邂逅

ひったくりの声に、西條はその犯人を捕まえ、鞄を取り戻した。
女性は、礼を言いつつ近寄ると、硬直した。
西條が顔を上げると、昔、ストーカー事件で、西條が心を傷つけてしまった女性だった。

「やあ・・・、元気でしたか・・・?」

口がからからに乾く。
女性は、表情をこわばらせながら、

「ありがとうございました」

と、西條の手から鞄を受け取った。

事件にする為、交番へと連れて行き、警官にその身柄を預けると、西條はきびすを返した。

「じゃあ、頼んだ」

その間も、ずっと西條と視線を合わせる事なく。

昔の傷が、心を抉る。

たとえ、それが彼女にとって、一番いい方法だったとしても、傷つけた事に変わりはない。

西條はその場を離れると、夜の街へと足を踏み出した。


2006,09,06


戻る