夢の世界へ
ある日、新選組一番隊組長、沖田総司は夢を見た。
綺麗な湖畔。
その水内際を、団子を食べながら歩いていた彼は食べかけのそれを湖に落とした。
「私の団子が〜〜〜〜(泣)」
悲しい思いで湖を覗き込む。
その時、水がザバッと吹き上がり中から女神のセイちゃんが現れた。
「あなたが落としたのはこの食べかけの団子ですか?」
「それとも、超高級金つばですか?」
右手に団子、左手に金つばを持ってにっこり微笑む。
総司は呆然と彼女を見た。
「神谷さん、何してるんですか?」
「私は神谷ではありません」
「私は女神、セイレーン」
「すごいですねぇ、どうやって浮いてるんですか?神谷さん」
「人の話は聞けよ!!(怒)」
ちょっと女神はイライラした。
(ハ、ハーン。知ってます、知ってますよ神谷さん!)
(これは正直に答えると良い方がもらえるんです・・)
(逆に嘘をつくとどっちももらえない・・・)
(私は間違えませんよ!!)
「団子です!!」
総司は鼻息を荒くして断言した。
「ぶ、ぶ〜〜〜〜」
女神のセイちゃんは口を尖らせる。
「なぜですか!?」
「私は正直に答えましたよ!?」
総司は必死に訴えた。
「あなたが食べていたのは何味でしたか?」
「一度で三度美味しい三色団子です」
「よ〜く、見てください」
セイちゃんは団子の串を差し出した。
「この食べかけの団子の上の部分・・」
「下と同じで白いでしょ?」
串についていた前の団子の痕跡は確かに白かった。
「ええ・・」
「つまりこれは三色じゃないと言う事です」
「じゃあ、この団子は?」
「これは私の食べかけの団子です」
「ついてたあんこを先に舐めちゃったんですよねぇ、あははは」
「あははって!?」
「じゃあ、私の団子は!?」
「湖の底のヘドロに刺さってましたね」
「最近はこの湖も汚染で大変なんですよ」
「それでもいいなら取ってきましょうか?」
総司はショックで地面に膝をついた。
山の向こうに朝日が差し始める。
「おぉっと、もう夜が明けますね」
「隊務があるからもう帰らないと」
「それじゃぁ、バイ●イキーン」
女神セイレーンは項垂れる総司を残して湖に消えた。
そして総司も現実へと目を覚ます。
「総司、どうしたの?元気ないよ?」
井戸で顔を洗っていると藤堂が心配そうに声をかけてきた。
「なんだかとってもせつなさそう・・」
総司はフッと笑った。
「この世は無情なことばかりです・・・」
その目は遥か遠いところを見ていた。
「総司・・・、よっぽど辛い事があったんだね」
「えぇ・・とても・・」
そんな二人の背後をたまたま通りかかったセイちゃんは総司に向かって言った。
「もう・・最後の一口だったんですから、諦めて下さいよ」
平助は意味がわからず首を傾げた。
総司は驚いて振り返った。
「あれって夢じゃないの・・?」
ある海には人魚が住んでいる。
その人魚の中で一番美しいと評判なのは斉藤人形姫だった。
ある嵐の晩。
船から投げ出された王子を助けた斉藤人魚姫は、近くの一番隊国の岸へと王子を運んだ。
王子の名前はセイ。
その王子の美しさに気がついた斉藤人形姫はすぐに恋に落ちた。
王子と結婚するために人間になろうと、斉藤人魚姫は伊東魔女のところへとやってきた。
「御免!」
重たい木の扉を開けると、思わず鳥肌がたった。
「いらっしゃ〜い、来ると思ってたよぅ」
伊東魔女は薔薇に囲まれたベッドに横になって手招きしていた。
反射的に扉を閉める。
完全に閉まる直前に猛スピードで追いついた伊東の指が挟まった。
「何で帰るんだ〜い?」
「なに、ちょっと寒気がしたもので・・」
二人で押し合いへし合いを続けている。
「それはいけないな〜」
「良いクスリあるよ〜」
「心配無用、寝ていれば治る」
「そういうのは最初が肝心だよ」
「本当に良いクスリなんだ」
「なんか楽しい気分になるんだ」
「それは明らかにヤバイだろ!」
斉藤人魚姫は命からがら伊東魔女の元を逃げ出した。
「あ〜ん、いけずぅ」
伊東魔女はシルクのハンカチを噛んで悔しがった。
夢中で泳いだ斉藤人魚姫はうっかりと岸に打ちげられてしまった。
(あ、暑い・・・)
日に照らされ干からびそうになる。
そんな時、じゃりっと誰かが近付いてくる気配がした。
「あ・・!」
岩場の影から現れたのは、恋焦がれるセイ王子だった。
「人魚?なんでこんなとこに・・」
人魚姫は嬉しくて尾びれを必死に動かした。
(助けてくれ!神谷)
セイ王子はその尾びれをムンズと掴む。
(へっ?)
「人魚の肉って食べると不老不死になるんだよね、ラッキー」
「沖田先生に捌いてもらおっと」
(たすけてくれ〜〜〜〜〜)
セイ王子はズルズルと斉藤人魚姫を引きずっていった。
その後、斉藤人魚姫を見た人はいない。
後書き
めい様からのリクエスト。
黒セイちゃんでしたが、セイちゃんが
黒いというより総司と斉藤さんが不幸といった
感じになりました。
斉藤さん、最後はどうなったんでしょうね?
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