焦りと心配を顔に浮かべ、フィーナへ答えた。
「…信じましょう。彼らは必ず帰ってきます」
フィーナはそれに対し、レオナの肩に静かに右手をおいて、落ち着いた口調で静かにそう告げた。
彼女なりの、精いっぱいの励ましだった。
「司令!第二、第三防衛ライン突破されました!!」
だが、フィーナの心を砕くかのように形勢不利の報告は続く。
今のままではここが10分と持たない。
「司令!敵機中央、高エネルギー反応!」
それに部屋の空気が凍りついた。
タイプDは、分かっている。ここがこの街の頭脳であることを。
モニタリングされ、映し出された画像には大きく開いた胸部に主砲らしきものを展開し、禍々しいエネルギーを帯びたタイプDが映っていた。
それを確認した兵士数人が慌てて部屋を飛び出す。また、ある者は逃げようと席を立つ。
だが、それが全て無意味であることをフィーナとレオナは直感で感じ取った。あの“劫火”はそんな生易しいものではない。
「お父様…」
今まさに放たれんとする劫火を前にフィーナは胸の前で握りこぶしを作り、目を閉じて小さくつぶやいた。
だが−
それが放たれることはなかった−
『いっけえぇぇぇッ………!!!』
聞き覚えのある声にフィーナは閉じていた目を驚いたように見開いた−
それと同時に画面の中でタイプDがよろめき、町中へ倒れ、空へ向け一瞬閃光を放った後、爆発した。
“特攻”
いや、これは特攻ではない。空中魚雷のような何かだ。
タイプDの制御AIは一瞬何が起こったか、理解できなかった。
ただ言えることは胸部に大きな質量を受け、それとほぼ同時にそれが爆発したこと。
そして、その衝突の衝撃で姿勢を崩し、さらに爆発によって胸部に蓄積されていた膨大なエネルギーが流失。主兵装のキャノン砲が破裂し、ダメージを負ったということだった。
各部を支える巨大なサーボモーターとスラスターを必死で動かし、タイプDは立ちあがる。
再び立ちあがり、目標の方角へカメラアイを向けると、そこに先にはない新たな二つの熱源反応があった。
「…輸送ヘリを胸部に喰らってまだ動くとはね」
エリーゼは、落ち着いた口調で独白した。初見とはいえ、タイプDがただの兵器ではないことを彼女は感じ取っていた。
「エリーゼ。お前も相当キレてるよ。ヘリを自動操縦で“アレにぶつける”なんて…」
通信機越し、エリーゼの声を聞いてイグニスは答える。
目の前では各部システムが目まぐるしい速さで立ちあがり、内蔵COMが“戦闘モード起動します”と告げていた。
思い返せば、ヘリを一旦市内で下ろし、広杉邸へと向かったイグニスは、タイプ0へと搭乗した。
誰一人いない仮設の作業場でタイプ0はほぼ全修復さされた姿で主の搭乗を待っていた。
“あのジュンっていう人がやってくれたんだな…”
右手で微かに読み取った情報から察し、イグニスは機体を飛ばす。
そして、その間にエリーゼの手によって座標指定されたヘリは人を乗せず再び飛び立ち、そして、今に至るわけである。
「代表、待たせたな。アレは俺たちがなんとかするから、今のうちに安全なところまで退避して、態勢を整えてくれ」
通信を通して、一方的にそう告げてイグニスはブースト制御のフットペダルを強く踏み込んだ。
タイプ0は、背に強い光を吹いて、砲弾のごとく街を駆けた−
イグニスたちがタイプDと交戦を開始したその頃。
朽ち果てた名もなき戦場での戦いもクライマックスを迎えようとしていた。
「シャハアァァァッ………!!!」
狂いきった精神からなのか、リ
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