒ケ岳スキー場で5時間ほど仮眠を取っただけとのこと。「しばらく横になったらもう眠たくなくなった」という望月選手の発言に2人は驚愕です(^^; 実は小屋番さんもトレラン経験者でハセツネなども出られたことがある方で、しばらく話で盛り上がりました。

 写真にも写って頂きました。ありがとうございます!

 望月選手はあっという間にカップラーメンを平らげ、駒ケ根への下りに向けて準備。霧っぽい天気ですが、ここまでの稜線の風雨に比べれば天国のような道でしょう。再びザックを背負い、8時45分、颯爽と小屋を後にされました。



 さて、自分はこの先どうしようか。風と雨だけならまだましなのですが、小屋番さんによると雷も鳴っているとのことで、ラジオをつけてもらって確認すると確かに頻りにガラポツと音がしています。これはさすがに危ないということで自分はそのまま小屋で暫く休憩することにしました。ちょうどその時にふもとから上がってきたというトレラン2人組が小屋に到着。どうやら下から4時間もかからないくらいで登ってこられたようです。いやー皆さんすごいわ。こちらの二方は空木岳の頂上に行った後、すぐに来た道を降りて行かれました。

 まだ朝9時とはいえ、連日の行程+今日は起床が1時半ということもあり結構疲れが溜まっているので、ここは先を急がずゆっくり腰を下ろして、しばらく座ったまま目をつぶって休みます。1時間くらいその状態で半睡眠していました。
 しばらくして気付くとラジオに入る雷の音は心なしか少なくなっているようだったので、そろそろ自分も先に進もうかと思案。ただしまだ風は強く、小屋番さんからは大丈夫かと非常に心配されましたが、風で進退窮まるようだったらここまで戻ることにして、とりあえずは少し先の木曽殿山荘までは進んでみる事にしました。温かくもてなして頂き、「頑張ってね」と応援してくれる小屋番さんに別れを告げ、10時35分に空木駒峰ヒュッテを出発。

 何も楽しくない空木岳頂上(2864m)

 稜線上はまさに嵐。雨自体は降っていないものの、ガスが掛かっているので風で水滴が体(特に眼鏡)にかかります。そんな中で注意力が散漫になったのか、下りで滑って石で左手を擦りむいてしまいました。これが結構な流血で、木曽殿山荘に到着した際に消毒薬とガーゼ、テープ、絆創膏で応急措置する羽目に。その木曽殿小屋は、せっかくのお盆の書き入れ時のはずがこの悪天候のために宿泊者は全てキャンセルだそうです・・・。

 木曽殿山荘から先も相変わらず強い強い風で、もちろん景色も何もなし。特に稜線上や西側斜面など西からの風が当たる場所には強風が吹き付け注意を要します。逆に東側斜面に巻き道があったりすると、風が止んで一息つくことができます。13時10分、そんな東側斜面に差しかかったところで前方から2名の登山者がやってきました。雨具を着ているのでゼッケンは見えませんが、荷物が少ないのでTJARの選手と一目でわかります。やってきたのは若手の小野選手と阪田選手でした。



 両選手に「望月選手は9時前に空木岳の小屋を出た」と話すと、それはとても追いつけないと苦笑い。でも両選手とも、強風の中で疲れてはいるけれども楽しそうです。

 稜線上でここまでにすれ違った登山者は、TJARの選手を除いてわずかに数名。中央アルプスの百名山を繋ぐ稜線で、しかもお盆の時期、本来ならばもっと多くの登山者がいるはずですが、この日は本当に大変なコンディションでした。13時55分に檜尾岳通過。左手下に見えるはずの小屋はガスに覆われて全く見えず、寄り道する気も全く起こりません。稜線上で時々休憩を取る時も、写真を取るでもなく、ただ持参しているマヨネーズ・ミックスナッツ・黒砂糖を少しずつ食べるのみ。ああ早く千畳敷に着いて腹一杯食べたい!

 檜尾岳からさらに北上し濁沢大峰の少し手前のところで、続いてやってきた石田選手とご挨拶。さらに少し進むと、行く先の低い岩から降りてくるfunachiさんこと船橋選手登場!サプライズで登場したので驚かせてしまったでしょうか(^ロ^) 明るいうちに空木岳に到着しておきたいとのことですが、やはり強い風に難儀していてさすがに少し疲れているようです。静岡までまだまだ先は長いけれど、まずは駒ケ根、市野瀬を目指してガンバレ!

 

 続いて島田娘手前で木村選手が通過。元気な挨拶を頂きました。そしていよいよ、実に空木岳頂上から5時間近く暴風の中を彷徨って、やっと千畳敷カールに降りる分岐に到着。ここからさらに稜線を行く宝剣岳経由のルートもありますが、雨風の中を進むにはちょっと危険な岩稜ルートだし、何よりも千畳敷のロープウェイ乗り場まで行けば食べ物に沢山ありつけそうな気がしたので、ここはあまり迷うことなくカール経由の巻き道を選択しました。

 予想していた以上に高度が下がったようですが何はともあれ16時10分に千畳敷ロープウェイ乗り場に到着。さすが下界からロープウェイで直結とあって、いかにも観光客っぽい格好の方ばかりで、山の格好をしている人はほとんどいません(笑) とにかく何か食べたいと思い軽食コーナーへ。もうロープウェイの終電が近いとあって閉店ギリギリでしたが、無事におやき2個(野沢菜、あずき)をゲット!温かいものが美味しい・・・。



 でもこれだけでは空腹が満たされないので、お土産コーナーに売られていたオールドファッションドーナツ5個入りを購入し、2,3個くらい食べようと思っていたのが止まらなくなって完食してしまいました(笑) 急に甘いものを沢山食べたので、血糖値が上がって(言葉では言い表しにくいですが)体がすごく反応しているのがよくわかります。ちょっと危険だったかも(^^;

 これで体力もいくらか回復しました。稜線上の道はあとは木曽駒ケ岳を登るだけ。そこから下山道に入れば程なく風は止むでしょう。16時35分に出発して、さっき下った分を稜線まで登り返します。稜線を離れて1時間くらい経っているので、その間に宝剣岳ルートを通過されたTJARの選手もいるだろうなあ。この暴風の中、普通の登山者だったら宝剣岳ルートは避けてカールを選択すると思いますが、この時はカール経由のルートでは一人もTJARの選手に会いませんでした。後で調べてみると、この間に3名の選手が宝剣岳の稜線ルートを抜けていたようです。

 17時に稜線上の宝剣山荘に到着。ここで梅澤選手とすれ違いました。先に通り過ぎた選手から「宝剣岳を通らずに千畳敷カールを通る人が多い」と聞いていたので、そのことを梅澤選手に伝えたところ、それではということでカールの方に下って行かれましたが、本当に宝剣を通った人の方が少なかったのか、もしも違っていたら梅澤選手に悪いなあ、と後で自問自答。実際のところはどうだったのでしょうか。

 中岳にある頂上山荘の脇には、風が強いにもかかわらずテントが設営されていてびっくりしたのですが、よく見るとTJARの取材の方のようでした。取材陣の方々もこの暴風の中本当にご苦労様です。最後の登りを経て木曽駒ケ岳頂上に到着すると、ちょうど向こうから大西選手が到着されました。選手はこれから、まさにもうすぐ暗くなって夜闇の中を、風の強い中央アルプスの稜線を渡っていくわけですね。今晩は途中どこかで泊られるのでしょうか。本当にご苦労様、足元に気を付けて事故の無いことを祈るばかりです。

