真夏の太陽が、眼に痛い光を放つ。
足下が覚束ない。
息が上がる。
ここは横浜の筈なのだが、未知の地のような気がする。
「・・・・っ」
「ふざけんなよ・・・」
情けない。
少しの段差に足を取られて、転倒するとは・・・。
いらいらする。どうして、いつも一人で暴走するんだよ。
「は・・・、はは・・・」
埠頭の血痕見て、血の気が引いた。
もう、何か、笑うしかない・・・。
仰向けに、アスファルトの上に転がり、空を見上げた。
俺に必ず連絡するって、言っただろう・・・。
真っ青な、真夏の空。
最期に見るなら、いい景色だ・・・。
でも、血痕のおかげで、お前を見つける事が出来たんだけどな。
なんで、そんなに安らかな顔して寝てるんだよ。
「タカ・・・」
優しい声がする・・・。怒られると思ってたんだけど・・・。
「タカ・・・、何寝てるんだよ」
肩に手を置いて、揺さぶる。息はしてるから、生きてる・・・だけど・・・。
その優しさに甘え過ぎていた、そんな気がしてる。
眼を開けて、俺を見てくれなきゃ、安心出来ない。
最期に見た、青い空・・・。まるで、そんな空みたいに、包み込む優しさに・・・。
「・・・きろよ・・・」
どうして、そんなに嬉しそうなんだよ・・・。一人だけで逝くなんて、許さねぇ・・・。
今まで・・・。
-------------------------------「起きろっ!!」-------------------------------
「いってぇ・・・」
「馬鹿やろう・・・。俺の方が、よっぽど痛い!」
普通、けが人をグーで殴るか・・・。
「痛いんだよ・・・」
「・・・悪い・・・」
瞬く間に、降る雨・・・。真夏の空の様に、通り雨がいきなり起こる様に・・・。
罪悪感が心に広がる。
心が、鷲掴みにされるほど、痛い。
タカの存在は、俺がここにいるための理由。いなくなったならば、もう、俺はどこにも行けない。
と、タカが上を指差した。
見上げれば、青空。
「こんな、空見てたら・・・、飛びたくなった・・・」
「お前じゃ落ちるだけだよ」
笑うユージに、ついつられて笑ってしまった。
傷に少し響くけど、妙に可笑しくなって。
「飛ぶなら、降りる準備はきちんとしとけよ。パラシュートでも、傘でも」
救急車のサイレンの音が近づいて来ていた・・・。