貴方が居なきゃ、何も無いのに

力が抜けて行く。
五島の力だけじゃなくて、俺たちの力まで抜けて行く。

五島の血が抜けて行くのが、まるで自分たちの血も持って行かれているようで。

「一緒に行こ・・・」

その言葉を最期に、五島は言葉を紡ぐ事を止めてしまった。

 

「お前がおらんと・・・なんにもならんやないか・・・。お前が船長なんやろ・・・が・・・」

竜がそう呟く。

 

闇夜に、月も北極星も見えない。
俺たちは、大海に放り出された船だ。

羅針盤を失った小舟は、ただ大海を彷徨うだけ。
お前がいなけりゃ、意味は無い。

ただ、この船だけ遺されても、俺らにはどうする事も出来ない。


唯一出来る事。

それは、お前の敵討ちだけ・・・。

その後は、お前の気持ちだけ持って、本当の海に飛び出すしか・・・ないじゃないか・・・。

 

銃の弾丸一つ。

その重さと奴の命。

 

それが五島、お前の命の重さには遥かに不釣り合いだが、餞になればいい。

 

俺は銃のグリップを強く握りしめていた。


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