13.『終焉/破壊の牙』

る。
 しかし、その結果はΔ“トリニティ”システムは惨劇しか生み出さない。
 果たして、それに選ばれた自分は、何ができるのか?
「エリーゼ…!」
 進行方向を敵が陣形を取っていた島の側の海域へと向ける。
 “恐らく、そこにエリーゼがいるはず”
 そう、彼は知らなかったのだ。その艦船一団は既に海の藻屑と化していることに―。
「そんな―」
 宙に浮いたまま、イグニスは目の前に広がる光景に愕然とした。
 そこには、バラバラになった船の残骸と遺体が無数に広がっていた。
「エリーゼ!どこだ!?」
 機体の全てのセンサーをフルに動かし、彼女の姿を捜す。だが、見つからない。
「―ッ」
 その時、“ドクンッ”と彼の中でまた何かが反応した。
 強烈な威圧感。おぞましい気配。息が速くなる。頭の中に埋め込まれたチップが、イグニスに告げる。
 “システム『Lakhesis』の反応を確認”と。
 気配を感じ、機体と共に空を見上げる。そこには…
(黒いタイプ0…!?)
 漆黒と金で彩られたかつての搭乗機と同じ機体。真っ赤なモノアイが強烈な威圧感を放っていた。
 そして、その手には海水で濡れ、意識を失ったエリーゼの姿があった。
「エリーゼ!!」
 彼の呼び声でその機体が反応するように、彼女をその手に握ったまま、ファントムに背を向けた。
「おい、待てよ!彼女をどこへ連れて行くつもりだ!?」
 ライフルを向ける。次の瞬間、コンピュータが新たな敵機の反応を警告する。
『悪いが、邪魔はしないでほしい』
 その声に振り返った刹那、蒼く燃える閃光がファントムを駆け抜けた。
 刹那、ファントムのライフルが真っ二つに斬り裂かれ、爆発する―
「クソッ、何だ!?」
 爆発したライフルを手放し、イグニスは周囲を見回す。
 だが、周囲に彼らの姿はなかった。
「イグニス!」
 そこへ背に強い光を灯し、ヴァンツァーファングが舞い降りた。
「リューク?!」
「急げ!島が崩壊する!」
 彼の言葉と共に、辺りへ凄まじい地鳴りと轟音が轟いた。
 島が、その大地が割れ、海へと沈んでいく。ロスト・アイランドの基盤まで浸食が及んでいたのだ。
「リューク!今ここにACが居なかったか!?黒いタイプ0ともう一機―」
「今は“開拓者の港”まで行くぞ!話はそれからだ」
 イグニスの言葉を遮るようにリュークはそう告げると、街へと機体を向け、飛び立った。
 彼の言う通りだ。
 崩壊した大地が大きな津波を起こす。ここに居たら、何があるか分からない。
 イグニスは、何か胸に引っ掛かるものを感じながら、機体を飛ばし、ファングの跡を追った。



13.『終焉/破壊の牙』 終

13/07/05 21:59更新 / F.S.S.
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