ふたりきり
怖い夢をみた。
大切な人たちが自分を残して次々と消えてしまう。
最後に必死で蓮くんに手を伸ばしたけれど、届く寸前でやっぱり消えてしまった。
私は一人、暗い世界に取り残された。
それが悲しくて、泣き叫びながら顔を覆うことしか出来なかった。
「ほ・・こ・・香穂子!!」
頬に少しばかりの刺激を受けてハッと目を覚ます。
「大丈夫か?魘されてたけど・・」
視線をやや横に向ければ、隣に横たわって心配そうな表情を浮かべる蓮くん
がいた。
「蓮・・くん・・?」
「どうしたんだ?」
今だ混乱して判別のつかない私に、彼は落ち着かせるように穏やかな笑みを
向けた。
私は蓮くんの頬に手を宛てた。
掌から伝わってくる心地よい体温。
蓮くんはその手を取って自分の唇を押し当てた。
「夢だったんだ・・」
「夢?」
私はようやくほっとして蓮くんの首に腕を回して縋りついた。
「怖い夢を見たの」
「みんな・・みんな私だけ残して消えちゃって・・」
「蓮くんにも手を伸ばしたけど、届かなかった・・暗い世界に私だけ残されて・・」
私の腰に蓮くんの腕が回され、不安を取り払うように耳元で優しく囁いた。
「バカだな・・俺はどんなことが起きても君からはもう離れない」
「離れられないんだ・・・」
「留学中だって結局それで別れられなかっただろ?・・・」
蓮くんは昔の事を思い出してどこか照れくさそうに言った。
「昔の俺が見ていた世界はいつもモノクロで、それがすべてだと思い込んでいた」
「でも君と出会って、世界はとても美しく彩られていると知ってしまったんだ・・」
「もうあの頃の狭い世界には戻れないし戻りたくない」
「俺は生きている限り、君と二人で広い世界を見ていくよ」
「もう・・この手は離せないんだ」
「君だってそばにいてくれると約束してくれただろう?」
そう言って今度は私の左手をとると薬指に口付けた。
そこには、蓮くんからもらったエンゲージリングがはめてある。
「うん、そうだったね」
私はようやく笑うことが出来た。
もうあの夢の怖さなんて感じなかった。
「さあ、香穂子もう少し休もう・・」
「明日はこれから住む場所を決めなきゃいけないからな」
「うん・・・」
私は横になると蓮くんに擦り寄った。
胸に耳を寄せると聞こえてくる蓮くんの鼓動。
それが私をホッとさせる。
大丈夫。
あなたがいれば何も怖いことなんて無い。
そこがたとえ世界の果てだったとしても。
婚約中の二人です。
何度も書き直してるうちに話し事態が変わっちゃって意味が
解らなくなってしまいましたね。
お題と全然あってないのでUPを辞めようかと思ったんですが、
とりあえず良いかなと思いまして。