8.『放棄できぬ依頼』

。ここら一帯は彼らの駆り場だったようだ。
 本来、この機動特戦機『ヴァンツァー・スティング』の性能なら、この程度の兵器群は敵ではないはずだ。
 しかし、前述の戦闘でその機体とその機能の9割が欠損してしまった。動いているのが奇跡である。
「ハハハッハアァッ〜!!逃がさないぜ!ねぇ〜ちゃ〜んよおぉぉぉ〜〜!!」
『クソッ、気持ち悪い声を出すなッ…!!』
 乱射の間を詰めてくるAVESが取り付けられたロボットアームを展開する。
 その先には鋼鉄を切り裂くレーザーブレードが備え付けられていた。
 それを見て、セティアは反射的に機体を操作し、回避運動へ入ろうと、機体へ命令を出す。
 だが、機体は動かない。サブモニターに警告。アクチュエーターブロー。
「そらよ!!」
 刹那、斬撃の強い衝撃が侍女と幼き主を襲う。
「きゃあぁぁぁァッ…!!」
 悲鳴に似た叫び声を上げ、フィオナは気を失いそうになった。
『フィオナ様!』
 だが、自身を必死で守ろうと叫ぶ侍女の叫び声にかろうじて意識を取り戻す。
「鬼ごっこは終わりだぜ。お嬢ちゃん」
 辺りを囲むAS−12 AVESの群れ。
「女子供は、特定の顧客に高く売れるんだ。特に、あんたのような秘境から来た女たちはな」
 舌舐めずりしながら、そう告げるフリード。ミグラントという名の野党たちが、ジリジリと囲んで作った包囲の輪を縮めてくる。
 もはや機体は動かない。このまま彼らに捕まるぐらいなら―
「ん?レーダーに反応が?」
 ―と、突然フリードを始め、相手が一斉に空を見上げた。
 スティングもそれに釣られるように見上げる。
 ボロボロのヴァンツァー・スティングが見上げた先、そこには一機の人型のシルエットがあった。
 紫色と白で象られた人の形をした機械。それがアーマード・コアだと気づくにそれほど時間はかからなかった。
『そのまま蹴りこめッ!!』
 イグニスはジュンが叫ぶままファントムを操作し、敵機へ突っ込んだ。
 ブースト・ドライブ。
 ACでさえ、機体フレームを歪ませる荒技を叩きこまれた一機のAS−12 AVESは、ラグビーのボールのように地面を跳ね転がった後、爆散した。
「ありゃあ、シュッツガルトで見た機体!?何でここに居る!?」
 本来なら陽だまりの街にいるはずの相手に、フリードは思わず声を反転させた。
「ん?その声はあの時の…。まだ懲りずに小悪党な事をしていたのか」
 外部スピーカーから聞こえてきた声に聞き覚えがあったイグニスは、辺りを見回しながらそう告げた。
「チキショウ!!乗っているのはよりにもよってキサマか!またしても邪魔しやがって!あの時の復讐だ!叩き潰してやる!!」
 “野郎ども!!”と声をかけると、フリードが乗るAS−12 AVESを始め、全機がACファントムを囲んだ。
「いくらACでもな、フリード旅団には敵わないんだよ!!」
 そして、刹那周囲をグルグルと高速で回り始めた。
「ふぅ…」
 それを見て、浅く息を吐きながら身構えるイグニス。“敵が攻撃したときがチャンスだ”とヘルメットに内蔵された無線機からジュンの声が聞こえる。
「−喰らえッ!!」
 次の瞬間、AS−12 AVESから一斉にENマシンガンが掃射される。
「今だ!」
 それに合わせるようにファントムは大きく跳躍した。
 軽量機故の素早い跳躍。
「なにぃ!?」
 フリードは自信ある戦術を破られ、動揺した。
『一気にライフルとハウザーでたたみ込め!!』
 見下ろした映像と重なるロックオンカーソルに、FCSに、全てを委ね、イグニスはトリガーを引いた。
 刹
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まろやか投稿小説 Ver1.50