2人
「似てますね」 頭の悪い後輩は言う。 本当は頭の悪いフリをしているのかもしれないが。 俺たちが「似たモノ同士」だと言う。 どこが似ているというのだろう。 あんな野蛮なヤツと一緒にされたくはない。
「全然違うわ」 現金な女は言った。 紅い口紅を塗った口元を歪めて。 確かに相棒とは違う人間なのだから当たり前だ。 俺の方が断然品性があるだろう。
互いに一歩引いた目線で確認してる。 自分たちの位置。境界線を。 共に正反対を向き、交わることがないような二つの線。 それがある一点で結ばれる。 その瞬間、自分たちは互いの存在を忘れるのだ。 ある人物は言う。 「似ている」 またある人物は言う。 「全然似てない」 2人は1つだが、決して1人にはならない_。 それは在るべきモノが、在るべき処へあるような自然体。 自分たちだから、無意識のうちに認識される。
「別に俺たち似てないよな?」 相棒は苦笑した。 ジッポの火が揺らめいている。 夕日が彼の細いシルエットを映し出す。 「似てねぇよ」 そう応じると。 「だよな」 どこか安心したような、ガッカリしたような顔をした。
「似てねぇよ」 相棒は素っ気無く応える。 いつもの刑事マシーンらしいお答えだ。 「だよな」 そう応える。 サングラスを外し、相棒はマッチを取り出した。
END 2004.7.22.
Lu:Ciel 華月騎沙楽様
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