  木曽駒ケ岳頂上(2956m)

 長かった中央アルプスの行程も、ようやく木曽駒ケ岳の頂上から下るだけとなりました。ただしこの下りがこれまた意外と長く、大小の石がゴロゴロしているので足運びにかなり疲れます。今日一日の疲れが溜まっている所でこの道はかなりつらい・・・。まずは七合目の避難小屋を目指すのですが、なかなか近づく気配がなく、そのうちにあたりもかなり暗くなってきました。すれ違う選手もしばらくいません。そろそろライトをつけた方が良いかと思い始めた頃、ようやく七合目避難小屋に到着。

 避難小屋の脇には奥野選手のツェルトがありました。選手は中ですが、ツェルトに選手の番号が書かれた札が掛けられています。



 ツェルトの中で休んでおられるかもしれないと思いながら、小さめの声で「頑張ってください」と声を掛けると、中から返事とも取れない返事が返ってきました。やはり休んでおられたようです。申し訳ありませんでしたm(_ _)m

 暗くなったのでライトを点けます。菅の台から中央アルプスに登り始めた時は「午後の早いうちに下まで降りられるかな」などと皮算用していたのがもはやこの様・・・。まあ天気が悪かった分、仕方がないところもあるんですけど。それはともかく炭水化物を沢山食べたい。薮原のスーパー「まると」は今から降りても間に合わないことはほぼ確定です。国道20号線沿いにコンビニがあればいいなと思いつつ、自信が無いまま下ります。(註:2年前は国道20号から離れた旧街道を通ったのでコンビニは確認しませんでした。)

 避難小屋を出発して間もなく、下からヘッドライトが近付いてきて小畑選手が上がってきました。さらに少し下るとまたヘッドライトの明かりが見えます。夜はヘッドライトがあるので、かえって遠くから選手が把握できるのは良いですね。明かりもなんだか幻想的で、選手が頑張って登っているのが伝わってくるようです。近付くと、今回の大会の実行委員長も務めておられる飯島選手でした。

 立ち止まって2分ほど立ち話。3日目の夜を中央アルプスで迎えることになりますが、飯島選手自身としては7日以内(予備日を含まない制限時間)のゴールに向けて順調に進んでいるとのこと。実行委員長をされていることもあり他の選手のことも気になる様子で、特に上の方の順位にいる選手が、防寒対策が十分か、低体温症になったりしないか心配している、といったこともおっしゃっておられました。

 一般に、登山からトレイルランに入った人は山の上での宿泊事情なども分かっているので、単に荷物の軽さだけではなく快適性といったこともある程度考慮に入れますが、マラソンからトレイルランに入った人は、まず軽い荷物で走ることを考える、という話を聞いたことがあります。近年のトレイルランブームで山に入る人も増えていますが、山での挨拶や最低限のマナー、登山の基本に関することなど、これまで登山をほとんどしたことが無いトレイルランナーの皆さんにも知ってもらえるような仕組みがあればいいな、というのは私も常々感じているところです。

 飯島選手を見送ったあと、しばらくするとまた下からヘッドライトが近付いてきました。次の選手だな、と思って挨拶したところ、なんとこちらの方は選手ではなく「なんちゃって」で日本海から縦走してきているYさんという方。親不知から北アルプスを縦走してきて、北アルプスを完遂したところでTJARに乗じて中央アルプスにも乗り込んでこられたそうです。いやー物好きというのは意外と色々なところにおられるものですね(笑) 自分がTwitterで途中経過を報告していたのもどうやらご存じのようで、「TJARを逆走している人がいるという話を聞いていたので、お会いできてよかった」とのコメントを頂きました(^o^;
 さらに、Yさんは「下の木曽駒高原スキー場で、TJARの選手に混じってトレラン王国の取材を受けた」とのこと。これを聞いて「自分もこのまま降りれば取材を受けて記事に載っけてもらえるかも」という悪い考えが頭をよぎります(^^; これがちょっと楽しみになり、「早く行かないと取材が終わってしまうかも」と考えて、Yさんと分かれてから少しペースを上げて頑張って下りました。

 木曽駒頂上以降は雨もなく快適な陽気で、むしろ少し暑いくらい。「5合目」「4合目」という標識の数字がなかなか減らず長い行程でしたが、ようやく沢を渡って林道に到着。この林道も結構長いです。「道を間違えたかも」と心配になってきたところで視界が開け、20時半頃にやっと木曽駒高原スキー場の敷地に到着しました。スキー場を横切ったところに建物の明かりが見えるので、そこで取材をしているのかなと期待しましたが、到着しても宿泊客の姿は見えるものの取材っぽい人の姿は無し。おそらく取材陣は、TJARのGPSトラッキングを確認して、選手が近付いたところでスタンバイをするのでしょう。または、先ほどの飯島選手以来選手とすれ違っていないので、飯島選手が最後尾だったのかも、という考えが頭に浮かびます。

 なーんだ、と半分がっくり。でもそれよりも、おなかが空いているのでとにかく国道20号線までは早く出たいところ。車道を下っていきますが、疲れているのでまともに走れず、歩きを交えながらとぼとぼと下っていきます。
 ちなみに、後で調べてみると実はこのコース上で2名の選手とニアミスしていたようです。松浦選手はコース脇の駐車場?で仮眠をとられていた様子で気付かず。また畠山選手は、短い区間だけ車道が二手に分かれていたところがあって、そこで別コースを通ったためにお会いしなかったようでした。

 車道をしばらく下ると別荘地に入ります。ちょうどお盆休みということもあり、殆どの別荘に普段は少ないと思われる県外ナンバーの車が停まり、建物の明かりがついていました。別荘の前で花火をしている家族の姿も。向こうからすると多分すごく変な人のように見えたに違いありません(笑)

 いい加減疲れて、途中のバス停のベンチで仮眠したい衝動に駆られつつも「何とか頑張って国道までは」と思って下っていくと、木曽駒森林公園(木曽駒オートキャンプ場)のあたりで向こうからやってくる3人組を発見。いかにも登山者っぽいので「これは」と思って挨拶すると、予想通りTJARの選手でした。東山選手、田中選手と、今大会唯一の女性選手である平井選手。歩きではありますが3名とも元気な足取りです。まだまだこれから中ア・南アと長い道のりですが、完走目指して皆さん頑張ってください!

 さらに1.5kmほど走って、ようやく国道20号線に出ました。 今日はここまで、本当に長かった・・・

 時刻は既に22時を回っています。今後の行程(できれば8日間以内での完走)を考えれば、本当はできるだけ上高地に近付きたいところで、このまま寝ずに行動するという選択肢もなくは無いのですが、何しろ今日は実に20時間くらい行動していてかなりの疲れ様なのであまり現実的な選択肢ではありません。途中の駅かバス停で仮眠を取ろうと決め、まずは何か食べ物が無いかと思いながら国道20号線を走ります。木祖村の中心部(宮越あたり)に行けばコンビニがあるかな、と期待半分不安半分で走り、時々視界に入ってくる看板っぽい明かりに期待を抱き、それが食べ物屋の明かりでないことを知って落胆するというのを何度か繰り返したところで、ついに行く先にセブンイレブンっぽい看板が!あ〜、超嬉しいわ〜!

