012.相殺
銃撃戦はいつもの事なんだが、俺の目線の端で喧嘩を始めた二人がいた。

「だーかーら、お前は俺に従ってればいいんだよっ」
「ふざけんな。俺は俺の流儀でやるっ」

至近距離で着弾しているっつーのに、それに気を取られることすらなく、言い合いを続けている。
よっぽど、お互いが気に入らないのか。・・・まあ、毎度の事なのだが。
けれど見ていると、無性にいらいらしてくるんで、俺のマグナムを二人の間にぶち込もうかとも考えてしまう。

「西條!! ハト!! お前らいい加減にしろよ?」
「うるさい、大将は黙っとけ」
「何だと、この野郎!!」

心配したから口出しすれば、いらん口が飛んで来る。
言っても言わなくてもいらつくんだから、始末に悪い。

「山県、この現場仕切ってるのは俺なんだぞ?」

西條が言う。
・・・つーか、仕切ってるって、三人しかいねぇよ・・・。相手は10人ですが、どうしたもんかね。

「お前らがややこしいことやらかすから、こうなったんだろうが」

きっかけは西條とハトが拾ったネタ。
そこからまた話がでかくなって、一つの麻薬組織を相手にする事になった。
昔から西部署ではよくあることなんだが、前は団長がいたからなぁ・・・。
考えながら、スピードローダーで弾丸を補充する。
気付けば、これでラストだ。俺はもう、しらんぞ?

「俺はこれで終わりだぞ」
「大丈夫、西條のマガジンがまだある」

西條は、S&Wのオートマチック銃。装弾数が15発だ。
あいつの腕ならば、問題はない。
と、思ったら、奴はばつの悪そうに頭をかいている。

「・・・ない」
「はぁ?」
「さっき、あっちで落とした」
「ふ・ざ・け・ん・な」
「拾って来ます・・・」

珍しく、西條が小さくなっている。
というか、この状態で拾いに行ったら死ねると思うんだが。

「あー、行ってこい。責任者なんだろ?」
「ハト・・・ひでぇな、お前・・・」

じろりと西條が俺をみた。・・・助け求められても、俺は知らないっつーの!!

「山県、援護」
「西條、行く気か?」
「鳩村さんが言ったからね。あーあー、骨拾ってくれよなー」

これみよがしな嫌味で、鳩村に言う。鳩村はそんな西條をじろりと睨んだ。

「てめぇ、何発残ってんだよ」
「5」
「あっそ。大将が6、ね。じゃあ、余裕だな」
「ハト?」

俺が呼ぶのもそこそこに、ハトはひらりと身を翻してその場を出た。って、ちょっと、待て!!
何も断りもなしかよ!!
ハトの走った軌跡に、銃弾の雨が降る。

「ふざけんなよ、俺に挑戦かよ!!」

西條もその場を走り出る。
ってどこをどうやったら、そういう解釈になるんだよ!!

危なっかしい二人を背後から6発だけフォローするつもりで、俺は狙っていた・・・んだが。

「大体、お前はいつも勝手なんだよ!!」
「俺は俺の流儀でやってるだけだろ!! ドックにとやかく言われたくないね!!」

・・・あれ。

フォロー・・・・・・・


必要ないじゃん・・・・。



こそこそと逃げ出そうとしていた黒幕の前に、ドックとハトが立ちはだかる。

「もう、おしまい?」
「もう少し楽しませてくれてもよかったのに」

その言葉に、黒幕が一言何か言った。
俺が駆け寄る前だったので、何を言ったのかは分からなかった。
それに答える様に、少し楽しそうな調子で、西條が言ったのは。

「化学反応、っていうんかな、これ」


「西條、ハト、大丈夫か?」

俺の言葉に、西條がホルスターへと銃を納めながら言った。

「あ、全然。俺の方が多く仕留めたし」
「俺の囮がよかったからだろ」
「生き餌は活きのいい方がいいからな」

鳩村の言葉に、西條がにやりと言う。

「お前ら、喧嘩しながらよくやるなぁ・・・」
「そ?」

ハトがにやりと笑う。

「俺らの場合は、水と油だからな」
「燃えてる時には、被害倍増?」

西條のその台詞に、俺は肩をがっくり落とした。

「てんぷら油の火事かよ・・・」

化学反応する二人w
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