れる者がいるから。
『リューク・ライゼス』―かつて島を救った英雄の名前。
その名をもらった彼女の父親の名前。
そして―
”この島の最後の希望の名前”
一方、その頃。
物資搬入用に山の傾斜に沿って造られたエスカレーターが、2体の巨人とその間に一台のジープを運んでいた。
「………」
山頂の雲行きは怪しい。風の流れが速いのか、遠くの戦闘の森が燃える臭いと共に、戦場の香りがアルトセーレに事態の深刻さを語りかけていた。
彼女の懐にいるフィオナは、小さく震えている。彼女に備わる第六感がこの島で今起きていることを伝えているのだろうか?
「フィオナ様…」
優しく肩を抱くようにアルトセーレはフィオナの小さな肩へ手をやった。
「大丈夫よ、アルトセーレ。絶対にこの島を守ってみせる。お父さんが命がけで守ったお母さんを、この島を、私が守るの」
まるで自分に言い聞かせているかのようにフィオナは心配するアルトセーレへそう告げた。
エスカレーターがやがてカルデラの入り口に到着し、止まる。
『アルトセーレ』
名を呼ぶ声に見上げると、右隣にいた特機ヴァンツァー・スティングが二人を見下ろしていた。
時間の中、修理をしたのか、ところどころつぎはぎの、武装はAC用のガトリングガンのみというかつての歩く重火器と呼ばれ、恐れられていた時とは程遠い姿になっていた。
『管理棟内部のルートは分かるな?あの施設の最奥部が、この島の中枢機関だ。あとは分かるな?』
「分かっている」
セティアの問いに言葉少なく答えると、アルトセーレは痛む体を押してジープのギアを操作した。
やや乱暴にスキール音を上げ、ジープが何も生えていないカルデラの荒野へと飛び出す。
ジープが真直ぐ施設へと向かったのを見送ると、セティアは、自機のブースターを起動させ、カルデラと登山口の入り口へと向かった。
「よろしくて?」
レナはそれに追従するように愛機を発進させる。
「何が?」
後ろを追従するヴァンツァーランティスは、レーダーに複数の大型の機影を捕える。
「例の機体のこと伝えなくて―」
「構わない」
“ガチャリ”と重く鈍い音をさせ、ヴァンツァー・スティングは両腕に取り付けられたダブルガトリング砲を構えた。
「あの男も、彼を愛したセレナ様も、この世にはもういない。あそこにいるのは…、彼女の亡骸に取り憑いた狂ったシステムだけだ。それを殺せるのは、アイツとあの機体しかいない」
「ましてや、あの方々には渡せない。ですよね?」
けたたましいローダー音と共に、岩影の向こうから3機の大型ヘリとそれに吊り下げられた2機のACが彼女らの眼前に現れた。
ヘリからの牽引フックをパージし、2体の特機の前に2機のACが飛び降りる。
「施設長セティア・クロード。久しいな」
その内の一機。四脚のAC“グローリー・スター”を駆るスモークマンは、目の前の敵機を前に薄ら笑った。
その瞬間、グローリー・スターの頭上で大きな爆発音が二つ轟き、2機のヘリはコマのように回転しながら山肌へ墜ちていく。
ランティスが放ったスナイパーキャノンがヘリのエンジンを撃ち抜いたのだ。
「貴様!」
怒りをむき出しにするフレアに、グローリー・スターは“待て”と左手でサインする。
「その気持ちの悪い声を再び聞くとはな…」
2体のACの後方へ大型ヘリが墜落し、轟音と共に大きくきのこ雲が上がる。
「今度こそ、その機体もろとも砂塵へ返してやるよ」
セティアの言葉にスモークマンは、“相変わらずだな”と苦笑いして答えると、
「ならばお前達こそ砂塵と化し
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