そんなのズルい!!

ほんのちょっとした傷害事件だと思っていた。
そんなヤマに、鷹山さんが絡んでいるだけだと思っていた。
けれど、あの二人が関わって、小さく済んだ試しはなく、案の定、しっかり大きく事件はなっていった。

僕だって、こんなのに巻き込まれたくはなかったよ。
僕の手元には、鷹山さんと、鷹山さんがやくざ屋さんから奪った覚せい剤がある。
これで、僕たちが無事で済む訳がない。

また、医者の世話じゃないか。
ふうっと息をついたら、隣の鷹山さんが、顔を覗き込んできた。

「大丈夫か?」
「大丈夫なわきゃ、ないでしょ」
「それだけ話せりゃ、まだ行けるな」

他人事だと思って。
左大腿部被弾、右上腕部被弾、後は擦過傷?
生傷のオンパレードか。今日は厄日だ・・・。

「大体、鷹山さんがいらんとこつつくから、やくざ屋さんが追っかけて来るんでしょう!」
「いいんだよ、俺たちを追いかけてくれた方が。その方が、龍が助かる」
「龍・・・?」

僕は合点がいった。鷹山さんとあの時、荷物を交換したんだ。
ということは、僕たちの荷物の中身は・・・。

「石」
「!」
「それに気づいた龍が、鳩村に連絡をするという、計算だよ」
「いつ気づくんだよ!」
「さあ」

どこまでお気楽なんですか!
僕が気が遠くなりそうになったのは、出血だけじゃない・・・。
ついてくるんじゃなかった・・・。

「大体、平尾君が女紹介するって言った途端に、着いてきたのが運の尽きだよ」
「はあ? 僕に着いてきてほしいから、そう言ったんでしょ?」
「俺だけじゃ、実弾に勝てないからな」

とはいいつつ、僕が撃ち落とした相手の拳銃をいつの間にかしっかり握っているし。
・・・死に直面しているというのに、この余裕は一体何なんだ。
僕より余裕があるじゃないか。

「信じてるよ、あいつらを。ね」

ポソリと呟いたその言葉が、全て。


僕と同じぐらいの傷を負いつつ、それでも目は前を向く。
刑事、やってれば良かったのに。
・・・けど、そうすると、僕らには会えなかったか。

「後、少し踏ん張りますよ」
「お、やる気だね、平尾さぁん」
「ここであんた殺したら、僕死体になってからでも大下さんに殺される」
「死んでんじゃん」
「僕は奇麗に死にたいの」
「難しいんじゃない?」

・・・まあ、ここから先は、いつもの通り。ぎりぎりで登場したハトさんに、おいしい所は全て持っていかれ。
鷹山さんは、署長から金一封を貰うし。

僕が貰ったのは、鷹山さんから紹介してもらった女の子の平手打ちだよ。


やっぱ・・・・。


「そんなのズルい!!!!」


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