第6話

グシヴは狂気を含んだ笑いの様な奇声を上げながら、トリガーの引き金を引いた。
 連動してGLKがガトリングガンとプラズマガンを乱れ撃つ。
 それは狙い定めたものではない、ただの乱射だった。
(コイツ…、どんどん機動が鬼畜じみたものになっている…?!頭がイッてやがる…!)
 一定の距離を保ち、ハイブーストと周囲の廃墟で飛んでくる弾丸の嵐を交わしながら、ジュンは踏み込む時をねらっていた。
「ジュン!もうこれ以上は私でも持たないぞ…!」
 通信機越しでリュークの余裕がない叫び声が飛ぶ。
少し離れた場所でリュークのタイプTRは、GLKと共に現れた僚機である機動兵器数機と相手していた。
 タイプTRの弾丸も残りわずか。そうなれば残る兵装はブーストチャージしかない。
 この戦いに終止符を打つには、やはりリーダー機であるGLKを撃破するしかない。
「ハハハッ、どうする!?どうする!?流れの傭兵!!お前の今の兵装で私を倒せるか?!」
 リグシヴは手を緩めない。弾が尽きることを忘れているのか、それともこれも計算のうちなのか、逃げるタイプTLを周到に追いまわす撃ち方をしてくる。
 近接・機動戦闘主体のソルジット・タイプTLにとって、重装甲・重兵装のGLKはやりつらい相手だ。
 ジュンはチラリとサブモニターに映る愛機の残弾を見た。
 銃器は、右のガトリングガン“LOWENZAHN GT21”が残り30発。左のショットガン“KO−3K/NOCTUIDAE”が残り1発。
 そして、サブで持つ右のパイルバンカーが残り1発。そして−
(それらが無くなったら、俺が鍛えたブレード“刹羅”だけだ)
 BD−0 MURAKUMO型ブレードをベースに刀身を特殊合金で換えたオンリーワンの実剣。
 それが最後の兵装であると同時に、ジュンの切り札だった。
「一か八か…!」
 ジュンは機体を制御しながら、右手をコンソールに伸ばし、表示画面を見ないまま素早く何かを打ちこんだ。
(親友、アンタの残した戦闘プログラム、使わせてもらうぜ…)
 次の瞬間、画面に”プログラムロック解除”の表示が流れると、途端にタイプTLは地面を大きく蹴り、旋回しながらGLKと向かい合うように止まった。
「スクランブル・ブーストッ…!!」
 ジュンが叫んだ刹那、コクピットモニターに強いノイズが入り、画面が大きく乱れると同時にジェネレーターが設定された出力限界を超え、暴走を始める。
「…!?」
 異変に気付いたリグシヴが機体の動きを止めようとした刹那、タイプTLは突如弾丸のごとくGLKの懐へと飛び込んできた。
(な…んだと−!?)
 リグシヴがそれを認識した瞬間、激しい打撃音と共にGLKは大きく弾き飛ばされた。
「ぐッ…!?」
 息を詰まらせたリグシヴが最後に視たタイプTLは、表面の塗装が熱でチヂれ、風で剥がしながら修羅と化していた。
『不明なプログラムが実行されました。システムに深刻なエラーが発生しています。ただちに使用を−』
 コクピット内では、各種警告音と共に操縦者へ使用中止を訴えるCOMの声が響く。
 身を容赦なく襲う高Gの中、コクピットに座るジュンはいつものジュン・クロスフォードではなかった。
 そこには、野獣のような瞳で獲物を狙う狩人がいた。
 容赦なく怯んだGLKのコアへ、グライドブースト状態でタイプTLは右手のガトリングガンをほぼゼロ距離で放った−
 弾切れのアラートが響く中、眼前の分厚いGLKのコア装甲に亀裂が入り始める。
「叩きこむ!!」
 右手のガトリングガンを投げ捨てながら、間髪いれず左手のショットガン
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まろやか投稿小説 Ver1.50