13.『終焉/破壊の牙』

「何だこれは…。機体は待機モードになっている?なんとか動くか?」
 それに戸惑いながらもコンソールをいくつか叩き、アルトセーレは機体を置きあがらせる。
「クッ…」
 各部が錆ついているのか、グレーの装甲を軋ませながらその機動兵器は立ちあがった。
「頼む!跳んでくれ!!」
 ブースターペダルを全開で踏む。
 咳込むように火を途切れ途切れになりながらも、その背に火を噴き、アルトセーレを乗せたそれはゆっくりと竪穴を上昇していく―
 やがて、それは部屋の床を突き破り、天井、施設内、そして、外へと飛び出した。
「これは…」
 目の前に広がる光景にアルトセーレは絶句する。
 かつての美しい自然はそこにはなかった。今目の前にあるのは、アメーバのように四方八方へ伸びていく生体機械の大木だった。
 まだその浸食が及んでいないかつての表港、その境界線に、跪く2体のACとそれを見下ろすスモークマンのACグローリー・スター、それに見覚えのある2丁拳銃をACへ向けるフィオナの姿があった。
「フィオナ様!!」
 アルトセーレは慣れぬ機体に苛立ちをぶつけるように、ブースターを乱暴に点火した。

 スモークマンは目の前の幼き少女の行動を理解できずにいた。
 それはあまりにも滑稽過ぎて、あまりにも愚かで、あまりにも惨めな行動に見えた。
 もはや価値のない力なき者が、おもちゃのような拳銃を2丁こちらへ向けて睨んでいる。
 自分の背後には、巨大な大木と化した生体機動兵器エンデュミオンがある。
 叫び一つでその浸食を止めたこの少女は『R』の関係者か―
「ふん、バカバカしい」
 スモークマンの独白を皮切りに、機械の自然浸食が再開される。
「お嬢ちゃん、独りで何ができる?」
 外部スピーカーを通してスモークマンは笑いをこらえるように、眉間にしわをよせながらフィオナに訊いた。
「私は独りじゃない。…私には心強い味方がいる!だから…!貴方にこの島は渡さないわ!!」
「何?」
 強くそう言い放った少女の言葉が、スモークマンの気を逆撫でした。
 その眼は、自分を裏切ったあの『R』と同じ瞳をしている。
「…そうか、そういうことか。お前が、あの男の一人娘か」
 スモークマンが愛機を動かす。
「あの野郎!」
「フィオナちゃんをどうするつもりだ!?」
 それに反応するようにファントムとタイプTLを跳び出した。
 だが、行く手を遮るように生み出されたウミヘビのような戦闘機械が行く手を遮る。
 “そこでみていろ”と戦う2機を横目で流し見て、スモークマンは眼前の弱い存在を見下ろす。
「ヒッ―」
 フィオナは眼前に立つ巨大な敵に強い恐怖を覚えた。
 その側でエンデュミオンの末端である機械のツタが先ほど斬りつけられ、壊れたそのライフルを修復し、グローリー・スターはそれを掴み取る。
「お前のような存在は生かせてはおけん。私の計画を邪魔するようなイレギュラーは抹殺する―」
 対人に使うにはあまりにも高威力なそれをスモークマンは幼き少女に向けた。
(アルトセーレ…!)
 黒き銃口が鈍く光る。そして、その引き金に指掛かかり、一つの銃声が届いた
 だが、それはフィオナへ当たることはなかった。
 銃声の直前に現れた灰色のシルエットの体当たりによって、グローリー・スターは大きく跳ね飛ばされ、その跳躍した弾道はフィオナのはるか向こうの地面を叩いた。
「アルトセーレ!」
 自分の前を滑空しながら着地する灰色の装甲の巨人を見上げて、フィオナは涙を浮かべながら歓喜の声をあげる。
 彼女の近くへ降り立ったソレは、システムエラーを起こして自
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まろやか投稿小説 Ver1.50