アディーナ2号機

方法はわかっていました。

「初めまして。私、フォーラです。よろしくお願いします…。」

フォーラさんはコクピットの中で、コンソールパネルに向かってそっとささやきました。
コンソールパネルの明かりが、まるでフォーラさんを歓迎するかのように、ぽっと灯りました。

「行きましょう、約束の場所へ。」

予備の”アディーナ”…いえ、これからは”アディーナ2号機”と呼ぶことにしましょう…は、小さな駆動音を上げ、月明かりの中をゆっくりと歩き出しました。

向かう先は、アルピニー准尉の待つ、ウェルファーマシティーの闘技場です。

----------------------------

”アディーナ2号機”がウェルファーマシティーに入った頃から、急にあたりが暗くなってきました。
月が沈んだのです。
それまで瞬いていた星たちも、雲に隠れて霞んでいきます。

闘技場が見えてきました。

影で真っ黒に見える、ドーム状の施設。
昼間は様々な競技で賑わっているこの巨大な施設も、今はカーンと静まり返り、真っ暗な闇に包まれています。
その闘技場の裏手が、ぽっかりと開いています。
”アディーナ2号機”は、少し立ち止まったあと、その真っ暗な闘技場の中にゆっくりと足を踏み入れました。

…その闘技場の中央に、1機のACが鎮座していました。
黒い、四脚型のAC。
アルピニー准尉の”ジャンネッタ”です。

”アディーナ2号機”の通信機が低くうなり、ノイズ交じりの女の声が聞こえてきました。

『まさか、本当に来るとは思ってなかったわ。お馬鹿さん。』


10/02/25 18:55更新 / YY

[2]前へ|[5]前編へ [6]続編へ
[7]TOP [9]目次

まろやか投稿小説 Ver1.50