 そして、明かりを目指しているところで向こうから宮崎選手が登場!夜遅くまで本当にお疲れ様です。宮崎選手は、もう少しだけ進んで道の駅で横になる予定とのこと。おそらくこのあたりになると制限時間ギリギリのところだと思いますが、何とか静岡市の大浜海岸まで無事に到着してほしいものです。頑張ってください、と声を掛けてお別れしました。

 セブンイレブンでは、ここまで消費したエネルギーを一気に回復すべく、チキンステーキ(with スパゲティ)、豚カルビ丼、アメリカンドッグ、ねぎ味噌おにぎり、黒糖ロール、クリームパンと麦茶を購入。また靴下も新しいものを購入しました。軒下で食事にぱくついていたところに湯川選手来店。挨拶はできませんでしたが、頑張って静岡までたどり着いてほしいものです。

 おにぎりとパン数個は翌朝用に回します。やっとお腹が満たされて、せめて今日中に薮原駅までは行こうと思いもう少しだけ走ることにします。セブンイレブンの少し先にはサークルKもありました。TJARの選手は、おそらく大部分は先に現れるサークルKでお腹を満たすのではないでしょうか。後から分かったことですが、実はここのサークルKのところにTJAR選手最後尾の岩崎選手の姿があったようです。残念ながら岩崎選手には気が付きませんでしたが、今日一日、天気の悪い中、沢山の選手にお会いして応援することができました。ぜひ2年後は選手として、北から南へこのコースを横断したい、そう気持ちを新たにした一日でした。

 宮ノ越地区を通り過ぎ、国道361号を分けて山吹トンネルを通過。さらに少し走ったところで左手にバス停(吉田バス停)を発見。屋根・扉付きの小さな待合所です。転がり込むように中に入り、ここで少し仮眠しようと横になりました。時刻は既に0時を回っています。

時刻番号選手名すれ違った場所
8:20-8:4507望月空木駒峰ヒュッテ
13:1002小野熊沢岳の少し先
04阪田
14:30頃08石田濁沢大峰の手前
14:4505船橋濁沢大峰の少し先
15:00頃19木村島田娘の手前
16:05頃24飴本宝剣岳(稜線コース)通過
16:55頃15宮下宝剣岳(稜線コース)通過
17:05頃23北野宝剣岳(稜線コース)通過
17:0026梅澤宝剣山荘
17:3017大西木曽駒ケ岳頂上
18:4513奥野七合目避難小屋(ツェルト内)
19:0012小畑七合目避難小屋の少し先
19:15頃18飯島七合目避難小屋のさらに少し先
20:40頃01松浦木曽駒高原スキー場の下(道が2本あってすれ違った?)
20:45頃21畠山木曽駒高原スキー場の下(仮眠中?気付かず)
21:2503東山木曽駒オートキャンプ場前
09田中
28平井
22:10頃06福山林昌寺(仮眠中?気付かず)
22:4011宮崎R19上
23:1522湯川セブンイレブン木曽町日義店
23:30頃20岩崎サークルK木曽日義店(仮眠中?気付かず)
※ 直接お会いしなかった選手は網掛けにしています。
※「先」「手前」は自分自身から見た方向。選手から見ると逆になります。




【6日目 8月15日(水):薮原〜上高地】  時々

 吉田バス停

 ふと目が覚めると、外が明るい・・・。5時でした(笑)

 天気は曇り。ちょっと寝過ぎたか。でもその分体力は回復できたと思うのでまあ良しとしましょう。昨日買ったおにぎりとパンを食べながら今日の行動計画を練ります。
 55km先の上高地を越えて今日中に槍ヶ岳にできるだけ近づいておきたいという気持ちの一方で、この時間まで薮原に滞在してしまったのでせっかくなら味噌川ダムと小木曽簡易郵便局(9時から営業)を訪問したいという気持ちもあります。9時に郵便局を訪問してからでも上高地のある程度先、横尾くらいまではまで行けるのではないか、というふうに(良いように)考えて、ダムと郵便局を訪問してから進むことに決めました。

 そうなると時間的にはかなり余裕があるので、ゆっくりと行動開始。

 薮原駅

 薮原郵便局。こちらは2年前に訪問したので今回は写真のみ

 薮原は中山道の宿場町でなかなかいい雰囲気の町。ここで国道20号線に別れを告げ奈川方面へ。上高地まで53kmという標識がありますが、舗装道なので1日あれば十分にたどり着ける距離、だと思います。(ちょっと距離感覚がマヒしてきたかも)

 少し進むと左手にスーパーマーケット「まると」があります。ここは上高地方面から来ると最初にあるスーパーなのでTJARの選手にとってはオアシス的存在でしょう。自分も、2年前はここでカップラーメンとか豆腐とか刺身とか色々買ったな〜。今回は、ここも寄り道してしまうと今日中に上高地まで着けるかどうかさすがに心配なので、残念ながらパス。

 スーパーマーケット「まると」

 ほどなく小木曽に到着。小木曽簡易郵便局は2年前は16時を過ぎてしまったために訪問できず、果たして今後訪問する機会があるかどうかと心残りでした。今回も、ホームページにはお盆期間に休業するとは書いていないものの、もしかすると臨時休業なんてことも・・・と心配していたのですが、局にはそのような掲示は無く、どうやら今日も通常通り営業のようです。よかった〜!

 小木曽簡易郵便局

 郵便局の営業時間までに味噌川ダムを訪問したいので、大きな荷物を局前に置いて「9時までには戻ります」と書き置きして、カメラなどを持ってダムに向かいます。
 今日はここまで天気は曇りで時々雲間から日が差したりしていたのですが、ダムに向けて坂を登り始めたところでポツポツと雨が降ってきました。しかも、ダムの堰堤の高さまで登ればいいはずなのに思った以上に高度を上げているように思えてきて、「もしかするとこのまま峠越えしてあっちの方向まで行ってしまうのでは」と何となく心配になってきました。何度も引き返そうと思いましたが、これまでの経験上、生半可に行動すると決まって良いことが無いので「もう少しだけ」と思って登り続けると、ようやく木々の切れ間から味噌川ダムの堰堤が姿を現し一安心。管理事務所で無事にダムカードをゲット (^^)b

 ロックフィルの味噌川ダム

 再び小木曽集落まで戻り、ちょっと小腹がすいたので個人商店でちくわとピーナツパンを購入。ついでに暖かそうな分厚い靴下も購入しました(が、結局使いませんでした^^;)
 ところが店を出ると、さっきまで弱かった雨が強くなっています。今日も天気が読めないなあ・・・

 9時になったので小木曽簡易郵便局へ。局員さんは局前に置いている大きな荷物を気に留めてくださっていたようで、これまた温かく出迎えていただきました。これから上高地まで行くと話すと「距離が長いけれど頑張って」との有難い応援。そしてなんと、コーヒー、フルーツケーキと美味しい桃を頂きました(^o^) 本当にありがとうございます。心地良くて9時30分まで長居。雨もすっかり止んだところで、局員さんに別れを告げ、いよいよ上高地に向けて出発です。
 2年前に仮眠した細島バス停を過ぎると、いよいよ堺峠に向けてカーブの連続する地帯に入ります。両側は別荘地で、ここもお盆で遊びに来ている人が多いようです。坂自体はそんなに勾配が急というわけではなく基本的には走れる道。

 11時10分に境峠に到着しました。ここまでは木曽、ここからは安曇です。

 境峠

 安曇側はやや霧っぽくなっています。この先も天気は回復しないのか、と少し落胆しながら下りに差しかかると、暫くしていきなり雨脚が強くなってきた・・・。幸い、少し先にドライブインがあったのでそこで雨宿り。併設の蕎麦屋でそばを食べるのは汗臭くて周りの皆さんに迷惑を掛けそうな気がするのでやめました。この先、奈川ダムのほとりにレストハウスがあるはずなので、今日はそこまでランチは我慢・・・

 数十分待って、ようやく雨が小降りになったので気を取り直して出発。寄合渡で廃局になった寄合渡簡易郵便局を確認し、旧・奈川村の中心部にある奈川郵便局を訪問。郵便局の近くにある商店でさつま揚げとポカリスエットを購入して小腹を満たします。雨は降ったり止んだりの繰り返しで、気分もすっきりとはいきませんが、奈川ダムまで行けば食べ物があるはずなのでそれを楽しみにして走ります。

 奈川郵便局(再訪)

 奈川ダム湖のほとりを走っているので平坦な道でもいいはずなのに、なぜか道は登りがちで体力を消耗します。トンネルをいくつか越えたところでやっとダムの堰堤が姿を現しました。14時10分、奈川ダム到着。やっと食べ物にありつける!

