KING CRIMSON





1969年に突如、彗星の如く現われたキング.クリムゾンのデビュ−アルバム「クリムゾンキングの宮殿」は現在も尚色褪せる事がなく、全世界のプログレファンの心の中に焼き付いている。
確かに彼等のデビュ-アルバムは誰もが認める素晴らしいアルバムであったが、イアン.マクドナルドとピ−ト.シンフィ−ルドが中心となり、彼等2人のプロジェクトであったような気が私個人としては感じてしまう。
そして、本当の意味でリ−ダ−であるロバ−ト.フィリップが本領を発揮した時期というのが、ジョン.ウェットンやビル.ブラッフォ−ドが参加した時期だと思っている。
つまり、「太陽と戦慄」「暗黒の世界」そして「レッド」という私が最もこのバンドに魅了された時期だ!

今でも憶えている。
私が小学4年生頃、クラシックばかり聴いてた父が何かの批評を読んで「太陽と戦慄」のレコ−ドを買って来た。
父が買って来たこのレコ-ド! 最初はただの効果音にしか聴こえなかったが、その内にその何とも言えぬ音楽性に惹かれ、日本のフォ-クソングばかり聴いてた私は、洋楽のロックを聴くようになり、自然とプログレ小僧になったのだ。


4枚目のアルバム『アイランド』リリ−スとその後のツア−終了と同時に、フィリップ以外のメンバ−は全員脱退し、彼はニュ−メンバ−を集めるために、1年間、音楽シ−ンから姿を消した!
当時のイギリスのプログレ界が狭かったとは言え、誰がイエスの名ドラマ−であるビル.ブラッフォ−ドがクリムゾンに参加すると思っただろうか?
そして、ファミリ−で活動してた名ベ−シストのジョン.ウェットン!
「リ−ド.ボ−カルを務めるのも、このクリムゾンが初めてだった」という彼自身も、このグル−プの参加は大きな飛躍であり、経験であったに違いない。
ウェットン&ブラッフォ−ドのリズム隊のコンビネ−ションは、フィリップの想像以上だったと思う。
そして、バイオリニストのデビット.クロス。
他のメンバ−に比べて、ロックミュ−ジシャンとしての経験が殆どない彼であったが、何かがロバ−ト.フィリップの心を捉え、また、クリムゾンの歴史の中で、彼だけがバイオリニストなのだ。
残念ながら、『太陽と戦慄』のレコ−ディング後に脱退してしまったジェイミ−.ミュア−であるが、後々のビル.ブラッフォ−ドのドラムスやパ−カッションに多大な影響を与えた人だ!

勿論、現在進行形でもクリムゾンは、ロバ−ト.フィリップを中心に活動を続けているが、この70年代のそれとは異なるものとなってしまった。



LARKS' TONGUES IN ASPIC (太陽と戦慄)

1 Larks' Tongues in Aspic,Part One
2 Book of Saturday
3 Exiles
4 Easy Money
5 The Talking Drum
6 Larks' Tongues in Aspic,Part Two

キング.クリムゾンは前作「アイランズ」をリリ−スし、暫くしてリ−ダ−のフィリップ以外のメンバ-全員が脱退した。
そしてフィリップは全く新しいメンバ-を集め、全く新しいクリムゾンを作ったのだ。
当時のイギリスEGレコ−ドが考え出した宣伝文句は「これがキング.クリムゾンのファ−スト.アルバム。されど、これは6枚目のアルバムでもある。」であった。
まさしくその通りだった。
元イエスのビル.ブラッフォ−ド(dr)、元ファミリ−のジョン.ウェットン(b & vo)、そしてデヴィット.クロス(violin)とジェイミ−.ミュ−ア(percussion)という全く新しいメンバ−を揃えての再スタ-トであった。
今までのクリムゾンようなメロディアスなサウンドでは決してないのだ。
アルバムジャケットが象徴している「太陽と月」
世の中のあらゆる二面性(相対性)を表現しようとしていたと思う。
このアルバムは1曲が良いというそんな生易しい音楽ではないのだ。
各メンバ−の才能と実力により作られたアルバム全体を通して聴いて、はじめてこのアルバムの物凄さを感じるのだ。



STARLESS AND BIBLE BLACK (暗黒の世界)

1 The Great Deceiver
2 Lament
3 We'll Let You Know
4 The Night Watch
5 Trio
6 The Mincer
7 Starless and Bible Black
8 Fracture

前作が二面性(相対性)をテ−マとしていたのであれば、この作品では「光の流出」をテ−マとしてるかのようだ。
パ−カッションのジェイミ−.ミュ−アの脱退以外は、前作と同じメンバ-のレコ−ディングである。
ボ−カルナンバ−である「The Great Deceiver」「Lament」「The Night Watch」以外はスタジオライヴの一発取りらしい!
特にラストを飾る「Fracture」の緊張感ある演奏は鳥肌が立つほどだ!



