12.『現在(いま)/目覚め』

てもらおう」
 パチンとスモークマンは指を鳴らした。
「お前達が乗っているその規格外と同じ規格外のバケモノでな!」
 すると、3機目の大型ヘリに牽引されていた大きな黒いカプセルが落ちる。
「何だい…?―この気配、まさか!?」
 セティアの眼前でカプセルが割れ、中から大きく、まるで意思を持った枝・木のような機械の塊が四方・八方へ飛び出した。
「なんてこと…」
 レナも思わず口に手をやってしまう。
 まるでキメラ。辛うじて人のような形態を保つソレは、中心に腐乱した遺体のようなものを琥珀色のカプセルで内包していた。
「ここの機械は、進化する。一定の条件を与えれば、自己進化し、その場に最適化する。そして、ある方面からの技術提供で、それに頭脳を与えてみた」
 大きく黒き機械の枝が、背に羽を形成し、大きくそれを広げた。
「素晴らしいだろう?私の造った生体機動兵器―“エンデュミオン”は!?」
 スモークマンが誇らしく声を高々に叫ぶと、その化物は大きく咆哮した。
 機械でできた化物らしからぬ、どこか苦しく、悲しげな叫び声。
「キ・サ・マ・アァァァァァァ!!!」
 それを聞いたセティアには分かった。その化物の中枢に添えられた遺体の正体が”彼”であることを―
 怒りにまかせ、ガトリングガンを容赦なくグローリー・スターへ放つ。
「フンッ」
 鼻で嘲笑い、スモークマンは朝飯前と言わんばかりに乱れ飛ぶ弾丸の中、愛機をハイ・ブーストでヒラリヒラリと、木の葉が舞うがごとく回避する。
「やれ―」
 そして、反撃と言わんばかりにグローリー・スターの影から先の化物が飛びだした。
「!?」
 大きな鉤爪のついた両手でACを弾丸の嵐から守ると、お返しと言わんばかりに体の各部にミサイルランチャーを形成し、それらを放った。
「チィッ!!」
 舌打ちし、機体を半端無理やりブースターで後退する。
「セティアさん!」
 後退するスティングに入れ替わってランティスが専用のスナイパーキャノンを3点バーストで撃ち放った。
 跳躍する弾丸が飛んでいた一つのミサイル弾を打ち貫き、爆発―
 それに連動するように複数のミサイルが誘爆し、大きな火炎ときのこ雲を造り出す。
 だが、それを突き破り、エンデュミオンはその巨体を変形させ、真直ぐスティング・ランティス…いや、その奥の施設へ向かって跳躍した。
「なっ…!?ガッ―!」
 そちらに気を取られ、追いかけようとするランティスの背を3点バースト連射の弾丸が直撃する。
「レナ!?」
 それはグローリー・スターが放ったものだった。
「どこに気を取られている!?」
「―ウッ!?」
 セティアが懐に飛び込んできた強い殺気に、息を呑んだ。
 フォールン・ヴァルキュリア。その常軌を逸した機動で、手負いの特機ヴァンツァー・スティングの懐へ飛び込んだのだ。
 刹那、けたたましい金属を削る音と共にスティングは、セティアの悲鳴とともに紅蓮の炎へと包まれる。
(二人とも―…)
 意識が途切れる直前。セティアは自分の身よりも施設へ向かった二人の身を案じた。

 ロスト・アイランド最深部。
 そこは、かつて金属に生体的特性を与える研究所であった。
 実現不可能と言われた技術提唱は、ある日を境にブレイクスルーを迎える。
 それは“戦争”とΔ“トリニティ”システムの理論だった。
 トリニティシステム理論の独自解釈、“戦争”という実験場で様々な非倫理的な行いが積み重ねられた結果―
 金属という品目、生物という種族の境界を取り払った異端の存在が生まれる。
 そして、それはさらなる実験の果て、進化とい
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まろやか投稿小説 Ver1.50