  うす焼きカフェ「豆まめ」

 さっそく「うす焼きカフェ「豆まめ」」に入り、ランチメニューの「お豆とひき肉のご飯ピリ辛」と、うす焼きの「かぼちゃ・なす・みそ」「そば粉・さつまいも・えごま」をオーダー。「うす焼き」というのは奈川地区の郷土食だそうで、生地に豆など色々な具を練りこんで焼いたもの。うす焼きという名前に似合わず意外とボリュームがあります。

 美味しそう!

 いやー、がっつり頂きました(^O^)! ここまで腹を空かせて走ってきたので大満足。頑張って上高地まで走ろうという気持ちがまた湧いてきました。

 14時40分に奈川ダムを出発し、いよいよ「全行程で一番危険な(?)」国道158号線に入ります。交通量が多い上に道が狭く、山岳道路なので歩道もありません。特に、奈川ダムから沢渡までのトンネル群は、道の両側に歩道のような狭い段差部分がありながら、非常に狭いうえに道が盛り上がっていたり壊れていたりして実質的には走行不可能のため、車道の一番端っこを走るよりほかありません。背中から走ってくる車に気付かれなかったらその瞬間アウトなので、ヘッドライトを後ろ向きに装着して、後ろから来る車に気付いてもらえるようにします。それでもって道路が狭いので、車にスピードを下げてもらわざるを得ず、後続が詰まることもしばしば。走るには本当に気を遣い疲れる道です・・・

 さらには、国道158号線を走っている途中に再び雨が強く降り出して、雨具を着て走り始めるとまた止んで暑くなったり・・・。肉体的にというより精神的に参ってきました。16時を過ぎて、沢渡の「グレンパークさわんど」でコーラ休憩。
 その先も相変わらずトンネルの続く登り道。ただ、沢渡から先のトンネルは改修が済んでいるのか歩道がしっかりしているので、さっきよりは格段に走りやすくなっています。
 とはいえ、走る速度は走れるところで時速8kmくらいでしょうか。しかも、途中で約1時間ごとに休憩をとるので、実質は時速5〜6kmくらいになっています。今回の山行では約1週間にわたって、マラソンペースとは程遠いゆっくりとしたスピードで走ったり歩いたりするので、これを続けていると速く走れなくなってしまうのではないかという不安に時々襲われます。1週間走ることによる足へのダメージに加え、「速く」走る走り方を忘れてしまうのではないかという不安。2年前も、山行後数週間はまともに走れず、その後のシーズンのマラソンのタイムもあまりパッとしませんでした。やはり肉体的にダメージが大きいのか、それとも実は精神的なものなのか。長い山行を行った後の脱力感でその後のシーズンの練習に力が入らない、ということなのかもしれません。そこを盛り上げれば、意外とリカバリーは速いのかも。今回はどうなるか、今の時点では全くわかりません。

 17時30分、中の湯に到着。

 釜トンネル

 急勾配(10%)の釜トンネルは、もはや走る気力が全く湧かないので全部歩きました。トンネルを出て気を取り直して走っていると再び雨(_ _ ;) 18時30分、やっと上高地バスターミナルに到着しました。藪原から50kmちょっとのはずなのに、結局9時間もかかってしまった・・・。バスターミナル2階の食堂だけでなく1階の土産物店もとっくに営業を終了していて、食べ物は全く調達できず。淡い期待が見事に(予想通り?)裏切られました・・・。

 予定ではここからさらに槍沢登山道を進んで横尾か徳沢か・・・と考えていたのですが、上高地バスターミナルはベンチや屋根があって快適そうで、少し休んでいるうちにこの先に進もうという気持ちがすっかり失せてしまいました(^^; 先客が一組二名、別の建物の軒下で一泊するようです。自分はバス停のベンチを占領し、熊ノ平以来濡れたままだったテントなどザックの荷物を全部そこら中に広げて乾かします。夕飯はアルファ米の五目御飯2人前。

 今日は快適な環境でしっかり休んで明日また頑張ろう。ベンチの上でシュラフにくるまって19時半に就寝しました。いよいよ明日からは、ラストステージの北アルプス!




【7日目 8月16日(木):上高地〜薬師平】 

 2時起床。雨は止み、晴れて風が少し吹いています。明日の日本海到着、もとい明日の郵便局めぐりのことを考えると今日中にスゴ乗越山荘まで行っておきたいところですが、2年前は殺生小屋出発でスゴ乗越までだったので、ちょっと厳しいかな・・・。

 朝食は白米1人前と井村屋のスポーツようかん。ようかんは持っては来たもののここまで取り立てて食べたくなる機会は無く、いい加減食べないと荷物が減らないなーと思ってチョイスしました。テント泊でもそうでなくても、結局朝はダラダラして過ごしてしまいます。起きてから1時間半でようやく荷物をまとめて出発の準備完了。久々にテントなどを乾かすことができて、周りはまだ暗いけれども気分は晴れやかに3時30分にに出発しました。

 上高地〜槍ヶ岳までの槍沢ルートは最初10km以上はほぼ平坦な道になっていて、5km位の間隔で明神、徳沢、横尾と休憩適地が続くので、ゆっくり走ると朝一の行動にちょうどいい感じです。お盆だから北アルプスに登る人もかなり多いみたいで、途中のそれぞれのロッジ付近のテン場はどこもテントで一杯でした。上高地で泊った人がほとんどいなかったのが不思議なくらいです。

 横尾山荘

 空が明るくなってくるにつれて下山してくる登山者と多くすれ違うようになり、横尾に着く頃にはすっかり明るくなってしまいました。横尾山荘の前では既に出歩いている人もかなり多いです。5時過ぎてるからそりゃそうか・・。
 2年前は明るくなる頃に殺生小屋を出発して、槍ヶ岳頂上を往復してからスゴ乗越まで1日で行きました。今回はこのペースで行くと前回から2時間遅れくらいかな。どうしても景色より時間の計算が先に来てしまいます。

 横尾から先は登り基調の登山道になり、6時過ぎに槍沢ロッジ到着。南アルプス以来、久々に青空を拝むことができます(^^) 日差しが出てきてちょっと暑くなってきました。槍沢ロッジの少し上にあるテン場も多くのテントが設営されていた様子がテントの配置から見てとれますが、既に半分くらいは出発している様子。
 7時20分、天狗原分岐に到着。ここまで多くの登山者とすれ違った中で一組、父娘と思われるグループがかなりのハイペースで登っているのが目を引きました。娘さんは高校生くらい?部活で登山かスポーツで鍛えているのでしょうか。

