001.相棒
「はあ、退屈だなあ・・・」
鳩村の一言に、立花がちくりと言った。
「そりゃあ、ハトさんは暇でしょうよ。非番なんですから。・・・てか、何で署に来てるんですか?」
立花の台詞に、鳩村が一瞬で凍り付く。
同僚である、平尾一兵には、その理由がよくわかっていた。
「振られたんだろ、昨晩」
「ふ、ふ、ふふふふふふ・・・・イッペイ、後で話があるから、署の裏に来いや」
「遠慮します・・・」
事件がない日が珍しい。そんな平和な一日にこの日はなっていた。
そんな静寂を打ち破るように、ドアが開いた。
「やあ、久しぶりー」
ひょっこりと顔を出したのは、七曲署の西條昭。陽気な口振りと同じように、洋服全体がライトトーンのスーツ。
いかにも、「これからデートです」と言わんばかりの服装だった。
「あらら・・・火に油かな・・・?」
同じ部屋にいる、山県新之助も、そうつぶやいた。
「ドック・・・、あんた、何しにきたんだよ・・・」
鳩村が、不機嫌極まりない表情で、西條を睨み付けた。
「デートの帰り。ちょうど近くに来たんで、顔を見に来たんだ。で、差し入れ」
西條は、デパートの紙袋を鳩村の机の上に、これ見よがしに置いた。
それをぶすっとした表情のままの鳩村が見ていた。
が。
「くっ・・・く、く、クククククク」
鳩村がいきなり、俯いて笑い出した。部屋にいた面々は、驚いたような表情のまま、鳩村を見る。
ただ一人、天井を仰いだ西條を除いて。
「土産は余計だったかな・・・」
一人、そう呟いた。
合点の行かないメンバーに、鳩村はクイズ番組の回答編・・・いや、まるで2時間ドラマの解決編よろしく、椅子を回転させて向き直った。
「語るに落ちた、とはこんなことかな。ドックの家は、矢追町にある、警視庁七曲署独身官舎だろ。
で、土産袋は品川駅側の店の物。それに、今は3時だろう?
・・・デートコースとしては、品川駅で待ち合わせて、品プリで食事して、
本来なら、そのままホテルで一泊だろうが?」
そこで、また、クックックと笑う。
今度は西條が、表情を曇らせた。
「キャンセル料は、当日だと100%だったかな」
悪戯した後の子供のように、微笑する鳩村に、西條は大きくため息をついた。
「寄るんじゃなかったな・・・」
そんな二人を見ていた立花は、いいコンビだとおもいつつ、西條のためのお茶を入れはじめた。
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