沸騰点



ファイザー少佐が右手の拳を大きく振りかぶりました。
ああ、これを受ければ、コロンさんの綺麗な顔はぐしゃぐしゃに潰れてしまうでしょう。

が、突如、ファイザー少佐の後ろから誰かが飛びつきました。

「なぬ!?」

ファイザー少佐は体勢を崩し、よろけます。
フォーラさんです!
フォーラさんが、ファイザー少佐の首っ玉に背中からぶら下がっています。

「コロン先輩!」

「…!フォーラちゃん!?」

フォーラさんの目には、これまでなかった強い光がありました。
振りほどこうともがく、ファイザー少佐。

「くぉの、小娘がァ!!!はなせッ」

「ッ、離しません!私…、もう負けないんです!」

コロンさんを掴んだ、ファイザー少佐の手が緩みます。
その刹那、コロンさんの両足が電撃の速さで跳ね上がり、ファイザー少佐の顔面を捉えました。

「がっ!?」

両足蹴りを顔面に受け、サングラスを砕かれたファイザー少佐がよろめきます。
コロンさんはファイザー少佐の手から逃れ、素早くフォーラさんの手を掴みます。

「逃げるわよ、フォーラちゃん!」

フォーラさんを背負ったコロンさんは窓ガラスを突き破り、外へ飛び出します。
二階の高さですが、壁の凹凸を器用にジャンプし、華麗に着地を決めました。
コロンさん、ここまで来るともはや超人です。

しかし、脱出するには、施設を囲む堀と塀を越えねばなりませんが…
なんと、門が開いて橋が下りているではありませんか。

「あっ?なんだか知らないけど、ラッキーよ、フォーラちゃん!」

コロンさんとフォーラさんはそのまま門をくぐり、橋を渡り、留めてあったサイドカーに飛び乗りました。
土煙を上げて発進するサイドカー。
…なぜか追っ手は来ません。

「コロン先輩…ありがとうございます。私…。」

「ううん、いいのよ。フォーラちゃんが無事でよかった。
でもフォーラちゃん、さっき、ちょっとカッコよかったわよ?」

「はい…。」

工房へ向かうサイドカーの中で、フォーラさんはアルピニー准尉の言葉を思い出していました。

”逃がして差し上げます。内緒ですわよ?貴女がどこまで強くなれるか、見てみたくなってしまいました。
まぁ、単に、私がチューマーのヤツが嫌いだってのもあるんですけどね。
ちょっと細工すれば、私が逃がしたなんて、わかりっこないですわ。
ただし、お約束。無事逃げたら、1週間後の夜、ACに乗って、ウェルファーマシティーの闘技場に来ること。
お待ちしていますわ。”
10/02/25 18:55更新 / YY

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