「オートマチックの利点は、15発、弾丸を装填出来ることだよ」
西條がそう言った。
彼は七曲署で、ただ一人、オートマチックタイプの拳銃を使用している。
「カートリッジもかさばらないしね」
彼の隣で、彼の独り言を聞いているのは・・・死体だけだった。
「しかし、ちょっとまずいんじゃない、この状況」
銃撃戦となって、15分。相手は30人以上。そのうち15人は確実に戦線離脱させた。
しかし、そろそろ彼の銃の弾丸も厳しくなってきていた。
「同じ口径ならいいんだけどなあ・・・こいつらの銃使えないし」
銃が変われば、自然とその銃によって癖が違う。かなり粗悪な銃のようで、一度試してみたが、あさっての方向に弾丸が走っていってしまった。
彼の携帯電話は既に電池が切れていた。願わくば、この銃声を聞いて、一般人が警察に通報してくれること。
それ以外に彼の脱出の手段はなかった。
彼の進行方向に、敵が現れた。
「ちぃっっ」
舌打ちをし、確実に仕留めた、その時。
ガチィン
嫌な音が拳銃から聞こえた。
西條が慌てて自分の拳銃を見る。
「・・・なんてこった・・・」
ジャムる。この状況をそういう呼び方をする。
空薬莢を排出する場所に、薬莢がつまってしまう状況を言う。
当然、銃身をスライドすることが出来なくなってしまい、その銃を解体し、薬莢を排除せねばその銃は使い物にならない。
必然的に、今の状況では、絶対不可能。
これがオートマチックの銃の唯一の弱点。
ということは、
「絶体絶命・・・か」
人の気配が近付く。西條は天を見上げた。
廃墟の天井しか見えない。こんな場所で死を迎えるとは、と一人で笑う。
「あきらめか?」
諦めるのか?
「ここで終わりか?」
終らせるつもりか?
「そうじゃないだろ」
まだ手段はある。
「作り出せるだろ?」
ピンチをチャンスに変える、それが出来る男だろう、俺は!!
敵の側に落ちている銃を手に取った。
これなら、奴らの弾を使える。
癖が解らないのなら、
「解るまで撃てばいいんだよ」
弾丸は、相手がいくらでも持っている。
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