− 鍵 −
夢を見ました。
どこまでも続く暗闇の中を一人歩いているのです。
寂しくて悲しくて声を上げても、そこにただ私の声が響くだけでした。
果てしない闇の中に一つの光を見つけました。
その光に向かって歩くとあるものを見つけました。
それは「鍵」でした。
鍵はまるで自分の存在を知らせるように輝いています。
その鍵を手にした途端、視界は一気に開けました。
目の前には頑丈な鎖を幾重にも巻きつけられ、たくさんの錠がつけられた
大きな扉でした。
私は外に出るために一つ目の錠を外しました。
中から何か暖かなものが溢れ出しました。
二つ目の錠を外しました。
何か、身体が包まれるような感じがしました。
三つ、四つと錠を外すと、扉は開きました。
でも、その扉が開いた瞬間にたくさんの何かが流れ出てきました。
私はそのたくさんの”何か”に飲み込まれて、目が覚めました。
「ん・・・・」
目を開けると辺りは暗闇の中で、一番隊の仲間達の寝息が聞こえてきました。
「夢か・・」
何となくホッとして寝返りをうちました。
どうしてあんな夢を見たのでしょう?
あの夢に意味はあるのでしょうか?
私はその後寝付けなくなり、何気なく縁側へと出ました。
庭では鈴虫が自分の鳴き声を競い合っていて、大きな月がぽっかりと
辺りを優しく照らしていました。
しばらくそこで月の光を浴びた後、明日の隊務に響いてはいけないと部屋に戻る事にしました。
立ち上がった瞬間、誰かが後ろから口を塞ぎ、身体を抱えるようにして空き部屋へと私を
連れ込みました。
私は声を上げる事も出来ず、その力の強さに抵抗する事も出来ませんでした。
自然と、恐怖で身体が震え始めました。
部屋の中に入ると、その人は私を押し倒し覆いかぶさってきました。
「誰・・・?」
私は震える声でやっと問いかけました。
その人は答えることなく、私に深く口付けました。
両手を塞がれているので、抵抗をする事も出来ません。
油断した自分を呪いました。
沖田先生にあんなに注意されていたのに・・・。
次第に暗闇にも目が慣れてくると、その人の夜着がうっすらとわかるようになって来ました。
それは良く知った柄の夜着でした。
「セイ・・・」
たった一人しか知らないはずの私の名を、その人は吐息混じりに呟きました。
「お、沖田先生?」
私が驚いて呼びかけると、先生は少しだけ身体を離して言いました。
「貴女がいけないんですよ、神谷さん」
「貴女が私が心の錠を外すから・・・」
「理性の扉の向こうにあった欲望が流れ出してしまった」
沖田先生は私の夜着を肌蹴させると首筋に口づけながら中に手を差し入れました。
先生の手や唇が私の体中を這い回り、支配していきます。
これも夢の続きでしょうか?
私は夢の中で出口のない快楽に溺れているのでしょうか?
だとしたら、なぜこんな夢を見ているのでしょう
(私が沖田先生とこうなる事を望んでいるから?)
きっとそうに違いありません。
これは私の願い。
沖田先生が望んでくれるはずはない。
現では決して叶えられない願いを夢の中で叶えているのです。
こんな夢を見るなんて先生が知ったらきっと蔑むでしょうね。
だからこれは誰にも内緒。
私は先生の背中に手を回しました。
先生は顔を上げると嬉しそうに微笑んで再び胸に顔をうずめました。
(もっとその笑顔が見たい・・・)
私は笑顔を見るために自分から先生に口付けました。
ねぇ先生?どうしたらもっと笑顔を見せてくれますか?
言い訳
錠の続編です。
これ位なら表でも良いかなっと思いまして・・・
気分が乗れば更に続編書きたいです。
裏でね。
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