るな。万が一の時は、ワタシがお前を守る。お前は大切な“お客様”だからな…」
それを横目で見ていたアルトセーレはそう告げ、車のギアを一段上げる。
「どういうこと?」
エリーゼの問いにわずかな間をおいた後、アルトセーレは口を開いた。
「…簡単に説明すれば、お前は“Δ”システムに関わっているにも。あの目指している島にもあるんだ。“Δ”システムに近いモノが―」
話を聞いたエリーゼがそれを遮って聞き返すよりも早く、車のブレーキが掛かった。
「伏せろッ!!」
刹那、叫ぶアルトセーレがエリーゼに蔽いかぶさる。
エリーゼは一瞬何が起きたか、分からなかった。
その直後、大きな飛来音と共に複数の爆発がすぐ近くで起きた。
車が爆風で浮き上がり、横転する。
天と地がクルクル回る中、エリーゼはようやく事態を把握した。
“ACだ”
やがて、ローダー車は道路側にあった大きな岩にぶつかり、運転席側を下にした状態で止まった。
派手に転がったが、二人とも擦り傷程度で済んだようだ。
「…大丈夫か?」
アルトセーレの声に、エリーゼは黙って頷き答えた。すると、アルトセーレは黙って彼女にかけていた手錠を外した。
「ここから早く出て、街へ向かえ」
そして、そう指示すると素早い身のこなしで、割れたフロントガラスから外へ出て、中にいるエリーゼに手を差し伸べる。
「リューク。貴方は一体、何をしようとしているの?」
「いずれ教える」
エリーゼの言葉も聞かず、アルトセーレはグッと彼女の手首を掴むと、車内から引っ張り出した。
「だから、今はワタシを信じて行けッ!ワタシも必ず行くからな!!」
そして、戸惑うエリーゼを置いて、脱日のごとく荷台へと駆け出した。
襲撃の犯人であろう紺色のACがゆっくりと歩行しながらこちらへ向かってくる。
そして、聞こえてくるのはACの機動音。
エリーゼは駆けだした。
“今は彼女を信じるしかない”
それが、エリーゼが自らに下した答えだった。
“最低限、街へ逃げ込めば奴らもそう簡単には手を出さないはず…”
アルトセーレは横目で街へと駆けるエリーゼを見送りながら、持ってきた愛機ソルジット・タイプTRをブースターとスラスターで、乱暴に立ち上がらせる。
そして、そのままブーストチャージで紺色のACへ突撃した。
だが、紺色のACは、それを最初から分かっていたかのように舞妓の様な機動でそれを回避し、間合いを取った。
「フン…。機体を変えられないのは、過去への執着かしら?」
目の前の見覚えのあるエンブレムを肩に張り付けたACから、聞きなれた女の声がする。
「お久しぶりね。義姉さん…」
紺色の高機動型ACは、左手に握るレーザーブレードの刃を生やし、構えた。
「かつての二刀流(トゥーソード)、“戦乙女”とも呼ばれていた人間が、禍々しい格好になったものね、フレア・A・ブルーライネン」
タイプTRも両手のライフルを構え、身構えた。
「“例の女”は街へ行ったか…」
紺色のACのパイロットは、拡大モニターで街へと駆けていくエリーゼの後ろ姿を見ながら独白した。
「やはり目的は、彼女か。スモークマンの指示か?」
フレアの視線を察したアルトセーレは、神経を尖らせながら淡々と訊ねた。
「分かっていて聞いているんでしょう?」
刹那、周囲の空気が強い殺意で凍りつく。
「二丁拳銃(トゥーハンド)!!」
刹那、弾けたそれは迸るブースターの炎と同じく、両者は激しく火線を交えた。
アルトセーレが戦いを始めたその頃。
イグニスら一行は、陽だまりの街を出発し、目的地
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