う能力を得て、この島でまるでガラパゴス島のごとく、進化を遂げた。
島を守る生き物を象った防衛自立兵器群。それは、その過程で生み出されたものである。
そして、その全ての長に収まるのが…、生態系の中で言う人間―
すなわち、人と瓜二つの異なる金属生命体…通称“麗しき女神”だった。
「…俺があの時見たビジョンは―、この島の歴史だったんだ」
スモークマンを追う機体の中。イグニスは回想しながら、小さく独白した。
「クソッ…」
まるでどこかの本か映画の中の話が、今、目の前で起きている。
イグニスは中破した機体にムチ打ち、山頂を目指す―
(この技術があれば…、この世界のパワーバランスは一気に変わる。…いや、全てが変わってしまう)
(でも、そんなことをしたら…。この世界は、化物だけの世界になってしまう)
アルトセーレは降下するエレベーターの中、かつてセティアから教わったことを思い出していた。
(それを防ぐには、手段は一つしかない。この島の中枢であり、長である者の機能を停止させる)
やがてエレベーターは止まり、自動ドアが開く。
車ごとそこへ入ると、アルトセーレとフィオナの前に広大な空間が広がっていた。外の騒乱がウソのように静まり返った静寂で神聖な空間。
その最奥、広大な蒼い大木―その機械とも、金属とも見てとれぬ、その木々がその中心、まるで祭壇の様な中枢部へと伸びていた。
「お母さん…」
そこに、あの麗しき女神はいた。
まるで木彫りの人形のように、まるで聖母像のように。
薄ら幸せそうに微笑み、彼女は眠りについていた。全ての制御を自身へと接続した状態で…
「あの時のままだ…」
小さくアルトセーレはつぶやいた。まるで幼き少女のように、無邪気に遊び、笑っていたあの頃が彼女の脳裏に蘇る。
「夢の中で、お母さんはお父さんと遊んでいるのかな…」
車を降り、祭壇へと進む二人。
フィオナが近づくのと呼応するように、彼女の足元が薄ら光る。この島自体が反応しているようだ。
そして、彼女がその聖母の前に立った時、
「アルトセーレ…。銃を貸して」
少女はアルトセーレへそう告げた。
「………」
アルトセーレは腰のガンホルダーから銃を取り出した。
口径の比較的大きい拳銃だ。それをアルトセーレは、安全装置を解除し、無言でフィオナに差し出す。
「重いですね…」
「えぇ…」
両手で慎重に、フィオナはそのグリップを握るとゆっくりと、その華奢な両腕を上げた。
「アルトセーレ、ごめんね」
ふと、彼女はそう告げた。
「えっ?」
「こんなことに、貴方を巻き込んで…。貴方を縛りつけて…」
“なぜ?突然そのようなことを?”と聞き返そうとしたアルトセーレの声を遮り、彼女は続ける。
「私、知っていたよ。小さかったけど…、あなたが悩み、悔んでいたこと。お父さんとお母さんを守れなかったって…。それで島を出て行ったんだよね?」
アルトセーレの前でフィオナは涙を流しながら、しかし、その表情は決して崩すことなく、真直ぐに照準の先を見つめていた。
「貴方がもう背負う必要はないの。これでお終いだから…」
「―違う」
「これで―!」
「フィオナ様!!」
刹那、乾いた銃声が静寂な空間に轟いた。
だが、放たれた弾丸は目の前にいる麗しき女神を射抜くことなく、その天井へと突き刺さっていた。
「ワタシが島を出たのは…、こんな…こんな悲しい結末を見るためじゃない―」
フィオナの両腕をギュッとつかみ上げ、アルトセーレは俯き唱える様に小さくそう告げた。
「どうかおやめください、フィオナ様。ワタシは
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