002.拳銃

 

「オートマチックの利点は、15発、弾丸を装填出来ることだよ」

 西條がそう言った。

 彼は七曲署で、ただ一人、オートマチックタイプの拳銃を使用している。

「カートリッジもかさばらないしね」

 彼の隣で、彼の独り言を聞いているのは・・・死体だけだった。

 

「しかし、ちょっとまずいんじゃない、この状況」

 銃撃戦となって、15分。相手は30人以上。そのうち15人は確実に戦線離脱させた。

 しかし、そろそろ彼の銃の弾丸も厳しくなってきていた。

「同じ口径ならいいんだけどなあ・・・こいつらの銃使えないし」

 銃が変われば、自然とその銃によって癖が違う。かなり粗悪な銃のようで、一度試してみたが、あさっての方向に弾丸が走っていってしまった。

 彼の携帯電話は既に電池が切れていた。願わくば、この銃声を聞いて、一般人が警察に通報してくれること。

 それ以外に彼の脱出の手段はなかった。

 

 彼の進行方向に、敵が現れた。

「ちぃっっ」

 舌打ちをし、確実に仕留めた、その時。

 

 

ガチィン

 

 

 嫌な音が拳銃から聞こえた。

 西條が慌てて自分の拳銃を見る。

「・・・なんてこった・・・」

 ジャムる。この状況をそういう呼び方をする。

 

 空薬莢を排出する場所に、薬莢がつまってしまう状況を言う。

 当然、銃身をスライドすることが出来なくなってしまい、その銃を解体し、薬莢を排除せねばその銃は使い物にならない。

 必然的に、今の状況では、絶対不可能。

 これがオートマチックの銃の唯一の弱点。

 

 ということは、

「絶体絶命・・・か」

 人の気配が近付く。西條は天を見上げた。

 廃墟の天井しか見えない。こんな場所で死を迎えるとは、と一人で笑う。

「あきらめか?」

 諦めるのか?

「ここで終わりか?」

 終らせるつもりか?

「そうじゃないだろ」

 まだ手段はある。

「作り出せるだろ?」

 ピンチをチャンスに変える、それが出来る男だろう、俺は!!

 

 敵の側に落ちている銃を手に取った。

 これなら、奴らの弾を使える。

 癖が解らないのなら、

「解るまで撃てばいいんだよ」

 弾丸は、相手がいくらでも持っている。

 

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