 槍沢を見下ろす

 登山道自体は晴れているものの、見上げると槍ヶ岳の頂上付近だけは常に雲に覆われていて、残念ながら穂先を眺めることはできません。ほかの登山者もしきりに上に視線をやって、なかなか現れない槍ヶ岳の雄姿にやきもきしている様子。殺生小屋を通過し、槍岳山荘に到着する頃には自分自身もガスの中に入ってしまいました。稜線上は風もやや強く吹いています。

 ガスの中の槍岳山荘

 歩き始めて5時間以上経ち、けっこうお腹が空いてきました。食堂で軽食は10時から営業ということで、ここではカップラーメンと袋入りのおやつで我慢。ちなみに槍岳山荘では毎朝焼きたてのパンを並べているそうですが、いつも出た瞬間に売り切れてしまうそうです。



 槍岳山荘まで来たら槍ヶ岳(3180m)の頂上まで行くのが本来は礼儀というものですが、できるだけ先を急ぎたいし、このガスの中では登ってもあまり楽しくなさそうだったので今回は迷わずピークカットしました。槍岳山荘を9時30分に出発。
 槍岳山荘から次の双六小屋までは地図上ではコースタイム4時間20分となっています。でもこのタイムはかなり大袈裟に書かれていて実際はそんなにかかりません。最初に千丈沢乗越までガレた道を下ったあとは、アルプスらしい稜線伝いの展望コースになります。曇りがちで周りの山々があまり見えないのが残念。樅沢岳頂上では槍ヶ岳方面にカメラを構えてじっと待っている登山者の姿が。「見えますか?」「今日はずっとこんな感じだねえ・・・」

 樅沢岳からは双六山荘を見下ろしながらの下り。山荘で休憩している人や新穂高方面から登ってくる人が小人のように見えます。

 11時20分、双六山荘到着。さあ食べるぞ!

  やっぱりカレー!

 時々日が出るものの向かいの山の頂上はなかなか拝むことができない、何ともすっきりとしない天気です。小屋には普通の登山者にまじってトレイルランナーの姿も見られました。軽装なので日帰りトレイルランでしょうか。新穂高温泉からの往復かな?

 双六山荘から三俣蓮華岳までは中道ルートを通るはずが、間違えて巻道ルートを通ってしまい頂上までかなり登り返すことに。登山道からはるか上に見える稜線が恨めしい・・・。

 12時50分、三俣蓮華岳到着。



 失礼しました。


 頂上では数名の登山者が休憩しています。日差しが出ていると暑い、けれど隠れると寒い・・・

 三俣蓮華岳からは裏銀座(北アルプス主稜線)への道を分け、立山連峰方面に入ります。こちらの方角はこれから進む稜線が見えていて気持ちの良い尾根歩き。頂上を出て30分ちょっとで黒部五郎小舎に到着しました。

 

 ちょっと趣向を変えて親子丼にしてみました。小屋の前には水が流れていてキュウリとリンゴが冷やしてあります。

 ここでもトレイルランナーの男性に遭遇。小屋泊で北上している途中で、本当はもっと先まで行きたいけれど次の小屋が遠いので今日はここで宿泊するとのことでした。確かに14時近くになって、次の太郎平小屋までコースタイム約7時間となると結構な時間になってしまいます。自分はこれまでおおよそコースタームの半分で来ていますが、それでも18時近くにはなりそう。どうやら今日中に、さらに薬師岳を越えてスゴ乗越まで行くのはかなり難しそうです。とりあえずは太郎平小屋(幕営指定場所は小屋の少し先の薬師峠)を目指してもうひと頑張りしよう。

 ランナーに別れを告げカールの道を走ります。時々途中の流水で喉の渇きを潤し、15時15分に黒部五郎岳(2840m)到着。

  頂上からカールを見下ろす

 頂上からは何と言ってもカールの風景が壮大!残念ながら周りの山々は雲に隠れてしまっています。今日は雷の兆候もなく、明るいうちは十分に行動することができそう。

 もう15時を過ぎていますが、黒部五郎の肩のところで一組、頂上で一組の登山者にお会いしました。さらに、ここまで来る途中でも小屋から往復する一組の登山者を追い越していて、小屋に戻る頃には18時くらいになっているのではないかと(自分のことは置いておいて)ちょっと心配に。ちなみに頂上で出会った方はここが百名山の90座目とのこと!百名山は全国に散らばっているので、アルプスばかり足が向いてしまう自分は確か30ちょっとのはず。荒島岳とか登る機会無いわー。

 15時半に頂上を出発、あとはひたすら太郎平小屋に向かって進むのみです。16:25赤木岳、16:50北ノ俣岳・・・。だいたいコースタイムの半分で進んでいることを確認しながら、走りやすい道をひたすら先を急ぎます。その甲斐あって、まだ十分に明るい17時40分に太郎平小屋に到着しました。

 この先にある薬師峠のテン場で泊まるにはここでテントの申し込みをした方がいいのだろうと思って小屋に入ってみると、「今の時間はまだテン場にスタッフがいます」との答え。思っていたよりも深夜営業だ!
 木道を少し走っていくとやがて眼下にテン場が現れました。

 薬師峠キャンプ場を上から見下ろす

 お盆の時期ということで場所が埋まってしまっていないか心配していましたが、広いテン場で、スペースも所々に空いているようです。

 17時50分、テン場到着。本日の行動時間は14時間ちょっとでした。テン場におられる方々は大方夕食も終わったようで既に皆さんまったりモード。写真左手に見えるのが管理棟で、スタッフが2名受付をしています。申込用紙に「本日の出発地:上高地」「明日の宿泊地:室堂に下山」と記入したところ「上高地から登って室堂に下山するのは今シーズン3人目ですね」とのコメント。そうか、無謀な人があと2人もいたか(^^; 管理棟ではビールも売られているという準備の良さ!

 早速テントを設営しお湯を沸かします。今晩の夕食は白米二人前としじみスープ。テントの前で食べながら、非自立式テントに興味があるという登山者としばらく立ち話。「雑誌などでは見るけれど、実際に使っている人は初めて見た」とのことでした。確かに山で使っている人はまだそんなに多くない気がしますね。薬師峠でも自分以外に非自立式のテントの方はおられないようです。(徳沢か横尾には数張あった気がします。)
 また、その方は2年前に南アルプスで登山している時にTJARの選手を見たとのこと。TJARもだんだんメジャーになってきた?

