秋雨前線に、台風の影響で、・・・と、ラジオが伝えていた。
ばたばたと、トタンだけで仕切った部屋の中を、風が通る。
雨音が、叩き付けるように響いている。

「こりゃ、大変ですな・・・」

トメ吉は、そう、独り言を呟いた。


と、ガターンッと、階下から、大きな音が響く。
とっさに立ち上がるのは、すりという犯罪を生業としているせいかもしれない。
いつでも逃げられる様に、細心の注意を払って、階下へと進む。

トメ吉が、ねぐらにしているのは、数年前に建築が中止になった、廃ビルで、
風通しもかなりいい所だった。

そおっと、階段に近づき、耳をそばだてる。
だが、それっきり、音はしない。

『変ですねぇ・・・』

ガサなら、複数人の足音がしてもおかしくない。
かといって、銀星会の人たちから狙われるような、ヘマもしていない。

気になって、階段を下りると、見慣れた姿がそこにあった。

「!! 大下さんっ」

ぴくりとも動かない姿に、慌てて、トメ吉が駆け寄り、状態を確認する。
元医学生だけあって、その手際は見事なものだった。

「脈あるし、息もあるけど・・・、やっばいよな・・・。腹部の貫通銃創・・・、出血が・・・」

服をめくり、傷の状態を確認する。数々のかすり傷より、腹部の銃創が、彼の命を縮めようとしていた。

と、いきなり、トメ吉の腕を、大下が掴んだ。

「大下さん、大丈夫ですか!!」

「・・・・・・、と・・・・・め・・・・・、れん・・・・ら・・・・、タ・・・・・」

「鷹山さんに、連絡ですか!?」

大下は微かに頷くと、そのまま、意識を手放してしまった。

ここに、彼をそのまま置いておく訳にもいかず、かといって、動かすと出血から危ないと思い、
少し考えたが、電話をかけるため、彼をそのままにして、雨の中、駆け出して行った。


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