13.『終焉/破壊の牙』

TLとイグニスのファントムが飛んできた。
 グローリー・スターが倒れた事により、彼の統制下にあった防衛機械が停止していた。
「リューク…?お前、リュークだよな?」
「…あぁ。すまない、色々と二人には迷惑をかけた」
 ジュンの問いかけに、落ち着いたいつもの口調でリュークは答える。
「リューク…」
 イグニスは気まずそうに声をかけた。
「その…何だ…、アンタの昔の仲間は―」
「―知っている」
 短く、強く、静かに、リュークは答えた。
 その手は未だに無念で震えていた。
 しばしの沈黙が流れる。
 意を決し、イグニスが口を開こうとした時、ドクンッと彼の中で心臓が大きく高鳴り、何かが反応した。
「!?」
 ただならぬ気配を感じた3人が島の中心部を見上げる。
 空へ向け、伸びる巨大な機械の大木―エンデュミオン。その成長が…、歪に、まるで早送りのように、次々と行われていく。
 スモークマンという統制者がいなくなったことで、その機械の根本である増殖・生産作用に歯止めが利かなくなっていた。
「二人とも。先に島を出て、“開拓者の港”へ行ってくれ。私はこの事態を収拾する!」
 島の中心から空へと伸びる大木を見つめながらそう告げて、リュークはヴァンツァーファングを大きく跳びあがらせた。
 そして、背にブースターを灯し、一直線にその大木の麓へと向かっていく。
「リューク!俺も行く!」
 それに続くようにイグニスもファントムを飛ばす。
「お、おい!?リューク!イグニス!…まったく、先に行っているからな!」
 瞬く間に独りきりとなったジュンは、憤慨しながら二人を見送り、先に島を飛び出した。

 低空をグライド・ブーストで駆け抜ける。
 リュークの感覚との親和性が高まった新たな相棒は、主である彼が目指す所へとひたすら突き進む。
「リューク!!」
 名を呼ぶ声と共に横にファントムが並んだ。
「俺にも何か手伝わせてくれないか?こうなったのも、例のΔ“トリニティ”システムの一片が招いた結果だし…。俺もこの結末を見届けなければいけない気がするんだ!」
「イグニス…」
 必死の訴えを聞いて、リュークは少しだけ口元を緩ませ、小さく“すまない”とつぶやくと、
「ならば、エンデュミオンの内部へと突入する―。援護してくれ!」
 イグニスへ指示を飛ばした。それにイグニスは“まかせろ”と声を大きく答えると、ファングよりも先へと飛び出した。
 2機のACが飛ぶ先―、大木の麓にかつての中央管理棟施設の形跡が見え始めた。
 そこが内部への唯一の突破口だった。
 暴走するエンデュミオンの末端―かつての防衛機構が作動する。
 砲台らしきものを複数形成し、それらが一斉に砲弾を放ってきた。
「邪魔するな!!」
 フルスピードをまま、ファントムは正面を遮る砲台にライフルを連射した。
 そして、複数の砲台を破壊し、軌道を大きく空へと変える―
「今だ!行け!リューク!!」
 その掛け声とともにファントムの背後からヴァンツァーファングが現れる。間髪いれず、右足を振り上げる。
 わずかに見える施設の外壁へ向けて、グライド・ブーストからブースト・チャージを繰り出し、その外壁を轟音と共に射抜いた―
「中枢は…」
 中へと突入しファングはスキャンモードで周囲を見渡し、そして、上を見上げた。
 所々中途半端に浸食された建屋は、まるでかつての西洋の塔のように、円筒状に空へと伸びていた。
「上か…!」
 センサーに大きな熱源が映る。
ブースターを点火し、近くの壁へと飛び移る。
 壁から壁へ。次々と壁を蹴り、ファングは忍者のごとく上へ
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まろやか投稿小説 Ver1.50