 それにしてもここのテン場は虫が多い!テントの窓を開けて中に入っていると、ものの数分で10匹ぐらいの蚊が集まってきます(--;



 今日は目指していたスゴ乗越までは行けませんでしたが、その分明日はできるだけ早く行動して、下界で1局でも多く郵便局を訪問したいものです。

 目覚ましを1時にセットし、19時半に就寝しました。  




【8日目 8月17日(金):薬師平〜常願寺川河口】 

 予定通り1時に起床。朝起きてテントから顔を出す瞬間はいつも期待半分不安半分です。見上げると、外は満天の星空!見事に期待に応えてくれました。

 今日は郵便局訪問のため、TJAR正規ルートの剱岳までは北上せずに、途中の立山から室堂に降りる計画です。それでも室堂まではコースタイムにして17時間の距離。コースタイムの半分で行けたとしても室堂に降りるのは昼前になる計算です。そこから立山道路を下って美女平まで行って地鉄立山駅まで降りても、16時を回って郵便局の営業が終了してしまうのではないか、という不安が・・・。だから昨日のうちにスゴ乗越まで行きたかったんだよなあ、と言っていても時すでに遅し。とにかく少しでも巻いて巻いて前に進むしかありません。

 朝食はアルファ米の赤飯2人前。これにて持参したアルファ米13人分は晴れて全部消費しました(^^) アルファ米は軽くて味もそんなに悪くなく、お湯だけで食べられるのでトレラン山行ではこれからも重宝しそうです。あらかじめ袋から出してビニール袋に入れ替えておけば100gくらいは軽量化できたかな。山の上で封を開けるのに難儀することもないし(笑)
 テントはいつも通り露が付いていますが、拭き掃除もそこそこに急いで収納して、今日は起床から1時間25分で出発することができました。時刻は2時半、さすがにテン場の皆さんはまだ就寝中です。

 最初の薬師岳山荘までの登り、さすがに誰もいないかと思ったら薬師岳山荘からの登山者一名とすれ違いました。また小屋の外ではスタッフさん?と挨拶。

 森林限界を超えると、所々道が開けている場所もありますが、岩にしっかりとマークがついているので迷うことはありません。朝食を2人前食べたおかげで登りのペースも快調そのもの。3時50分に薬師岳頂上に到着しました。



 何といっても今朝は星空がきれい!カシオペア座や天の川など、それこそ時間があればいつまで見ていても飽きません。まだ暗い中の登山でも、満天の星空の下だったら気分が自然と上向きになりますね。
 風が日本海から吹いています。左手眼下に見える綺麗な夜景はおそらく富山の方向でしょう。一方で長野県側に目をやると、遠くの方で時々雷光が光るのが見えて、これまた幻想的な光景です。

 北薬師岳を越えて間山に近付くにつれて空が明るくなり、やがて顔を出す太陽。山の上で明るく輝く太陽をどれほど待ち望んでいたことか!いよいよTJAR逆走山行最終日、今日はいい一日になりそうです。



 5時40分、スゴ乗越小屋に到着。スカッと晴れています(^^)



 この写真からはちょっと見にくいかもしれませんが、「スゴ乗越小屋」の文字の右に描かれている熊の絵がかわいいです。

 ここからまた気持ちの良い稜線歩きに入ります。今日は山行最終日、これまでカメラの電池残量を考えて写真をセーブしてきた分、今日は写真をちょっと多めに撮ってます(笑)

 スゴの頭から薬師岳を振り返る

 越中沢岳

  越中沢岳からの眺め。右の写真の後ろは日本海

 ひつじ雲?いわし雲?とにかく見事!

 走っている途中、登山道に1羽のライチョウが現れて、走っている自分から逃げるようにしてライチョウも前をぴょこぴょこと走り出しました。登山道が下りになっているので、自然とライチョウは道なりに登山道を走ります。そんな状態が2分くらい続いたでしょうか。まるでライチョウが道案内をしてくれているみたいで面白い体験でした。

 五色ヶ原のあたりは植生保護のため木道が多く敷かれていて、段差が無いところは走りやすい反面、段差があるとどうしても階段状になるのでちょっと疲れます。まあ大したことないですが。

 五色ヶ原。写真中央に見えるのが五色ヶ原山荘

 8時35分、五色ヶ原山荘到着。出発から6時間経っているので既に結構おなかが空いています。2年前にここでカップラーメンを食べた記憶があったので薄々感づいてはいましたが、こちらの山荘では軽食は営業していないということ。でもインスタントラーメンとクッキーがあれば問題なし!



 「山の天気は9時まで」の言葉通り、9時近くなって太陽が時々雲に隠れるようになり、隠れると少し寒くも感じられます。
 ここで、今回の山行で持参しながら出番がこれまで無かったFOMA用充電器「ecoソーラーパネル01」を満を持して試してみました・・・が、丁度うまい時に太陽が雲に隠れてしまい実験失敗。そんなに重くないとはいえ200g、今回の山行ではどうやらお荷物となった感が(^^;

 水を補給して9時05分に出発。ここまでのコースは予定通りコースタイムの約半分で来ているので、このまま行けば室堂到着は事前の予想通り昼前になりそうです。相変わらず下界で郵便局を訪問できるかどうかは微妙。やっぱり時間を大きく挽回することは難しいなあ・・・。
 これは今回の山行全体を通して言えることで、山行中は比較対象として2年前の通過時刻が常に頭の中にありました。1日目こそ2年前よりもかなり先まで進んで横窪沢小屋まで行けましたが、2日目以降は常にトントンで、前回よりも1つ手前のテン場に泊まった時には次の日のテン場もやはり前回の1つ手前。2年前と装備もほとんど変わらず、また走力もほとんど変わっていないので、当然と言えば当然の結果でしょう。今度また同様の山行をすることがあれば、タイムを飛躍的に(例えば1日とか)短縮するためには、荷物を思い切り少なくするか、走力を思い切り上げるか、または1日の行動時間を長くするか、少なくともどれか(または複数)が必要になる、ということを今回の山行では改めて思い知らされました。

 10時に獅子岳到着。立山の雄姿とともに黒部湖も綺麗に見えています。

 獅子岳から立山を望む

 獅子岳から龍王岳までは最後の登り。10時50分に室堂へ降りる分岐点に到着しました。分岐には富山大学の建物があり、ここまで来ると室堂から上がってくる登山者が一気に増えます。自分はここから最短の時間をとるため、立山三山は今回はパス。一ノ越経由で下るルートは、コースタイムが少しだけ長いのと、登山者が多くて渋滞しそうなのも気になったので(2年前は一ノ越から立山(雄山)に登るルートがひどく渋滞していました)、分岐からは浄土山経由で下ることにします。

 浄土山

 途中までは急な岩場もある登山道っぽい道でしたが、室堂山のあたりからは道が階段状になっています。道行く人が格段に多くなり、下から登ってくる人の中には「この道を登ると立山(たぶん雄山のこと)に登れますか?」と訊いてくる人もいて、ここは観光地なんだなと実感。途中で休憩中に、そこにおられた登山者の女性グループに「今日はこのまま日本海まで走って下ります」と話したところ、下で立山道路を走っている時にわざわざバスから手を振ってくださるなんてこともありました。

 話は戻り、11時30分に立山室堂ターミナルに無事到着しました。昨日からの「第3ステージ」北アルプスもここまでで一段落、あとは日本海を目指して走るのみ!
 トレイルランナーの中には「舗装道を走るのはつらい」と言う人も多いですが、自分自身は舗装道をあまり苦にしない(というよりも、舗装道になるとほっとする)たちなので、気分的には少し楽になりました。とはいえ郵便局を訪問するためには急がないといけないので、そちらはかなり気がかりです・・・

 まずは室堂ターミナル内にある立山山頂簡易郵便局を訪問、風景印と日付印をゲットしました。こちらの郵便局は平成13年に訪問して以来実に11年ぶりの訪問になります。

 立山山頂簡易郵便局

 先を急いでいるとはいえ、腹が減っては戦もできません。お昼時で食堂はどこも混んでいるようだったので、店頭で「ポーク肉まん」と「あずきおやき」を購入。



 11時55分に室堂を出発。ここ室堂から美女平までは立山道路を辿ると約22kmの距離がありますが、地図を見ると、室堂から美女平まで歩行者用の道がつながっているようです。こちらを通るとショートカットできるかもしれないという期待を抱き、まずは室堂から天狗平まで登山道を選択。ところが、この道がどうも一筋縄ではいかない感じの道で、石を含んだ状態で舗装されていて何とも走りにくい・・・。これだったら立山道路を通った方が早かったかも、と思いつつ、とにかく天狗原山荘まで走って下ってきました。

