この想いをどうすることもできないまま時が流れてる。
「わ〜っ」
神社の境内を元気に走り回る子供達。
「沖田はん!」
まるで花に戯れる蝶のように先生の周りに集まってくる。
その中心で、先生は任務中とは違う、暖かい優しい笑顔を振りまく。
私は、そんな様子を今日も呆れたような顔をして見つめているのだ。
ふと気がつくと、足元には大きな水溜り。
昨夜少しばかり雨が降った名残だろう。
今日は空はとても青く、陽射しも穏やかだ。
水溜りを覗き込むと、空の青さを映しとっている。
その中に、同じように映る私の顔。
口元は笑っていても目は全然笑ってない。
(ダメだ・・。ちゃんと笑って!!)
パチパチと軽く両頬を叩いた。
先生は、自分のことにはすこぶる鈍感なのに、他人の変化にはとても
敏感なのだ。
油断をしたら・・・気づかれてしまう。
私の中にある叶う事のない想い。
それに気づかれたら、私は先生の傍にいられなくなるから。
想いが外に溢れ出ないように心の箱に閉じ込めて鍵をかけた。
必死に表情に出さないように顔をつくる。
どんなに苦しくても平気なふりして笑って見せた。
私は愛しい先生にすら嘘がつけるのだ。だって・・・
あなたの傍にいる。そのためなら何でもするって決めたから。
近頃はだいぶ板についてきたけど、それでもやはり焦りはあった。
最近、如心遷というにも限界があるほど、身体や顔が女らしくになってきた。
それはとても自然で当たり前のことだけど、私は怖くてたまらない。
これ以上女らしくなったら、いくら先生だって私が新選組に残ることを
考えるだろう・・・・。
先生は女の私を必要とはしていない。
先生に必要とされなければ、私の存在意義はなくなってしまう。
私は女の私を誤魔化す為に必死に胸に晒しを巻いた。
息が詰まるほどに・・。
多少動きは鈍くなるがバレてしまうよりずっと良い。
けれども、私の願いとは裏腹にこの身体も想いも時の流れに乗って
少しづつ育っていく。
私はそれに逆らえず、どうすることも出来ないまま。
「神谷さーん!何してるんです?」
「早くこっちに来て下さいよ!!」
ハッと我に返って顔を上げた。
子供達の中心で沖田先生がこっちに向かって大きく手を振っている。
今、私に向けられている笑顔は武士の私のもの。
「今、参ります」
私は水溜りを超えて先生の許に向かった。
今は大丈夫。
隠していける。
それでも、先生が望んでくれなくなったなら・・迷わず消えてしまおう。
生きていくだけがあなたを守る術ではない。
私は死んでも、あなたを守り続ける・・・・。
連載中なのにお題してみました。
お花達では甘い感じですがちょっと暗いですね。
BACK TOP サイト案内