u…、キ…サマ―。ウラ―ギ…者の―」
ファンタズマ・ミノタウロスも片言の言葉を漏らしながら、少年から発せられる気配の正体を知った。
「知っているか?ファンタズマでありながら、人間を愛する奴らがいたこと。人を愛し、人と融合した彼らは、ファントムと呼ばれていることを」
落ち着いた口調、しかし、周囲を威圧するその気迫。彼の顔や両手に、幾何学的な模様が刺青のように走り、その瞳が一瞬で獣のような紅き瞳へと変わる。もはや、彼がただの少年ではないことは明確だった。
「俺の名は、天乃 駈龍。またの名を、ファントム・ドラグーン。幻想の一つ。天駆ける龍となる男だ!」
刹那、ハルバードが大きく光を放つ。
『変・身(クロス・ドライブ)!!』
バルバードを持つ右手から全身へ、彼の姿が変化していく。その手は鋼鉄の手甲を身にまとい、足は龍のごとき爪を持ち、その胸部から背を形成する防具は黒く、その黒髪は長く伸び、蒼く彩られ、それを龍の頭部を模したヘッドセットが束ねる。
黒と白に彩られた機械装甲を持つ龍人へ―
少年は内に眠るファントムと交叉し、姿を変えた。
「Gaaa…!!」
「…行くぞ。三流」
ドンッと強く地面を蹴り、両者は跳び出す。
先に攻撃を仕掛けたのは、ファンタズマ。ヘッドの大きな角を突き出し、特攻してきた。
その動きを最初から分かっていたのか、ドラグーンは直前で素早く左へ反らし、ハルバードの長い柄を使い、特攻してきた敵の足を引っ掛け、その巨体をひっくりかえした。
「ハッ!」
追撃と言わんばかりに空いた左手に拳を造り、仰向けに倒れた敵の溝内へ打撃を加える。
だが、直前でミノタウノスは体を回転させその拳からすり抜け、立ち上がると、間合いをとった。
そして、その強力な突進力で反撃の拳を大きく振り下ろす。
「………ッ」
休むなく連続で振り出される拳。実体化の際、元にした人間の癖なのか、軍隊式の格闘術だ。
拳を避けるだけでは交わしきれないと悟ったドラグーンは、大きく後ろへ飛んだ。
「接近戦じゃ、長物は邪魔だ」
そう告げ、ハルバードを地面に突き刺す。そして、静かに息を吸うと、
「ウォームアップはOKか?来い…」
空手のように身構えた。
「UGAAAAA!!!」
再びのミノタウロスの特攻。最初よりも早い。ドラグーンもやや遅れて大きく一歩踏み込んだ。そして―
「ハァッ!!」
彼のキレのある声と共に空気が震えるような音が轟いた。
「GAaaaaaa……!?」
しばしの沈黙の後、叫び声と共にミノタウロスが虹色の液体を額から噴きながらよろめく。
「たった一撃で、形勢を逆転させやがった…」
涼は目の前の戦士が持つ力を見て、驚いていた。対ファンタズマ部隊に従属する各国の者達の間で語り継がれる生きる伝説。ファントム。
一騎当千の力を持つというその戦士が目の前にいる。そのことが彼には信じられなかった。
驚愕する涼の隣で、真は焦っていた。それは彼にそのファンタズマが、仲間であることを伝えなければ、と思っていたからだ。
ドラグーンは、敵の頭を殴り付けた右手をスナップさせ、感覚を確かめると、止めを刺すべく、ゆっくりと眼前の相手へ歩み始めた。
「やめてください!」
それを見た真は、堰が切れたように叫んだ。
「その人は―、私たちの隊長なんです!」
真の言葉はドラグーンに届いているのだろうか?
彼は歩むのをやめない。そして、先ほど地面に突き刺したハルバードを右手で引き抜くと、
「…一つ言っておく。アレはファンタズマだ」
真の方を見ることなく、それを大きく頭上で
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