ふたつのプロポーズ 後日談
二人きりの生活にも慣れてきた休日の午後。
香穂子が作ってくれた昼食もすんで、月森はソファーに横になり
ウトウトとしていた。
新居のベランダから零れる陽射しが暖かく気持ちが良い。
完全に夢の世界への門を潜り抜けようとしたとき、玄関の方から
やってくるパタパタというスリッパの足音に再び現実へと引き戻された。
「蓮!!」
香穂子が嬉しそうにドアを開けてリビングに入ってきた。
「ん・・・?」
月森は重たい目蓋を開け、ダルイ身体を起こす。
「あ・・ごめん。寝てた?」
「いや、ウトウトしてただけだ」
香穂子はボーッしている蓮の様子を見て申し訳なさそうにしている。
夫婦になったというのに香穂子のこういう月森を気遣う所は変わらない。
それが嬉しくもあり、残念でもある。
まだ新婚なのでしょうがないとは思うのだが・・・。
もっとじっくり時間が経てば、お互いに変わってくるだろうか。
もっと互いに甘えるのが当たり前の夫婦に・・・。
「何かあったのか?」
「うん!あのね・・」
香穂子は飛び乗るように蓮の隣に腰掛けると、手に持っていた
葉書を見せた。
「土浦くんと笙子ちゃんが近況を知らせてきてくれたの」
土浦と冬海も数ヶ月前に式を挙げ、今は近くに新居を構えているらしい。
葉書の下の方には二人の新居のアドレスが書かれていた。
月森は香穂子からその葉書を受け取りぼんやりと眺める。
「それでね!すごいんだよ」
「笙子ちゃんおめでたなんだって!!」
月森は香穂子の言葉に眼を丸くした。
葉書に目を落とすと確かにそう書かれている。
「出産予定日は来年の4月・・てことは今は三ヶ月目だね」
香穂子は両手をパンとあわせ、自分の事のように喜んでいるが
月森は内心面白くなかった。
(うちの方が先に結婚したのに・・土浦に先を越された・・)
そんな月森の気持ちを知ってか知らずか、香穂子は
「お祝い何が良いかな?」とまだ生まれてもいないのに浮かれている。
「まあ良いか。うちはじっくり楽しもう」
子供が生まれたらきっと二人だけの時間なんて遠くなってしまう
だろうから。
土浦に先を越されたのは悔しいが今はこの時間を楽しもう。
そんなことを思って呟いた言葉に香穂子が月森を振り返った。
「何か言った?」
「いや、何も・・・・」
月森は首を横に振って葉書をテーブルに置こうとした時、あることに
気づいてその手を止めた。
そしてもう一度じっくりと葉書を見つめる。
「香穂子・・・」
「ん?」
お茶を用意しようとキッチンに行こうとする香穂子を月森は呼び止めた。
「今、妊娠3ヶ月って言ったか・・?」
「うん!そうだよ」
香穂子は月森の問いにキョトンとして答える。
「その・・俺はそういう計算の仕方とかは良くわからないんだが・・・」
「それだと結婚した月と計算が合わなくないか?」
「え!?」
蓮の言葉でその事実に気づいた香穂子は顔を真っ赤にして
その場で固まった。
やっと終わりました!プチとか言いながらも予定を大幅に超えて
長くなってしまいましたね。
それでも私の他の連載ものに比べたら短いのですが・・・。
今回は月日のプロポーズ話が書きたくて始めたのですがそれと
もう一つ。月森に「先を越された」というセリフを言わせたかったのです!!
予定どおり書けて満足です。ただ、もうちょっと雰囲気とか状況をしっかり
書きたかったかなという思いもあります。
文章力の無さが悔やまれますが日々精進します。
珍しく他のカップリングも書きましたが意外と出来るものですね。
日野ちゃんは月森以外とはイヤなんですが・・
ここまで読んでくださって有難うございました。
良かったら一言でも感想下さると嬉しいです。