プリンス オブ ブロンズ

 

 

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いつもありがとうございます。

今回も、ありがたいことにリクエストをいただきまして書かせていただきました。

わたくしの周りで最近、タロウがおあつうございますww

ちょっといつもと違うところに力点をおいてみました♪





 光の国の戦士に守れている青い星・地球。

 初めてウルトラマンが地球に降り立ってから

セブンやジャック、エースにより幾多の敵から守られ続けてきた。
 

 エースが地球を去り、今は光の国のプリンス・ウルトラマンタロウが

怪獣や宇宙人から地球を守ってくれていた。

 超獣を超える怪獣たちが押し寄せるが、厳しい訓練に加え兄弟達から託された使命を

胸に秘めたタロウに敗北の文字はなかった。

 そんなある日、街にかつて誰も見たことがないほど巨大な宇宙人が突然現れたのである。

ヒッポリト星人「ふはははははは・・・

         私はヒッポリト星人!

         この星にいるウルトラ戦士を抹殺するために来た!

         ウルトラマンタロウに告ぐ、地球に隠れているのはわかっている!

         出てくるのだ!さもなくば・・・・」


 ウルトラマンタロウへの警告の直後、見せしめのためなのか自慢の長い鼻から強烈な風が街を襲い、

人や車を吹き飛ばしていく。

 ウルトラマンタロウのことを調べつくしているらしく、

東京を攻めるのが一番効果的であることを知っていて攻め込んできたようだった。

 自分の力を見せ付けるとあれだけの巨体を誇っていた宇宙人が陽炎の様に消えてしまったのだ。

 現場に駆けつけ、宇宙人を倒したかった・・・基地でぎりぎりと悔しさに拳を握り締める東光太郎。


 巨大宇宙人襲撃事件から3日後の昼過ぎ・・・。

 再び、東京の街中に現れた巨大な宇宙人・ヒッポリト。

ヒッポリト星人「さぁ・・・出て来い!ウルトラマンタロウ!

         早くしないと、お前の守るものがなくなってしまうぞ!」

 その言葉に続けて瞳から怪光線が放たれ街を破壊していく。

 出動するZATの面々。

 地上と空中から攻撃を加えるが超巨大な宇宙人に命中したはずの光線もミサイルも

全てがすり抜けて背後にいってしまうのだ。

 こちらの攻撃は当たらない、しかしヒッポリトの攻撃は確実に街を破壊し、

ZATを追い詰めていく。

東光太郎「やはり・・あれは本物ではないんだ・・・」

 3日前に出現した時に感じた違和感からすぐに変身はせず、

すぐにでも駆けつけたい気持ちをこらえ、敵を分析していたのだった。

 その直感は的中し、街中にいるとんでもない大きさの宇宙人に挑めば

ZATと同じでいかにタロウといえども攻撃が当てられないのに

当てられてしまうのでは確実に負けてしまう。

 全神経を集中し、本体のいる場所を探す。

 索敵すること数分・・・ついに見つけた敵の場所。

 意を決して光輝くバッチを宙に掲げ変身する。

東光太郎「タロオォォォォォォォォォォォォォ!」

 虹色の光からウルトラマンタロウが颯爽と現れ、街を越えて北関東の山中に向かうタロウ。

タロウ「・・・?!・・・(やはり、本体は別な場所にいたんだ!)

