添い寝
傍らには自分の血をひく愛しい我が子。
まだ生まれたばかりで、その小さな掌に人差し指
を置くと、ぎゅと握り返す。
すべすべとした頬に顔を寄せれば、さっき呑んだばかりのせいか
乳の匂いがした。
「総司様?」
背後の襖が静かに開き、湯上りのセイが不思議そうに立っている。
我が子、桜をセイが身篭った事から、揉めた末に二人は夫婦となった。
「何をしておいでです?」
総司が身を起こすと、
無事出産を三月前に終え、ますます女らしくなったセイが寄り添ってきた。
「いや、懐かしいと思って」
「懐かしい・・・?」
「私は、母との思い出はあまりないですけど、桜からする乳の匂いは
見覚えがあって、昔は自分もそうであったのかなと・・・」
「こんな風に父や母に添い寝してもらったりしたのかと思いました」
セイは僅かに微笑んで頷く。
「そうですよ、総司様も私もそうして大きくなったんです」
「そうしてこの子も・・そうやって大きくなっていくんですね」
桜の頭を撫でる総司はなぜか寂しそうで、傍にいるセイを
なぜか切なくさせた。
セイは総司の頭を抱えると、自分のほうに力いっぱい引き寄せた。
「わ!」
「急になんです!?」
驚いた総司がうろたえているのがわかった。
「何か悩み事があるのなら私に話してください」
「お願いだから一人で悩まないで」
セイの言葉に総司は動きを止め、すっと目を細めた。
「いえ・・・・?」
「悩みなんてありません」
「今の私は・・貴女と桜という宝を手に入れて幸せなんです」
ゆっくりとセイの腕を解いて、顔を見つめる。
「貴女が隣にいてくれるから・・・悪夢を見ることさえなくなった」
「貴女のぬくもりがあれば・・・もう何も怖くない」
「だったら・・・・」
「毎日毎日、良い夢が見られるように私が添い寝して
お伽草子を聞かせてあげます」
「お伽草子?」
総司が口に拳を当て、ぷっと吹き出す。
「そう・・家族を亡くした一人の女子が凄腕の剣豪と出会うところから
始まる恋物語です」
「とても長いお話なので、とても一夜では終わりませんが・・・」
「毎夜、聞かれるお覚悟はありますか?」
セイが悪戯っぽい視線を総司に向けた。
その視線に気づいた総司がヤラレタという表情で前髪を掻き揚げる。
「それでは聞かせてもらいましょうか・・・・・」
「その素敵な恋物語を・・」
互いのぬくもりを感じることの出来る布団の中で・・。
本当は裏のお題なんですけど、書いてみたら表でもOK なものに
なったのでこちらにUPしてみました。
BACK TOP サイト案内