13.『終焉/破壊の牙』

と駆け上がる―
 やがて、跳びあがったその先、空から複数の木の柱のようなもので宙に浮いている大きなテーブル状の地面が現れた。
 そこへと降り立ったファングが見つめる先、そこに島を浸食する全ての中枢があった。
 あらゆる生命体の姿や顔が歪に浮き出た円筒状のモノ。かつての恩人と、その妻の歪んだなれの果て。
 そこに彼らの意思はない。あるのは、生物としての基本原理のみ。
『WERYUUUUUUU―………!!!』
 雄叫びを上げ、そこから琥珀色のレーザーが複数飛び出し、空中で軌道を変え、ファングへと襲いかかってきた。
「今、全てを終わらせる…!!」
 それらをブーストと華麗なステップで交わし、攻撃の合間を縫って狙いを、手に握った二丁のハンドガンを放つ―
 だが、放たれた弾丸は中枢に当たるも金属が跳ねるような音と共に弾かれてしまった。
「火力不足か!?」
 予想以上の装甲に、リュークは驚愕する。
 機体が激しく揺れる。火花が一瞬散る―
 紅白の機体を何本かのレーザーが焦がす。
「クソッ!」
 舌打ちし、大きく機体を後ろへと飛ばす。
(なんとかできないものか…)
 容赦なく飛んできたレーザーの追撃をハイ・ブーストで縦横無尽に避け、近くの木の柱の影へと機体を駆けこませ、リュークは気付いた。
「あれは…」
 それを見て、思わず言葉を漏らす。
 つい先まで居た場所。背後にある柱に一発のレーザーが当たり、表面が砕け内部が剥き出していた。
 それは、武器の収納ケースになっていた。そう、柱の正体は、施設に供えられていた武器庫の一部だったのだ。
 そして、その中にかつての『彼』が搭乗機に搭載していたAC用の武装“超高出力型レーザーライフル LR−81 KARASAWA”が収められていた。
「あれならば…!」
 両手の握っていたハンドガンを肩のハンガーユニットに収納し、次の瞬間ファングは隠れていた物陰から飛び出す。
 再び容赦なくレーザーの雨がファングへと降り注ぐ。
 それらを上下左右にトリッキーな機動で避けながら、ファングは割れた収納カプセルの元へと駆けつけた。
「これで…!」
 右手がガッシリとその大柄のレーザーライフルのグリップを握り、壁から引き抜く―
 それはまるで剣士が壁から聖剣を引き抜くような、そんな光景だった。
「悪夢は…!!」
 FCSが右手のソレを認識すると同時にエネルギー供給を開始する。
 LR−81 KARASAWAの銃口が青白く光が灯り、激しくスパークする。
 ファングは跳んでくる攻撃に耐えながら、左手で銃身を支えながら、銃口を中枢へと向けた。
「終わりだッ…!!!」
 トリガーを引く。凄まじい発射音と共に亜音速で雷光の矢は中枢の、かつての恩人二人の所へと飛んでいく。
“ありがとう”
“これで、俺たちの戦いは終わったよ”
 彼らの姿が光に消える直前、リュークの―、アルトセーレの耳元で二人の男女の声が聞こえた…そんな気がした。

 島が揺れる。
 浸食しきった島が崩壊を始める。
 浸食の一途をたどっていた機械群が突如内部から錆始め、砕けていく。
 それと共に浸食された元の大地も、跡形もなく消えて去っていく―
 イグニスはボロボロの機体で島を脱出すべく、グライド・ブーストで駆ける―
「クソッ…。結局、ここもかよ」
 顔を歪ませ、小さく独白する。彼の内心は、複雑だった。Δ“トリニティ”システムの一部を解析し、独自解釈した者達が出した結果がこの惨状だ。
 Δ“トリニティ”システムは、技術をブレイクスルーさせ、飛躍的に発展させる。
 ありえないことを、可能にす
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まろやか投稿小説 Ver1.50