 天狗原山荘から弥陀ヶ原・追分までは今度は道が3種類あって、立山道路のほかに「木道」と「旧道(登山道)」があります。このうち一番時間が掛からなさそうなのは旧道なので最初はそちらを下ろうと思っていたのですが、旧道入口から道を確認するとなんだか下りにくそう。そもそも室堂よりも下の登山道なんて歩く人がほとんどいないので、道が荒れていることは目に見えています。というわけで旧道はやめて、木道はコースタイムが長いようなのでこれもパスし、結局は立山道路を走って下ることにしました。高度を稼ぐためにぐねぐねと道が曲がっているので距離は長くなりますが、急がば回れ、基本的に下り基調の道なので結局はこれが一番早いのでしょう。
 とは言いながら、実は立山道路は果たして歩行者が通ってもいいのかよくわからなかったので、天狗原山荘の方に尋ねてみようと思いましたが不在。そこでバス停に泊まったバスの運転手さんに尋ねてみると「気を付けて、道路に出ないようにしてください」との答えでした。
 ちなみに、この縦走記を書いている時に気になって富山県道路公社のHPを見てみたところ、「立山有料道路は、自動車専用道路ではありませんが、バスや工事車両が往来するうえ、特に桂台から美女平間は、落石等の危険性もありますので、徒歩での通行は御遠慮頂いております。」とありました(^^;

 12時55分に弥陀ヶ原を通過。室堂ほどの賑わいはありませんが、こちらにも観光客の姿があります。

 弥陀ヶ原ホテル

 弥陀ヶ原から少し下の追分までは木道の自然探索道を下ります。この区間は弥陀ヶ原周辺の推奨散策ルートになっているので道はしっかりしています。木道は追分からさらに下に続いているのですが、いざこちらに足を踏み入れてみると道の両側の藪がすごい・・・。足元は割としっかりしているものの、なにぶん通る人がほとんどいないのでしょう、手入れがされた様子もなく茫々の草がまとわりつきます。所々階段状になっていたり、木道でない道も枝が邪魔をしていたり。これではコースタイムの半分どころかコースタイムで進むことも怪しい・・・。道は基本的には立山道路と並行に走っていて、時々車道が姿を現すので、たまらずそこで車道に移りました。九十九折で距離は少し長いとはいえ、こちらの方が格段に走りやすくてかかる時間も短いです。

 追分から少し下ると弘法という場所があります。弘法からは称名滝に降りる登山道が別に存在していて、そちらを通ると称名滝からはカーブの少ない県道を地鉄立山駅まで下ることができます。実はそちらのコースの方が楽そうだなと目を付けていたので、その方向に歩を進めてみましたが、今度は称名滝までの登山道が落石で通行止とのこと・・・。どこまで登山者が少ないんだ。皆さん車で来られるのが普通なんですねやっぱり。仕方が無いので再び立山道路に戻り、ここからはもう浮気はしないと心に決めて立山道路を下ることにしました。

  滝見台から眺める称名滝。遠いです

 両側に林が広がる道、歩いている人はもちろん無くバスも数分おきにしか通らないので、ほぼ景色を独り占めしている感覚。弥陀ヶ原より下で人に会ったのは、途中で道路工事をしている方にどこから来たのと声を掛けられ「室堂から走ってます」と答えたのが唯一でした。

 滝見台を14時に通過し、営業時間中に郵便局を訪問できるかもという希望が湧いてきました。この調子で行けば美女平には15時より前に到着して、美女平から地鉄立山までの登山道さえ道がしっかりしていれば、16時までには地鉄立山駅近くの立山千寿ヶ原簡易郵便局を十分訪問できそうです。

 14時35分、美女平到着。室堂から2時間40分で22km走ってきました。駅はケーブルカーとバスを乗り換える観光客で相当な混雑。さっきまでとはえらい違いです。

 美女平駅

 日が当たって暑い中、室堂以降は行動食しか食べておらず水も尽きかけていたので、美女平でコーラとスイートポテトを補給。生き返りました!



 15分ほど休んで美女平を出発し、いよいよ今回の行程で最後の非舗装道となる地鉄立山駅までの下りの登山道に入ります。このあたりは材木のような直方体の石(材木石)がゴロゴロしているため、この道は材木坂と呼ばれているそうです。それに合わせてなのか、登山道の階段には(石ではなく木の)材木が使われていました。
 結構な急坂で一気に高度を落とすので、進むにつれてどんどん暑くなります。登山道の脇には、昨日今日と歩いてきた北アルプスの稜線でよく見かけた環境省・富山県設置の数十センチほどの道標がここにも置かれていて、この道が、通る人は少なくても、北アルプスの一部であることを窺わせます。

 誰ともすれ違わないまま、15時15分に地鉄立山駅到着。さっそく駅前の立山千寿ヶ原簡易郵便局を訪問しました。

 

 旅館の入口の外側の脇に、郵便局の窓口が別に設けられているという面白い構造です。HPによると14日(火)から16日(木)までお盆休みとのことで、そのまま今日も臨時休業するのではないかという心配も正直ありましたが、御覧のとおりちゃんと営業していました(^^)

 さて、郵便局を訪問し終わって今の時刻は15時半。手持ちの地図を見ると、ここから隣の芦峅寺簡易郵便局までは5kmくらいのようです。もしかすると今から走って16時までに間に合うかも?自信がありませんでしたが、可能性に賭けて郵便局を目指すことにしました。道を間違えては元も子もないので局員さんに確認。県道6号線に面しているとのことなので、県道沿いを走っていれば見落とすことは多分ないでしょう。
 立山駅から常願寺川を渡って県道6号線に入り、ほぼ平坦な道をひた走ります。しばらく走ると常願寺川にかかる大きな橋が遠くに見えてきました。郵便局はおそらくあれよりも向こう側。まだまだ遠いなあ、と打ちのめされそうになりながらも、まだ20分くらいあるので可能性はあると信じて走り続けます。

 この30分間、とにかく頑張りました。重い荷物のこともしばらく忘れて、おそらくキロ5〜6分くらいで走れていたのではないでしょうか。その甲斐あって15時56分、営業終了4分前に何とか間に合いました!

