マークツー

巡洋艦”ジュピター”ブリッジ。
ロドム中佐にオペレーターから報告が届く。

「輸送艦”プルートゥ”、間もなく合流します。」

「来たか。」

ブリッジの窓から、巨大な輸送艦が接近してくるのが肉眼でも確認できる。
輸送艦”プルートゥ”。
空母に匹敵する巨体を持つ輸送艦で、AC10機を始め、あらゆる物資を一度に大量輸送することの出来る、我が社の誇る一品だ。
軽い振動とともに、”プルートゥ”は”ジュピター”の右舷に横付けした。

しばらくたって、ブリッジのエレベーターの戸が開き、大柄な男が入ってきた。
”プルートゥ”と共に本社からやってきた、ジャック=ファイザー少佐だ。
ジャック少佐は、階級こそ違え、ロドム中佐の同期であり、気の置けない間柄であった。

「時間通りだ。流石だな、ジャック。」

「例のブツを持ってきた。大事に扱ってくれよ、ロドム。」

ジャック少佐とロドム中佐は握手の後、着席する。

「そっちの具合はどうだ、ジャック。」

「ああ、私のAC”ドゥルカマーラ”の修理もようやく終わった。”プルートゥ”で一緒に積んできてある。これでこっちへ復帰できるな。
…リンダは元気か。」

「相変わらずだ。最近、ちょっと悩み事があるようだがな。」

「ほう。それは珍しい。恋煩いか?くっはっは…。」

二人は、給仕の出したコーヒーを手にし、談笑を続ける。

「それで、例のものだが…。」

「ああ。今、”ジュピター”の格納庫へ搬入した。デカイからな、入るのかと心配したぞ。」

「試作型はテストでいきなり暴走して大変な被害を出したが、今回は大丈夫なのだろうな、ジャック。」

「あれは参った。…ああ、もちろん大丈夫だ。私もこりごりだよ。どうだ、見に行くか?」

「そうだな。」

二人は、ブリッジを出て、エレベーターで階下へ降りていく。
エレベーター内で会話は続く。

「テストパイロットのフェアレ=フィーには、会ったのか?ジャック。」

「会った。少し話もした。あんな少女が強化人間とはな…。ナービスもよくやる。」

「なりふり構っていられないのは、どこも同じさ。」

「寂しそうな目をした子だ。両親には捨てられたということだな。可哀想に。
そして、それを戦争に利用しようとしている我々がいる。やりきれんよ。」

「そういうな、ジャック。クレストが勝てば、平和になるさ。」

「…そう願いたいものだな、ロドム。」

二人が格納庫に入ると、そこには異形の機体が鎮座していた。
人型に近いが、オーバーサイズの両腕。両肩に張り出した、巨大なエネルギーシールド。

「ダークネススカイ、2号機か。」

「マークツーだ。壊すなよ、ロドム。」
10/02/28 08:07更新 / YY

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