依頼

が何どこかから遠隔操作しているってわけ?遠隔操作で、あんないい動きができるのはおかしいわよ。大体、通信妨害でもされたらお仕舞いじゃない?』

『コロンさん、あなたは”異質性空間エネルギー論”という言葉を、聞いたことはありませんか?』

コロンはかぶりを振った。

『そうですか。あなたなら知っていると思ったのですが…。この空間は”エーテル”という力場で余すことなく満たされており、一点からのエーテル波動は減衰することなくどこまでも届く、というものです。この理論の応用で、人形たちは遠隔操作に答えることができるのです。』

コロンは、納得したようなしないような微妙な顔をしている。
遠隔操作の問題はそれでいいかもしれないが、肝心の操作の部分はどうなっているのだ。人間の手動では、反射能力に限界がある。どうあっても、自分の体より、人形が速く動くわけはないのだ。そもそも、首から下が動かなくなったフェアリ本人は、どうやって人形を操作しているというのだ。
俺がその点を聞こうとしたとき、ジャックが口を挟んだ。

『話は大体わかった。それで、俺たちが呼ばれた理由は、結局何だ。』

『本題がまだでしたね。私の依頼は、この施設の停止です。
今、地上は旧時代の兵器による特攻を受けて、壊滅的な被害を受けています。ケイは、キサラギ社に内通することでそれを予見していました。企業が力を弱めたその時、ここに蓄えた戦力で一気に攻め込み、自分を追放した企業への復讐を果たすつもりなのです。
今、ここでは、旧時代の技術を応用した超兵器が量産されつつあります。今をおいて、それを止めることはできないのです。』

これに反応したのはリンダだ。

『それを何故、今になって私たちに依頼するわけ?早くわかっていたのなら、企業に依頼でも出せばよかったじゃないですか。”フェアリ”はここから出入りできるんでしょう?』

『それは、この施設のセキュリティーが弱まるのが、今しかなかったからです。特攻兵器の来襲は、キサラギ社が眠っていた旧時代のプラントを起動してしまったために起こりました。特攻兵器は、そのプラントから”エーテル”を介した遠隔操作で制御されています。地下基地のセキュリティーには、旧時代の技術が流用されているため、プラントの制御の影響を受けて誤動作する恐れがありました。このため、特攻兵器の来襲に合わせて、ケイは、基地のセキュリティーを一時的に低下させました。それが、フェアリを地上へ出す最後のチャンスだったのです。』

なるほど、艦上での”ダークネススカイ”の暴走は、その影響だったと見える。”ダークネススカイ”に旧時代の技術が使われていれば、可能性としては十分だった。

『なんだか、よくわかりませんけど、わかりましたわ。』

半分納得いかない顔のリンダは、口をつぐんだ。

『つまりだ。この施設に蓄えられた軍備を破壊し、ケイを捕まえればいいわけだな。了解した。
この人形はここに置いていくぞ。いいな。』

ジャックは”フェアリ”を床に下ろし、ジャケットを整えた。
コロンも、ずれた肩アーマーを正し、踵をそろえた。
そして、俺はレイヴンとして抑えるべき点を問うた。

『報酬は。』

レイピアは、一息ついて答えた。

『私の研究資金の全てと、世界の復興と平和。』

しかしその時、外では信じられないことが起こっていたのだ…。」
10/02/28 08:34更新 / YY

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