13.『終焉/破壊の牙』

が、それまでだ」
 ハイ・ブーストで至近距離までファントムとの距離を責め、その二つの前足を突き立てた―
 刹那、激しい金属のぶつかりあう音共に、ファントムはその装甲の破片をまき散らしながら、弾け飛ぶ。
 飛ばされた先は、先に機械のツタに飛ばされたソルジットの所であった。
「イグニス!大丈夫か?!」
「なんとか…」
 2体はわずかに残された自然の大地の上に立ち、見上げる。
「あと何分持ちこたえられるかな?二人とも…」
 支配下に置いた生体機械群と共に、2機を見下ろすグローリー・スター。
スモークマンは、余裕の笑みを浮かべ、自分より劣る2機をどう倒すか考えていた。
「ん?あれは…」
 ふと、そのモニターに見覚えのあるシルエットが映り込む。
「おい!?あれって―」
 ジュンとイグニスもモニターに映るその影に、思わず息を呑む。
 小さなそのシルエット―その正体は、先までアルトセーレといたはずのフィオナだった。
「お父さん!お母さん!」
 フィオナは薄汚れた格好になりながらも、ACの間に割って入り、化物へ呼びかけるように叫んだ。
「これ以上、この島をめちゃくちゃにするなら…、私がこれで!!」
 その震えながら上げられた両手には、見慣れぬ装飾品のような大柄の拳銃が二つ握られていた。
「何を無駄なこと―…何だと?」
 フィオナへ反応するように、生体機械群のその進行が、ピタリと時が止まったように停止する―

 “近くで、ワタシを呼ぶ声が聞こえる―”
 “あれから、どうなった?”
 アルトセーレの思考が復活する。“あれからどうなった?”
 “確か…”
 “麗しき女神”が眠る島の中枢部で、攻めて来たスモークマンと化物にされてしまったかつての『彼』に襲撃されて…
 亀裂に呑みこまれる直前、フィオナの体を押し出して―

『アルトセーレ』
 自分の名前を呼ぶ声に、アルトセーレは目を覚ました。
 自分の左手がガンホルダーのベルトを掴んでいることにすぐに気づいた。
 地面に走った亀裂に呑みこまれ、少なくとも数十メートルは落ちているはずだ。
 顔を上げ、落ちて来た方を見上げる。かなり遠くに墜ちたと思われる亀裂が小さく見える。その向こうには、狂う機械の化物達がわずかに見えた。
 自分は運よくその人工の竪穴らしきモノの途中、壊れた竪穴の支柱に偶然にもガンホルダーのベルトが引っ掛かり、地面まで2メートルのところで宙づりとなって、止まっていたのだ。
「アイツから強運をもらったかな…」
 ふとイグニスの事を思い出しながら、アルトセーレはその地面へと降り立った。
 薄暗がりの中、共に落ちたと思われるフィオナの姿を探す。どうやら地下にできた空洞のようだ。
「フィオナ様は…、一体どこだ?」
『アルトセーレ』
 見回すアルトセーレの耳にまたその声が響く。
「フィオナ様!?」
 その声が聞こえた方に彼女が歩き出そうとした―その途端。
 センサーが反応したのか、その空洞全体が明るくなる。
 いや、ライトは部屋全体を照らし出しているのではない。“その一点”を照らしていたのだ。
「これは…」
 アルトセーレの前には、まるで武者のような重厚な鉛色の外部装甲を纏った人型機体が跪いていた。
 大きさはACとほぼ同等。特機にしては小さいが、ACにしてはあまりにもゴテゴテしていた。
「旧世代の機動兵器の一種か?ならば…」
 搭乗口は開いている。ここを脱出する必要がある。
 アルトセーレは意を決し、それに乗り込んだ。
 ACと非常に似て、やや異なる操縦席。本来あるべきものがない、何かが足りないコクピットシステム。

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まろやか投稿小説 Ver1.50