 索敵して見つけ出したポイントにはカプセルに入っているヒッポリト星人がいた。

 カプセルから虹色の光が東京に向けて放たれていた。

タロウ「(なるほど・・あの中で起こした現象が街でも起きるようになっているわけか)」

 ZATがいくら強力な攻撃をしようとも幻影には効果のないことだったのだ。

 距離をとり、降り立ったタロウの手から深紅の破壊光線を放ち、カプセルを破壊した。

 爆炎と共にカプセルは消えうせた。 それと同時に街に出現した無敵の宇宙人も

霞の様に消えてしまった。

 ヒッポリト星人「・・・ぺっぺぺっ・・・ばれてしまったか」

タロウ「デュッ!(もう逃がしはしない!覚悟しろ!)」

ヒッポリト星人「これでもくらぇぇぇぇぇぇぇ」

 じたばたと腕を振り回しタロウに襲い掛かるヒッポリト星人。

 動きこそ幼稚なものであるが、見た目とは裏腹に鍛えられた体から繰り出される

腕の1撃、1撃は強力なものだった。

タロウ「ダァァァァッ!(こんなものなのかっ!ならば、こちらからいくぞ!)」

ヒッポリト星人「このっ!このっ!・・・?!・・なにっ・・」

タロウ「デヤァァァァッ!」

ヒッポリト星人「ぐわぁぁぁぁぁぁっ」

 華麗に宙を舞い、ひねった体から自慢のスワローキックを放つタロウ。

 見事なまでに胸元にヒットした蹴撃により後方に吹き飛ぶヒッポリト星人。

 幻影を使った街の破壊活動こそ頭脳的なものであったが、

タロウと戦い始めてからの攻撃は実に幼稚なものだった。

(こいつは生粋の頭脳派。肉弾戦ではわたしが有利だ)

 そんなことを考えてしまった。

 吹き飛ばされたヒッポリト星人が起き上がると、怒りのあまり地団駄を踏み、

足元にあった巨大な岩を持ち上げタロウに向けて投げつけてきた。

 その行動もタロウの予想通りの子供のような攻撃だった・・。

ヒッポリト星人「このぉぉっ!くらぇぇぇっ!」

タロウ「デュッ!・・・デヤッ!」

 投げつけられた岩を軽々とキャッチし、そのままカウンターで

ヒッポリト星人の顔目掛けて投げつけた。

 ここでもまともな防御が出来ずに顔面に岩がぶつかり、フラフラとよろめいてしまう。

 そこに追撃とばかりにタロウは光線技でたたみかける!

タロウ「デヤァァァッ!」

ヒッポリト星人「おわっ・わわわわわ・・・・」

 タロウの右手から光の手裏剣が放たれる。

 慌しく光線から逃げるヒッポリトは1歩、1歩後退しながら攻撃をかわしていく。

ヒッポリト星人「わわわわ・・・・」

タロウ「・・?!・・・ヘヤッ!(・・・き、消えた?!・・)」

 ヒッポリト星人はよろめきながら後退していたのだが、そのまま姿が一瞬で消えてしまい、

その場からいなくなってしまった。

 今まで戦っていたのは幻影ではなく、本体だった・・・。

 タロウ「(一体・・どこに・・・・)」

 ヒッポリト星人が消えた場所まで駆けより、辺りを探し回る。

 その場できょろきょろと探し回る。

 周りにはいない・・。あてを探ろうと再び神経を集中させたときだった。

スゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・・・スゥゥゥゥゥゥゥゥガシャン!

タロウ「デヤッ!デュッ!デヤァァッ!」

ヒッポリト星人「ふはははははは・・・かかったな、ウルトラマンタロウ!」

タロウ「デュッ!ヘヤッ!(な、なんだ・・ここから出せっ!)」

 神経を集中させ、消えた敵を探そうと、一瞬動きを止めた時だった。

 両脇から靄の様に現れた半分ずつのカプセルが音もなく忍び寄り

タロウを閉じ込めてしまった。

 その瞬間、罠にかかった獲物の前にヒッポリト星人は現れ、先ほどまでの幼稚な動きとは違う、

全てが上手くいったと言わんばかりの振る舞いでタロウを見下ろしている。

 そう・・全ては演技・・・嵌められたのである。

 割れ目がなくなったカプセルの壁を力一杯殴るが傷1つ付かず壊れる気配がない。

 このカプセルには中に閉じ込めた獲物の力を封じる効果があるようだった。

ピカッ!ピカピカ!

