までちょうど半分の丘陵地帯へさしかかっていた。
荒野を行くACを積んだ大型ローダー車。その主は、本来依頼完了で地元へ帰還する予定だったジュン・クロスフォードである。
「ジュン。本来なら、断っても良かったのよ?」
運転するジュンの隣で、レオナは心配そうにそう告げた。彼女曰く、“嫌な予感しかしない”という。
「依頼主は行方眩ませているし、此処から先は私達にこれと言ったメリットはないから」
そう言葉を続け、近くのドリンクを手にとってそれを口へ運んだ。
「まぁ、レオナのいう通りかもしれないけどさ。なんとなく、後味悪いんだよ。場の勢いとは言え、オレの一言がリュークをあんな行動に走らせたのかもしれないし…」
苦笑いし、ジュンはコンソールに取りつられたナビゲーションの画面へ視線を向けた。
クルーズモードで車は入力された目的地へ向かっている。目的地まではどんなに急いでも半日かかる。
ナビの隣の哨戒レーダーには、何も今の所何も映ってはいない。
「ところでイグニスはどうした?」
「今、後ろの休憩室で休んでいるわ」
そういいレオナは心配そうに視線を後方のドアへ向けた。
この車には、簡易宿泊を可能にした休憩スペースが設けられている。
決して広くて快適とは行かないが、イグニスにとっては唯一一人でゆっくりできる時間だった。
部屋に据え付けられたスチールのテーブルの上に、レベッカから託された例のファイルを広げる。
“あの時、俺が見たのは…”
脳裏にもっとも強く残る光景。
それは自分の知るリュークらしき人物が、親しいと思われる青年を抱き抱え、空に向かい泣き叫ぶシーンだった。
それがどういう意味があるのか、今は分からない。ただ、もう一つ見えたキーワードが、イグニスに何所か今回の一件が、自分たちが関わってしまった“Δ(トリニティ”システムと、どこか関係があるように、そう思えた。
『魂の電子化』と名付けられたこのファイルに収録された素人には理解できぬ言葉で記された数々の実験データの一片。
唯一素人でも理解できた項目。それは−
『イグニス!ちょっと来てくれないか!?』
思考を遮るように、ジュンの声が備え付けられたスピーカーから聞こえた。それとほぼ同時に揺れを感じ、大型ローダー車は停車した。
慌ててファイルを閉じ、イグニスは操縦室へと向かう。
「どうしたんです?クロスフォードさん」
運転席に来ると何やら電子機器が騒がしく音を立てて、フル稼働していた。
その中で、レオナはヘッドセットを装着し、目の前にあるレーダー機器らしきモノを操作し、何かを探っているようだった。
「俺の事は、ジュンでいいよ。それよりもお願いがある」
チラリと横目で現れたイグニスの姿を見て、ジュンはレーダーを指差した。
レーダーの画面には、七つの反応が自分達の前方にある。
「この先頭の未確認機から救難信号が出ている。プラス後方の五つは恐らく〜…、野良のミグラントだろう。それを助けてやってくれないか?」
「追われているのは、女性二人組のようね。識別不明機に乗っているようだけど…」
ヘッドセットから聞こえる音からそう判断したのだろうか?
レオナはそう告げると、返事の無線を流し始めた。
「どうして俺が?ジュンさんは?それに俺達の目的は人助けじゃないし…」
怪訝そうな顔でイグニスはジュンに聞き返した。
「まぁ、細かいことは言うなって!機械に頼らない、お前の腕を一度見ておきたいんだよ。どうせ向こうに着いたら、戦闘があるだろうしな!」
不敵な笑みを浮かべながらそう告げて、ジュンは手元のコ
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