父、そして母

重巡”ジュピター”の前部甲板上に仁王立ちする重量二脚ACがあった。
ジャック=ファイザー少佐の”ドゥルカマーラ”である。
圧倒的な攻撃力をもって”ジュピター”を襲う”ダークネススカイMk.II”だったが、ジャック少佐とて、百戦錬磨の猛者である。連動ミサイルとバズーカの弾幕で牽制し、簡単には寄せ付けない。

「おのれッ、ダークネススカイが、またしても。
この開発プロジェクト自体に問題があるとしか思えん!」

”ダークネススカイMk.II”の放った2発のグレネード砲弾が機体をかすめ、艦橋下部を直撃し、轟音を上げる。
真っ赤に焼けた金属片が”ドゥルカマーラ”の機体を打ち付けた。
”ドゥルカマーラ”は降り注ぐ破片を振り払いつつ、バズーカの弾倉を交換し、再び”ダークネススカイMk.II”に狙いを定める。
”ダークネススカイMk.II”は、標的を”ジュピター”から”ドゥルカマーラ”に移したらしい。
巨大な水しぶきを上げ、海上を鋭角的にターンするや、2束5連のリニアキャノンを”ドゥルカマーラ”に向けて発砲した。
避ければ”ジュピター”のどてっぱらに穴が開く。
”ドゥルカマーラ”は左手のシールドでそれを受けたが、シールドは一瞬で四散し、吹っ飛ばされた”ドゥルカマーラ”は”甲板上に叩きつけられた。

「ぐはッ…。」

衝撃でジャック少佐の肋骨の数本は折れたかもしれない。
”ダークネススカイMk.II”は海面からジャンプし、二脚型に変形して甲板上に着地した。双肩の連装グレネードが不気味な音をたてて展開する。
脚部に故障を来たしたのか、”ドゥルカマーラ”は起き上がることができない。
大きく両手を広げ、”ダークネススカイMk.II”はその全火砲を開いた。

轟音が艦全体を大きく揺さぶった。

そのなかで、”ドゥルカマーラ”はまだ生きていた。
とっさに身をひねって直撃は免れたものの、その右半身はごっそりとえぐられていた。
”ジュピター”の甲板には大穴が開き、火の粉を伴った真っ黒な煙が立ち上っている。
ドドメを刺すべく、”ダークネススカイMk.II”が”ドゥルカマーラ”に歩み寄ったと、その時。

甲板の穴から突き出した巨大なブレードが、”ダークネススカイMk.II”の左肩口を貫いた。

”ダークネススカイMk.II”の左肩は大爆発を起こし、その左腕は根元から吹き飛んだ。
甲板の穴から手を伸ばして這い上がった黒い悪魔、それは、”ダークネススカイ”!
”Mk.II”は悲鳴のような金属音を上げ、よろめきつつ後ずさった。
”Mk.II”が穴を開けた甲板の下には、”ダークネススカイ”の格納庫があったのだ。

「…おいたが過ぎたな、お嬢さん。」

チューマー君は”ダークネススカイ”のコクピット内でそうつぶやくと、機体を艦外へ完全に起き上がらせた。
”Mk.II”のカメラアイが、恐怖の叫びを上げるように明滅した。

「必要の無い者は、死ぬだけだ。
だが、必要か、必要でないかは、貴様が決めることではない。誰にも決めることは出来ない。
では、必要でない者など、この世にいるのだろうか?」

”ダークネススカイ”のブレードが再度発光する。

「残念だが、今は議論しているときではない。
力をもって証明せよ、フェアレ=フィー!」

”ダークネススカイ”が、”MK.II”のコクピットへブレードを突き出した、その瞬間!
飛び込んだ一機のACが”Mk.II”に覆いかぶさった。
”ダークネススカイ”のブレードはそのACの腰部を貫き、”MK.II”のコクピットをかすめ、甲板に突き刺さった。

そのACは、リン
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まろやか投稿小説 Ver1.50