7.『亡霊の影』

を隠している。不穏な動きが目立つ。町は、商業中継地として発展。”陽だまりの街“と名を変える”

“11月 周辺地域で防衛戦。『Δシステム』とは何だ?ユーリは、私の部隊に辺境地への進軍を打診してくる”

“同月 依頼主から再依頼。タイプ0と適格者の捜索。そして、”エリーゼ・バーンズ“の捜索”

“12月。ユーリの部隊より脱退。依頼主より資金と設備をもらい、自軍を立ちあげる”

“同月 明日、依頼主が訪問する。一体何の用なのだろうか…?”

「…この直後だったな。奴が狂ったのは」
 小さく、誰にも聞こえないような声でリュークは呟いた。
 そこから先は、今もはっきり覚えている。自分がここへ来たのは、まさにこの直前だった。
 そして、その数ヶ月後。
Phantom-Childrenが初めてテロ事件を起こした日、リューク・ライゼスは目の前で初代代表こと広杉・ユーリ・ケンゾーを失い、フィーナの腹心として生きていくことを決めた。
(―あれから一年)
 その決意からほぼ一年近く。戦いは一応の決着を得た。しかし―
「きゃぁぁっ……!!」
 レオナの叫び声に、リュークは腰につけていた銃を引き抜きそちらへ向けた。
 そして、バサバサっという本棚から本が崩れ落ちる音と共に、振り向いた視線の先、尻もちついて薄暗い部屋の隅を見ている。
「何があったんだ…―って、おいッ!!」
 本棚を指差して震えるレオナの側に寄ったジュンも思わず声を尖らせ、その闇が支配する部屋の隅を視た。
 それにリュークもハンドガンにつけた照明を点けて、そちらへ向ける。
「これは…」
 ゴクリと息をのむ。部屋の隅、本棚の奥にある隠し棚に彼らを驚愕させたモノの姿があった。
 死体。
そこにあったのは、その殆どが白骨化した遺体だった。
 リュークとジュンは本棚をズラし、その棚に置かれた遺体の側へ歩み寄る。
「リューク。やはり、あの時俺たちが戦った“アレ”は偽物だったわけか?」
 かつてリグシヴ・ウェーバーだったと思われる遺体を見ながら、ジュンは訊ねた。
「信じがたいが…、その考えるのが正解なのかもしれない」
 リュークもそうつぶやき、遺体に何か変わったことはないか、丁寧に調べる。
 すると、遺体が着ていた上着のポケットから一枚の紙が出てきた。
「これは…」
 何かのチケットだ。それもかなり古いもの。
 リュークがそこに書かれていた事を読み取るよりも先に、ジュンが“どれどれ…”とひょいとそれを掻っ攫った。
 注意をしようとしたリュークの前でジュンは、そこに書かれていた文字を読み上げる。
 リュークにとってそれは、聞き覚えのあるワードだった。
“ドクン”と心臓が一段と大きく高鳴り、彼は絶句してしまった…。

イグニスは大きく肩を落とし、ほとんど人気のなくなった“陽だまりの街”を歩いていた。
目的地は、かつての自分の家。リトナ・ブラッドの教会跡だ。
「どうしたんだよ。なんかすごく疲れた顔をしてるけど…」
 隣を歩くネロが心配そうに見上げてくる。
 隣のステラも同じだ。心配そうに彼のジーンズの裾をつまみ、顔を見上げている。
「悪いな。ちょっといろいろあって…。まぁ、疲れが抜けないんだよ」
 そう答え、“はぁ…”と大きくため息をついた。
 遡るは1時間前。屋敷の敷地内に出来た医療テントで、レベッカはイグニスに告げた。
“貴方の側にいた女性。彼女こそ、貴方がシステムに選ばれた理由”
 彼女はそう告げた。
“そして、なぜそうなのかは直接聞けばいい。恐らく彼女は街のどこかにいるから”
 そう告げて、レベッカはテントを出た。そ
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まろやか投稿小説 Ver1.50