ると部屋を後にし、フィオナはカーゴルームへ姿を消した。
「…やれやれ、内が見えない、ちょっとクセの強い子だなぁ」
やや声を細め、ジュンは苦笑いしながらボヤきながら、運転席へ向かう。
「どうかしら…。広杉嬢もそうだったけど、ちょっと背伸びし過ぎている感もなくはないわね」
レオナもチラリとカーゴルームへと続くドアを見送りながら、ジュンの後を続く。
「………」
ただ、黙って事の次第を眺めていたイグニスは、そのままカーゴルームへと向かった。
単純に、彼女が気になったからだ。
自動ドアを開け、フィオナのいるカーゴルームへと足を踏み入れる。
眼前に、回収した例の機体が照明に照らされ、静かに鎮座していた―
「やはり、貴方はあの方々とは少し違うのですね」
声がし、視線を右へと向けるとそこにはフィオナの姿があった。
「…まぁね。そういう君も、なんか違うけどさ」
イグニスはサラリとそう告げ、視線を少女に向ける。
「俺の知っている同年代の子は、もっと無邪気だ」
「それは、その子たちが“子供らしく”過ごせるからなのでは…?私は違う―」
語尾をやや強める様に、そして、何かをこらえる様に、フィオナはそう答えた。
「今は一人にさせてください。色々とあり過ぎて、少し落ち着きたいのです」
そして、そう続けた彼女に、イグニスは黙って頷き、カーゴルームを出た。
“これ以上深入りする必要はない―”
頭のどこかで、そう誰かが囁いた。
エリーゼは、迷っていた。
町へとなんとか潜りこんだものの、どこで落ち合うか、“リューク”と決めていなかったからである。
(とりあえず…、この街地域一帯の情報を収集する必要があるわね)
流れゆく人混みの中、エリーゼは案内看板を見つけ、そこに記された街の中枢部を見つけると、そこに向かうことにした。
(しかし、ここは“陽だまりの街と同等か、それ以上に町としての機能が生きているわね)
ここの指導者の嗜好なのだろうか、エリーゼがいた世界にあったソレにより近い、どこか古典西洋風の建物が通りの左右へ広がっていた。
外周は高く、厚いコンクリートの壁と防衛兵器が広がっていたが、その中はとても古典的―
(なんか…。昔に帰ってきたみたい…)
心にズキッとかすかな痛みの様な感覚。
それを感じまいと、エリーゼは力強く歩を進めた。
「どうやら、彼女の様ね…」
人の流れの中、その彼女を見つめるシルエットが二つ。黒いスーツに身を包み、それらはエリーゼが目の前を通り過ぎると颯爽と歩き始めた。
一人は珍しい赤毛の混じった短髪を持つ女性、一人は不思議な青く透き通ったセミロングの少女。
二人は視線で“間違いない”“タイミングはかせる”と合図すると、歩調を早めた。
「―――」
それにエリーゼは気づいたのか、突然歩みを小走りに変える。
人混みを避け、そして、それを利用し、通りから外れ、小道へと駆けこむ。
「チッ―」
そして、二人組の視線からエリーゼの姿が消えると、二人は消えた地点へと駆けた。
周囲を見回すと、建物と建物の間の小道を駆けぬけるエリーゼの姿が。
二人も彼女の後を追う。
(まったく…、どうしてこんな目に会うのかしら…?私は一体何なの…?)
駆け抜けながらエリーゼはそう思った。
この世界において自分だけが特定の人間達から狙われている。
カッコよく言えば、それは“私でなければならない”という理由が考えられるわけであるが…、
「バカバカしい―」
小さく独白し、彼女は目の前のフェンスをよじ登った。
(ゲームの世界じゃあるまいし…)
フェン
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