6月8日のブログに書いた話の続きです。

                          飴玉キラキラ




                   香穂子の部屋の机の上にはキャンディーの入ったガラスの小瓶が置いてある。
                   それは以前、蓮の母親である美沙からもらった物で、滅多に甘いものを口にしない
                  蓮も幼い頃からその飴玉は食べていたらしい。
          
                   とてもおいしい飴で香穂子も良く口にしていたのだがそのせいか減りも早く、もうすぐ
                  瓶の中は空っぽになってしまう。
                   香穂子はその小さな小瓶を覗き込んだ。

                   この飴玉。

                   もらったのはついこの間のことなのだが、今までにも何度か間接的に味わっていた事
                  が先日発覚した。

                   初めてこの飴を口にした時、香穂子はどこかで味わったような気がした。
                   でも、小瓶のそこに貼ってあるラベルは有名な老舗のもので買ったことはなかった。
                   だが、買い物から帰宅した蓮とキスをした瞬間に気づいてしまった。

                   それは蓮と初めてキスした時に味わったものだと。

                   その事を蓮に訊ねた時、蓮は真赤になっていた。

                   それからというもの、いろんな味の飴玉を口に入れるたびに何度目のキスだったか、
                  どんな場所でした時に味わったかを思い出すのが最近の香穂子の密かな楽しみだった。

                   でも、飴玉はもうすぐ無くなり、その楽しみが無くなってしまう。

                   香穂子はどうしようかと考え込んだ。
                   蓮に頼んでこれからは直接自分で買うことにしようか?
                   それとも・・・?

                   香穂子は椅子から立ち上がると、母親が買ってきた大きな飴玉を
                  その中に入れた。
                   再び小瓶の中は様々な色の飴玉に彩られる。

                   それを持って月森家に向かう。
                   インターフォンを押すと、思った通りに蓮が驚いた表情で玄関先に現れた。
                   

                   「香穂子?どうしたんだ?」

                    香穂子は先程の小瓶を蓮の前に差し出す。

                   「この間もらった飴ね、もうすぐ無くなっちゃうの」
                   「だから違う飴だけど、また瓶に詰めてみたんだ」

                    それを見た月森が「何だ・・」と微笑む。

                   「言ってくれれば同じものを用意したのに・・」
                   「ううん・・美味しいけどそれはもう良いの・・」

                   「あのね、これは・・」

                    香穂子は蓮の服を掴んで身体を引き寄せる。
                    蓮は引き寄せられるまま身を屈めた。

                    香穂子は蓮の耳元で囁くように耳打ちした。

                   「この飴食べてまたいっぱいキスしてね」
                   「そしたら私も飴を食べるたびにそのキスを思い出すから」

                    香穂子からそう囁かれた蓮の顔はあの日と同じくらい真赤になった。

                

                    飴玉の話はPCが故障中にブログに書いちゃったんですよ。
                    なのでその続きを書いて見ました。