BIRTHDAY×××



               「蓮、お誕生日おめでとう」

               香穂子はそう良いながらラッピングされた小さな小箱を蓮に差し出した。

               今日は4月24日

               蓮の誕生日だ。

               今までも一緒に互いの誕生日を迎えてきた二人だったが、今年は夫婦という関係になって
              初めての誕生日だったので香穂子はいつもよりも気合をいれてパーティーの準備をしていた。

               プレゼントは綺麗な深い青色をした万年筆。
               ケーキは彼でも平気な甘くないものを。
               ワインは奮発して生まれた年のものを用意した。

               新居での二人だけのパーティーだが、部屋を飾り、高級なお店に行くように着飾った。
               そして燭台の蝋燭に火を灯し、部屋を明るく照らし出すと、二人はカチンとワイングラスを
              鳴らして乾杯した。

               「今まで色んな誕生日のお祝いをしてきたけど、こんな風にするのもたまには良いかもね」

               香穂子がグラスを揺らしながら言うと、蓮もまた頷いた。

               「そうだな・・・。今まではレストランに行ったりすることも多かったが、こうして家で楽しむ
              のも良いかもしれない」
               「久しぶりだよね。こんな風に家で楽しむなんて・・・高校生の時以来かな?」
               「あぁ、何だかんだで昔から二人で外に出ることが多かったからな」

               二人は昔を思い出して笑いあったが、ふと香穂子は思い立って蓮に訊ねた。

               「ねえ、蓮の思い出に残る誕生日っていつ?」
               「俺か・・・俺は・・」

               蓮は少し考え込むと、穏やかな笑みを浮かべて「初めてのときだろうか?」と答えた。

               「あの時の最後の君の言葉は今でも忘れてはいない」
               「君はどうなんだ?」
               「私?私はねぇ・・・・部屋でお祝いした時!!」
               「それはナゼなんだ?」

               蓮は首を傾げた。

               それも大切な思い出だが、部屋でお祝いした時は特別記念になるようなことが
              あっただろうか?

               「覚えてないの?」
               「蓮てばあの時、すっごく長いキスしてきたじゃない」
               「私、あんなに長いキス初めてでどこで呼吸して良いか解らなかったんだから」

               香穂子はローストビーフを口に運びながら無邪気に話したが、蓮はその時の様子
              を鮮明に思い出して真赤になった。

               「思い出した・・・・・・////」

               そうだ、あの時は香穂子が初めて手作りのケーキや料理を用意してくれて
              感激して気持ちが昂ったのだった。
               そしていてもたってもいられず・・・気がついたらキスを・・。

               蓮が思い出して恥ずかしそうに口元を手で覆うのを見て、香穂子は少し悪戯な笑みを
             浮かべて身を乗り出した。

               「若気の至りってヤツですか?月森くん?」
               
               その様子に蓮はそっぽを向きながらも、思いついたように口元だけに笑みを浮かべて
               香穂子に向き直った。

               「そういう君こそ、もうどこで呼吸するかわかったのか?」
               「え!?いや、あの・・・」
               「試してもみようか?」

               しどろもどろになりながら身を引こうとする香穂子の顎を捉えて唇を重ねる。
               あの時よりずっと長くて上等の甘いキスを何度も繰り返す。
               どれくらいたったのか蓮がようやく唇を離すと、香穂子は目を潤ませて深い吐息を零した。
        
               「俺も上達しただろうか?」

               蓮が訊ねると、今度は香穂子が真赤になってそっぽを向く。

               「そ、そんなこと知らないよ////」
               「そうか、じゃあ次の機会までの宿題だな」

               ただ、その機会は次の誕生日よりもっともっと早くやってくるだろうけど。

     
                
                
                  すいません。久しぶりなのに即席で書いたので月森が月森でなくなりました。
                  お許し下さい。
                  まあ、とにもかくにも月森お誕生日おめでとう!!