タロウ「・・・デヤッ?!・・・」

ヒッポリト星人「残念だったな、タロウ・・・自分で自分の最期は見られないだろう?

         俺は貴様の最期をゆっくりと見せてもらうぞ」

 ヒッポリト星人の頭部にある触角が光るとカプセルの上部から透明な液体が降り注ぎ始めた。

 タロウの体に付着すると薄く広がり、逃げ場のない獲物の体を瞬く間に包み込んでしまう。

 獲物を前に勝者の余裕を見せるヒッポリト星人の眼前で透明な液体に体を怪しくテカらせ、

体を悶えさせ苦しむタロウ。

 その艶かしく動くテカテカの体を思う存分楽しむヒッポリト星人。

タロウ「ファァァァンッ!デヤァァァァァァァ!」

 その透明な液体には毒が含まれているらしく、タロウの全身から体内に侵入し

体力とエネルギーを奪っていく。

 しかし、この液体の効力はそれだけではなかった・・。

タロウ「ファァァァッ・・・デュッ・・デヤァァァッ・・(か、体が動かなくなってきたぞ・・・)」

プーポープーポープーポー

 その窮地を知らせる様に鳴り響くカラータイマー。

 苦しみにカプセルの中を動き回るタロウの体が徐々に動きを鈍らせ、

思ったような動きが出来なくなってきていた。

 その液体は体に広がると毒を体内に注ぎながら体を固めていく恐るべき接着液だったのだ。

 皮膚に付着するなり体内に侵入し抵抗する力を根こそぎ奪い、体を硬直させていく。

動きの鈍った獲物はさらに逃げることが出来なくなり液体の餌食になる・・・。

 カプセルに入れられたが最期、ヒッポリトの罠からは逃げられない・・・。

 厳しい訓練を乗り越えたタロウをもってしても、力を封印されたカプセルの中、

逃げ場のない状態で接着液を浴びせられ続け、動きを鈍らせ予定通りに体が硬直し始めていた。

ピカッ!ピカピカ!

 再びヒッポリト星人の触角が光ると悪夢のカプセルはさらなる追撃を始めた。

 透明な液体に代わり深緑色の液体が降り注ぎ始めたのだ。

 その様子は獲物を我先に奪い合うかのように液体が間髪いれずに降り注いでいた。

タロウ「・・・ムゥゥゥ・・・デュッ?!・・・デヤァァァァァ・・・」

ヒッポリト星人「へっへっへっ・・苦しめっ!苦しめっ!・・・」

タロウ「デアアアアアァァァァァ・・・・」

ヒッポリト星人「だんだん死んでいくのだ!」

 透明な接着液が体中に回り、体がすっかり硬直してしまったタロウは

本来の動きの1割ほども動くことが出来なくなっていた。

プーポー・・プーポー・・・プーポー・・・プーポー・・・・

 確実に遅くなっていくタロウの命の音。

 その音を合図にでもしたように襲い掛かるヒッポリトタール。

 降り注ぐ謎の液体はタロウの体をブロンズに変え、硬直した体を金属へと変え始めた。

 体に付着すると透明な液体の効果も手伝って容易く体内に入り込み、

表面からタロウを固めていく。

タロウ「・・・デヤァッ・・・・デュッ・・・ヘヤァァァッ・・・・」

 ほとんど動かない自らの体。

 両足はすでに動かすことさえ出来ず、指を曲げることさえ出来なくなった。

 カプセルの壁を殴っていた腕がゆっくりと降りていく・・・。

硬直した筋肉では上げていられないのだ。 

タロウ「デヤァァ・・デュッ・・・デュワッ!

