正義のレスラーノリヒロの屈辱

 

プロレスラーノリヒロは、ファン感謝祭の企画として、プロディューサーから両腕を

使わないでファンの観客と勝負しろと言われた。

白いマスク、白い格闘用ブーツ、そして白いビキニパンツ。ノリヒロは、今年デ

ビューした新人レスラーであり、悪役レスラーをバッタバッタと倒す正義の覆面レス

ラーだ。

ノリヒロはその日選ばれた10人の観客と戦う為、準備室で準備していた。

ノリヒロが勝つ条件は、3分間相手にフォールされないこと。フォールとは、倒され

押さえ付けられることだ。

ノリヒロは、いつものコスチュームに着替え、今日の戦いの「腕を使わないで観客に

勝つ」というルールに従う為、プロデューサーの所に来た。

「待っていたぞ。」というと、プロデューサーはノリヒロを後ろ手に組ませ、荒縄で

ノリヒロの体を縛り始めた。

「少しきつくないですか」ノリヒロは、あまりにもきつく縛られたので不安になり、

プロデューサーにきいた。

「なに言ってるんだ。こいつはおまえの人気アップのためのショーだぞ。本番中に縄

が外れたらだいなしじゃないか。」プロデューサーは言った。

この世界ではプロデューサーは絶対的な権力を握っている。はむかえば明日からリン

グには上がれない。ノリヒロは今回の企画は乗り気じゃなかったが、しかたない。ノ

リヒロは、念入りに縛られた。

縛り終わり、ノリヒロはテーマソングのなか、花道を歩き、リングへ向かう。

アナウンサーが、今日のファン感謝祭の説明をしている。

ノリヒロは縛られてはいるが、いつもと同じように自身満万にリングへ歩く。

その姿を見ていたプロデューサーは、セコンド席で腕を組みながらにやりと笑っていた。

ノリヒロがリングに立つと、女から声援が送られる。プロレスラーとしては細身で美

形であり、正義役というところが女心を引き付けているのだろう。

司会が、今日の戦いについて説明を終えたあと、ノリヒロは一人目の観客と戦った。

ノリヒロは危なげなく勝ち進んだ。後ろ手にされたまま、軽いからだを生かし、リン

グ中を軽々と飛び回り、時にはロープを使って宙返りをして、対戦相手の観客を翻弄

し、場内を湧かせていた。

このまま筋書き通りに終わるはずだった。しかし、プロデューサーの筋書きには裏が

あった。

10人目の相手が出て来た。それは、昨日倒した悪役レスラーだった。

プロデューサーは、人気が出てきたため独立して稼ごうとしていたノリヒロを潰す

為、罠を仕掛けたのだ。

悪役レスラーは手を使えないノリヒロをボコボコに攻撃した。さすがにレスラー相手

では腕が使えないこのハンデはきつい。

悪役レスラーの弟子がでてきて、ノリヒロを羽交い締めにする。

やがてノリヒロは気絶しそうになるが、レフリーまでもがグルになり、なかなかカウント

されず、試合は延々と続けられた。

ついにノリヒロは気絶した。悪役レスラーはリングに倒れるノリヒロの覆面を剥が

し、観客席に投げ込んだ。

そしてノリヒロのトレードマークである純白の革ビキニをずり降ろした。

女が廻りで泣き叫び、男は「いいぞいいぞ」とやじを飛ばした。

動かないノリヒロは、みせしめのためにパンツを降ろしたまま髪の毛をつかまれ

立ちあげられ、悪役レスラーの弟子に支えられ、リングを一周した。

「何と言うことでしょう」等とアナウンスが入る中、ノリヒロは悪役レスラー達に連

れられ、リングを後にし、泣き叫ぶ女どもの中を通り、悪役レスラーの準備室に連れ

込まれた。