RED (レッド)

1 Red
2 Fallen Angel
3 One More Red Nightmare
4 Providence
5 Starless

私の記憶によると、このアルバムはフィリップが解散宣言をした数日後にリリ−スされた。
デヴィット.クロスが脱退し、フィリップ、ウェットン、ブラッフォ−ドの3人が正式メンバ−として残り、レコ−ディングには脱退したばかりのデヴィット.クロスをはじめ、元メンバ−のイアン.マクドナルド等が参加している。
ビル.ブラッフォ−ドのドラムが更に上達(進化)して、かつてのジェイミ−.ミュ−アの影響からか、ドラマ−としてだけでなく、パ−カッションの上達が目覚ましい。
アルバムの裏ジャケットのメ−タ−がレッドゾ−ンに針が振り切れているところが、当時のクリムゾンの状況を表しているような気がする。
ラストを飾る「Starless」は名曲中の名曲!
確かな情報によると、この後、イアン.マクドナルドが正式メンバ−に復帰して、フィリップ、ウェットン、ブラッフォ−ド、そしてマクドナルドという最強のメンバ−が実現する筈だったらしいが、フィリップの解散宣言により全てが幻と消えてしまった。



USA

1 Walk On ... No Pussyfooting
2 Larks' Tongues in Aspic,Part Two
3 Lament
4 Exiles
5 Asbury Park
6 Easy Money
7 21st Century Schizoid Man
8 Fracture
9 Starless

私の記憶によると、彼等が解散して1年ぐらい経って、このライヴアルバムは当時リリ−スされた筈だ。
キング.クリムゾンはロバ−ト.フィリップ以外のメンバ-をチェンジして、今尚活躍しているが、私の心の中では事実上のキング.クリムゾンのラストコンサ−トかもしれない。
今まで幾つかのライヴアルバム(ブットも含む)を聴いて来たが、このアルバムはそういった中でも抜きん出ての素晴らしい出来栄えだ!

CD化になってからは本アルバムは2曲(「Fracture」「Starless」)が新たに追加された。



 

今となってはフリップとウェットンそしてブラッフォ−ドが再び組み、クリムゾンを再編する可能性は、21st Century Schizoid Band以上に難しいと思うし、ゼロに近いと思う。
しかし、クリムゾンとしてでなくても、何らかのプロジェクトとして彼等3人が中心となって、いつかドデカイことをやってくれるのではと微かな期待を寄せているのは私ばかりではあるまい。


[訃報]
エイジアは火曜日(31日)、「残念ながら、アイコニックなシンガー、ジョン・ウェットンが今朝、就寝中に亡くなったと伝えなくてはならない。
Rest in Peaceジョン 1949年6月12日−2017年1月31日」と、Facebookでその死を告げた。
Teamrock.comは、マネージャーからの話として、結腸癌を患っていたと伝えている。
ウェットンは3週間ほど前、癌の治療に専念するため、3から4月に北米で開催するジャーニーとのジョイント・ツアーに参加できないと発表したばかりだった。
その時は、「当然のこと、エイジアの歴史的ツアーになるのがわかっているものの始まりを逃すのは残念だが、年内にはエイジアと共にステージに戻るつもりだ。
長い目で見れば、この決断が自分の健康にとってもファンにとっても1番ためになることはわかっている」と、復帰を誓っていた。

グレッグ・レイクさんに続き、クリムゾンのもう1人の偉大なボ−カリスト&ベ−シストだったジョン・ウェットンさんまでもが亡くなってしまいました。
ここ数年、UKやエイジア、自らのソロ、そしてSteve Hakcettのゲスト参加等、精力的にライヴ活動をしていたウェットンさん。
私Yutakのプログレの入り口は実はクリムゾンの『太陽と戦慄』だっし、その時のボ−カル&ベ−スがウェットンさん。
レイクさんとはまた違った魅力のあるボ−カリストで、あのハスキ−ヴォイスが大好きでした。
とても寂しくなります。

これで、フリップとウェットンそしてブラッフォ−ドが再び組み、かつてのRED組でまた活動する可能性はゼロになってしまいました。
でも、長年、特に日本のファンのために来日してくれてライヴ活動を精力的に行ない、そして我々を楽しませてくれたウェットンさんに心から感謝したいと思います。
本当にありがとう。

「君こそ最高だよ!」