  

 休憩がてら郵便局に5分ほど長居してしまいました。

 続いて有峰口駅近くの小見郵便局を訪問(こちらは17時まで営業しています)。室堂からここまで、時間に追われながら、我ながらよく頑張りました(笑) ここまで来れば、あとは日本海まで約30kmの道のりを今日中に進めばよいので気分的にも時間的にもかなり余裕があります。というわけで郵便局の隣にある商店で色々買いこんでエネルギー補給。

 有峰口の山本商店。左手奥が郵便局(写真では看板しか見えません)

 パンと焼き豚を買って向かいの空き地で食事していたところ、商店の方に自家製の茄子の漬物を頂きました(^o^)!
 「ここまでアルプスを縦走してきて、これから日本海に向かう」と話したところ「日本海から太平洋まで行くレースもあるんですってね」という答えが返ってきました。なぜ知っているのか伺ってみると、どうやらNHKのローカルニュースで流れたとのことです(^^)

 ちなみに、ここでもecoソーラーパネル01を試してみましたが、日差しはあるものの夕方なので日射量が弱くほとんど充電できませんでした。どうやらこの装置、日中の日差しが強い時間帯限定のようで。



   さて、長らく休憩してしまったので、そろそろ旅のフィニッシュに向けて出発の時間です。17時20分に有峰口を出発して県道6号線を日本海方面へ。下界は夕方になっても暑いのでコンビニや自販機でこまめに水分を取ります。

 岩峅寺駅では長めに休憩を取って、駒ケ根以来洗えていなかった体をできるだけきれいに拭いてきました。さらには、途中の郵便局で写真を撮り、五百石駅前のスーパーでは弁当や総菜を買いこんで栄養補給。今日の23時59分までに到着できれば問題ないという考えなので、本当に休み休みのランです。

  

 写真は釜ヶ淵郵便局、立山郵便局、上条郵便局。

 今回に限った話ではありませんが、「走っている途中、どんなことを考えているのか?」と聞かれることがあります。今は夜、周りも良く見えない中で住宅が立ち並ぶ道をひたすら走る。ただ単調な走り、はっきり言って「暇」な時間帯。
 そんな時に、今回走ってきたルートを1日目から少しずつ丹念に思い返すのは良い暇つぶしになります。まず最初に大浜海岸を思い浮かべます。「広い道に合流して、静岡ICの脇を走って、東海道本線と交差して、交番の前の信号を渡って・・・、(中略)・・・3時半に久能尾に到着して、ここで自販機のジュースを飲んでいて、犬に吠えられ、家の人を起こしてしまって、そこから暗い霧の坂道を登り始めて・・・」そんな感じで2日分くらい記憶を辿っていると、たいがいコンビニが目の前に現れるので、休憩して水分補給。再び走り出し、途中から記憶を辿る旅を再開。まるでどこぞの哲学書みたいです。

 休みながら北上し、北陸自動車道、地鉄、国道8号線と交差していよいよ目指す水橋地区に入ってきます。このあたりまで来て、そろそろ頭の中にサライが流れ始めます。白岩川沿いを走っていると、対岸に「白岩の湯」というネオンが見えます。風呂に入りたいけれど、これから日本海に行って、戻ってきたらもう営業時間は終了しているだろうな。

 さらに白岩川沿いを走って、ついに県道1号線に突き当たりました。一番日本海側を走っている道です。ここを左折し、1kmほど走って常願寺川沿いまで移動します。



   ゆっくりと今川橋を渡って常願寺川の左岸へ。右折して自転車道に入れば、海岸まではわずか100m。


 ・・・そして22時55分、ついに日本海到達!









【おまけ・ゴール後】

   糸魚川横町郵便局、糸魚川押上郵便局、糸魚川郵便局

 南小谷郵便局

 松本の「たくま」でチキンカツカレー定食(大)このボリュームがたまらない!






【通過時刻】

※地点名の赤字はTJARと異なるコース
通過地点 時間(今回) 時間(参考:2年前) 備考
大浜海岸(静岡市)
1日目00:00
1日目03:00
久能尾
1日目03:25
1日目07:20
静岡市街〜井川までのルートはTJARと異なる
千頭駅
1日目06:30
1日目10:25
寸又峡
//
1日目13:00
2年前は郵便局訪問のため寸又峡に寄り道
接岨峡温泉
1日目09:05
1日目15:40
井川
1日目11:30
1日目17:30着
2日目04:40発
2年前は民宿泊
白樺荘
1日目14:35着
1日目15:10発
2日目07:25
畑薙大吊橋
1日目16:30
2日目08:50
横窪沢小屋
1日目18:15着
2日目04:45発
2日目10:30
茶臼小屋
2日目06:00
2日目12:05
聖平小屋
2日目07:55
(小屋分岐)
2日目14:30頃着
3日目02:45発
今回は小屋には寄らず
聖岳
2日目09:35
3日目04:20
百間洞山ノ家
2日目12:35着
2日目13:10発
3日目07:10
赤石岳
2日目15:00
3日目08:55
荒川小屋
2日目16:15着
3日目04:45発
3日目10:05着
3日目10:35発
荒川前岳
3日目05:40
3日目11:20着
3日目12:40発
2年前は悪沢岳往復。今回は寄らず
高山裏避難小屋
3日目07:00
3日目14:15着
4日目03:15発
三伏峠
3日目10:15
4日目06:30
塩見小屋
3日目12:00
4日目08:25
塩見岳
3日目13:00
4日目09:25
熊ノ平小屋
3日目15:40着
4日目02:45発
4日目12:15着
4日目12:50発
野呂川越
4日目05:20
4日目15:20
両俣小屋
//
4日目15:50着
5日目03:05発
2年前は両俣小屋まで降りてテント泊。今年は通過。
仙丈ケ岳
4日目08:45
5日目07:05
北沢峠
4日目11:00
(大平山荘)
5日目08:40
(長衛荘)
TJARは北沢峠・仙流荘を通らない
仙流荘
4日目14:00着
4日目15:05発
5日目12:00着
5日目12:25発
市野瀬
4日目15:50
5日目14:15
駒ケ根
4日目19:20着
5日目02:00発
5日目18:05着
6日目05:05発
駒ケ根駅で仮眠。2年前はビジネスホテル泊
駒ケ根高原
5日目03:05
6日目05:50
空木駒峰ヒュッテ
5日目08:10着
5日目10:35発
//
2年前は空木岳を通らず、北御所登山口から木曽駒ケ岳へ
木曽駒ケ岳
5日目17:30
6日目11:45
木曽駒高原スキー場
5日目20:30
6日目14:15
薮原
5日目23:30着
6日目05:50発
6日目17:15頃
吉田バス停で仮眠
小木曽
6日目07:30着
6日目09:30発
6日目18:55
味噌川ダムを訪問
細島バス停
6日目09:50頃
6日目20:00頃着
7日目02:40発
境峠
6日目11:10
7日目04:00
奈川郵便局
6日目13:10
7日目06:50着
7日目09:10着
奈川ダム
6日目14:10着
6日目14:40発
7日目09:55
上高地
6日目18:30着
7日目03:30発
7日目13:30着
7日目14:20発
殺生ヒュッテ
7日目08:30
7日目19:00着
8日目05:00発
槍岳山荘
7日目08:55着
7日目09:30発
8日目05:35着
8日目06:05発
2年前は槍ヶ岳頂上往復。今回はカット
双六小屋
7日目11:20
8日目08:00
三俣蓮華岳
7日目12:50
8日目09:35
黒部五郎小舎
7日目13:35着
7日目14:05発
8日目10:20着
8日目10:40発
黒部五郎岳
7日目15:15
8日目11:55
薬師峠テン場
7日目17:50着
8日目02:25発
8日目14:40頃
薬師岳
8日目03:50
8日目16:15
スゴ乗越小屋
8日目05:40
8日目17:55着
9日目04:00頃発
五色が原山荘
8日目08:35着
8日目09:05発
9日目07:00着
9日目07:20頃発
立山(雄山)
//
9日目09:55
剱岳
//
9日目14:25
馬場島
//
9日目18:00頃
魚津(早月川河口)
//
9日目23:35着
立山室堂
8日目11:30
今回はTJARコースから外れ、立山室堂経由で富山湾へ
美女平
8日目14:35
地鉄立山駅
8日目15:15
岩峅寺
8日目18:30着
8日目19:00発
水橋(常願寺川河口)
8日目22:55着



【通過ルート】

灰色はTJAR標準ルート(今回の山行で通らなかった部分)
※地図が表示されない場合は、地図部分を更新してみてください。