このままずっと



                     月森の部屋に飾ってある星空の写真。
                     以前、知り合いから分けてもらったものだが、それを
                    入れている写真立ては付き合い始める前に香穂子から貰ったものだ。
                     
                     香穂子が初めてこの部屋を訪れた時、この写真たてを見て嬉しそうに
                    笑っていた。
                     「良かった。本当に使ってくれてるんだね」
                     「私もね、飾ってあるよ。同じ写真たて・・・」
                     「あの時は本当に蓮くんが使ってくれてたらお揃いになるなぁ〜って
                    思ってたの」
                     「写真もね、本当に綺麗でお気に入りなんだよ」

                     「あんな星空が毎日見れたら素敵だろうな」
                      まるで本当に星空が見えているかのように目を輝かせる香穂子を
                     見て、自然と自分の顔にも笑みが零れる。

                     「それなら寒い所に住まないとな。」
                     「しかも街から離れた所じゃないとあんな星空は見えないな」
                      紅茶の入ったティーカップを差し出しながら俺が言うと「そっか〜」と
                     香穂子が少し考え込むように俯いた。

                     「じゃあダメだね」
                     「大人になったら住んでみたかったけど、街から離れてたんじゃ無理だよ」
                     「どうして?」
                      俺は不思議に思って理由を尋ねた。
                     「だって、あんまりにも街から離れてたら蓮がプロになって
                    コンサートを開いても、みんな聴きにこれないでしょ?」
                     「私、みんなに蓮のヴァイオリンを聴いて欲しいもの」
                     「おじいちゃんも、おばあちゃんも・・大人も子供も」
                     「私が始めて蓮のヴァイオリンを聴いた時の感動を
                    みんなにも分けてあげたいの」
                      「それにはやっぱり街のほうが便利でしょ?」
                    
                      俺は無意識に口元に手を当てた。
                      顔が・・・いや、全身が急激に熱くなっていくのがわかる。
                      香穂子はわかっているのだろうか?
                      自分が何を言っているのか。
                      それは・・・君が大人になった時に、どこに住んでいても俺が
                     一緒にいるというわけで・・。

                      つまりそれは・・。

                      (結婚してるってことじゃないのか・・・?)

                      香穂子も願ってくれているのだろうか?
                      このままずっと俺の隣にいることを・・・。
                      俺と残りの人生を生きていく事を・・・。

                      (だとしたら・・・・)

                       もし君が、俺の傍にいるために諦めなくてはいけない事が
                      あるとしたら、俺は全力でその願いを叶えられるようにしよう。

                       「じゃあ、住む事は出来ないけど・・・たまには二人で星を見に
                      旅行するとしようか?」

                        俺が言うと、香穂子の表情はパァと花のように明るくなり、
                       何度も頷く。

                       「本当?絶対だよ」

                       「いつか、二人で外国とかにも行ってみたいな」
                       「外国で寒い所ならオーロラが見えるところも良いかもな」

                       「オーロラ!?」
                       「うん!見てみたいね」
                       「今から凄く楽しみだよ、早く大人になりたい」

                        未来を想像をし、幸せそうにな香穂子を見て俺も幸せな
                       気持ちで一杯になる。
                        だって彼女の思い描く未来の中には確かに俺も
                       存在しているのだから。

                        ふと、右手に柔らかく温かいぬくもりを感じて顔を上げた。

                        香穂子が俺の手を両手で包み込んでいた。
                        そしてをそのまま自分の頬に当てる。

                       「私、待ってるから・・絶対夢を叶えてね」
                        
                        俺は両手で香穂子の頬を優しく包み込むとその唇に誓いの
                      キスを一つ落とした。
                       
                       「君との約束は絶対に破らないと誓おう」

                       だから、どうかその日まで待ていて欲しい。
                       大丈夫だ。
                       そんなに長く待たせる気は、俺にだってないから・・・。

                       君の為にも、夢は必ずこの手に。



                       香穂子が家に帰ったあと。
                       部屋の中で二人が誰にも反対されず、確実に、
                       一緒に外国に旅行いける理由少しを考えてみた。
                       結果、やはり・・・・。
                     
                       「新婚旅行か・・・・」

                       俺たちの新婚旅行の行き先はオーロラの見える国に密かに
                      決定した。
                       

                 
                        何かちょっとお題と違っちゃいましたね。