    (兄さん達に知らせないと・・地球が危ない)」


 全身を侵食するヒッポリトタール。

 体に残る僅かなエネルギーで抵抗しているものの、カプセルの力で封印され、

接着液の毒で削られた体力はじりじりと生身の体を物質へとあけ渡し始めていた。

 深紅の逞しい体も徐々に全体が深緑色になりつつあり、端正な顔も汚されつくしていた。

 気力を振り絞り、一縷の希望を託して宇宙を目掛けてウルトラサインを出した。

ビビビビビッ!ピカピカピカ!ピカピカピカ!

プーポー・・・プーポー・・・・・プーポー・・・・・・プーポー・・・・・・・

 限界ぎりぎりまで削られたエネルギー・・・

封じられた力、動かない体、用意周到な敵の罠に嵌った今のタロウに出来るのは死期を

早めてでも仲間に地球の危機を知らせることだった。

 さらにタイマーは緩やかに点滅し、命が尽きようとしていることを地球人に、

そしてヒッポリト星人に知らせてしまっていた。

ヒッポリト星人「馬鹿なっ!ウルトラサインが出たな?」

タロウ「・・フワァァン・・ダァァ・・ッ・・・・

    (兄さんたち・・・わたしはここまでのようです)」


ヒッポリト星人「冥土の土産にいいことを教えてやろう・・・

         お前の兄達は皆、一足先にあの世に行っている・・・

         ブロンズにして葬っておいたわ!」


タロウ「・・デャァッ?!・・」

ピカッ!ピカピカピカ!

 とどめをさすためにヒッポリト星人の触角が再び光を放つ。

 体が薄汚れたようにブロンズに変質しつつあるタロウの足元から

深緑の煙が巻き起こりカプセルに充満していく。

 液体の降り注ぐ中、獲物を奪い取るかのように足元から問答無用でタロウを包み込む謎の煙。

 煙に包まれた両足はブロンズ化が加速し瞬く間に鉱物になってしまった。

 煙は捕らえた獲物を逃がさない!とばかりにものすごい速度でカプセルに

充満しタロウを包んでいく。

プーポー・・・・・プーポー・・・・・・・・・プーポー・・・・・・・・・・・・・

・・・・・プー・・・ポー・・・・・・・・・・・プゥゥゥゥゥゥ・・・・・・

タロウ「・・?!・・・デャァァァ・・ァァァ・・・ァッ・・・・ッ・・・・」

ヒッポリト星人「ふははははははっ・・・あっけなかったな、光の国の王子よ・・・・」

ブフアァァァァァァァピカッ!ピカッ!モクモクモクモクモク

 タイマーの音が聞こえなくなってしまった・・・・。

 タロウのか細いうめき声もついに聞こえなくなってしまった・・・・。

 カプセルに充満するガスは内部の状況を隠してしまっているものの、

タロウの体に残るストリウムエネルギーは最期の抵抗とばかりにスパークした光が2度、

3度見え、そのタロウが生きている証が全てなくなってしまったのだ。

サァァァァァァァッ

 獲物の「生」を全て吸い尽くしたカプセルは満足したとばかりに靄の様に消えていった。

 ガスが晴れ、次第に中の様子が見えてきた。

 ようやくヒッポリト星人の本体の場所を突き止めたZATの面々が見つけたのは

宇宙人だけではなかった。

 そこには全身をブロンズに変えられた哀れなウルトラマンタロウがいたのだ。

 その姿は呆然と立ち尽くし顔は絶望にうな垂れていた・・・。

 まるで無抵抗のままやられた様に・・・・・。

 ヒッポリト星人「ふはははははは・・貴様も立派なコレクションの仲間入りだぁ。

          光の国を滅亡させた後、貴様ら兄弟達はオブジェとして我が城に飾ってやろうじゃないか・・・」


 その言葉を言い終わるとタロウを残し姿を消す暗殺者。

 残されたのは地球を守りきれず、絶望に染められたまま「物」にされた

光の国のプリンスだけだった。

 
 「頑張ってくれ!」と言っているように頼りない夕日の光がタロウを照らす。

 しかし、そのか細い光は惨めさを増し、地球人を絶望させるだけであった。