優しい嘘


             
             「月森くんが嫌いになったの」

              心とは裏腹な言葉に私の心は棘が刺さったみたいに痛む。

             「だからもう私に構わないで良いよ」

              そう言うと月森くんの顔は苦しげに歪められた。

              そんな顔しないで。

              お願いだから怒って。

              何て自分勝手なヤツだって・・・ズルイやつだって怒って。

              じゃないと、せっかくの決心が崩れさってしまうから。

             月森くんの留学が決まって、限られた時間しかないけど・・だからこそ一緒にいたいと思って
            私たちは付き合い始めた。

             でもね。日が経つにつれ月森くんの気持ちが揺らいでいくことに気づいちゃったんだよ。
             もちろん原因が私だってことも。

             月森くんはこんな狭い世界にいて良い人じゃない。

             私が枷になるなら解き放してあげないといけない。



             だから私は嘘をつく。


             たとえ、この後自分の心が壊れるとわかってはいても。


             月森くんがゆっくりと私の方へ歩み寄ってきた。
             私の身体がビクリと強張った。

             目の前にやってくると、彼は両手を広げて私を包み込んだ。

            「君は嘘つきだ・・・。俺のために心とは真逆のことを言う。
            だけど・・俺はこんなに優しい嘘を他に知らない」

             耳元で囁かれた「ありがとう」に静かに涙がこぼれた。

             ホントはね。

             行かないでって言いたい。
             私だけを見ててって言いたい。

             でも・・・・私が好きな月森蓮はヴァイオリンを愛している人なんだもの。

             言えるはずがない・・・・。


             月森くんの冷たい唇が私の唇に微かに落とされた。


            「君の音色が俺のところにやってくるのをずっと待ってる」

            (それでも良いだろうか?)


              月森くんの言葉に、私は腕の中で黙って頷いた。


            

            なんか頭に閃いたので書いてみました。
            15分くらいで書けちゃいました。
            いつもこうだと苦労しない(;一Д一)
            でも「2」の設定と「私の」設定が混ざってますがね・・・(汗)