以前、見た夢で、団長は微かに微笑んでいた。
そして、俺に言った。
「ハト、無理しなくて良いんだぞ」
目が覚めて、頬を伝う水に気付いた。
あの日以来、俺はどこかに何かを落とした様になっていたと思う。
そう。俺が俺でなくなっていた。
俺は俺だけが苦しいと思っていたんだ。
イッペイも、大将も、ジョーも、ジュンも、おやっさんも、同じ様に苦しい思いをしていた筈なのに。
俺は自分の事だけだった。
あの事件以来、俺は捜査課から、身を引いていた。
銃を握るのが、怖くなっていた。
握る銃から発射された、弾丸で、団長は命を落とした。
その現実から、どうしても目を背けたかった。
だから。俺は西部署からも、異動した。
西部署、捜査課、その言葉からも逃げ出した。課長は、黙ってそれを認めてくれた。
「大門軍団の、鳩村さんですよね?」
その言葉が、痛い。重い。聞きたくない。
けれど。事件は容赦なく、俺を巻き込む。
刑事であった、大門軍団の一員であった。ただ、それだけで。
「逃げてるだけじゃ、解決にならないだろうが」
大将がそう言った。
だけど、でも、どうしても。
「お前は、今までの団長すら、闇に葬るつもりか。俺はそんなこと、許さないぞ」
小鳥遊班長のその言葉に、心をかき乱される。
「お前は、これからどうしたいんだ。お前の中の、団長の思いすら、断ち切るのか。選ぶのは、お前だがな。
来る気になったら、こっちへこい」
それが、西部機動隊の発足直前だった。
俺が選んだ道は、やっぱり団長の背中を追う事だった。
あそこでの決断を、促してくれた仲間に、今は感謝している。