12.『現在(いま)/目覚め』

 タイプTLが先居た場所が二つの火柱のみ残り、全てが燃え尽くされる。
(あんなのまともに喰らったら、ひとたまりもねぇ…!)
「初撃をかわした位で、安心するなよ!」
 ACの設計限界を超えた旋回。
 ブーメランのごとく、スピードをそのままに、ジュンの眼前まで堕ちた戦乙女が迫る―
「何っ…!?」
 回避が間に合わない。紅蓮の炎に燃える六つの刃がタイプTLを襲う。
 刹那、激しく炎とレーザーが渦を描き、空へと舞い上がった。
「オマエら?!」
 ジュンは確認する。目の前に、見たこともない機体がOWと張り合っているのを…!!
「ツァァアアァァ……!!」
 悲鳴にも似た叫び声を上げ、ティオは特機ヴァンツァークロウのヒートブレードに力を入れ、グラインド・ブレードを押し返した。
「くぅ!?また邪魔に入るか、化物どもめ!」
 間合いを取り、フォールン・ヴァルキュリアは怨めしく突如現れた特機を睨みつけた。
「ティオたちか!?遅いぜ!」
 タイプTLの前に降り立ったヴァンツァーエッジは、その真紅のボディに両腕・両足へ硬質ヒートブレードを展開していた。
「イグニスさんは大丈夫ですわ」
 ACよりも一回り大きな機体。同じく特機ヴァンツァーウィザードと一体となったノルンは、ガレキの山から中破したファントムを掬いだし、タイプTLの側へ下ろした。
「すまない、ジュンさん」
 亀裂の入ったヘルメットを脱ぎ捨て、イグニスはジュンへ詫びの通信を入れる。
「何、無事ならいい。それよりも今は…」
 ジュンの視線が眼前に広がるソルジット部隊へ向けられる。
「…皆の者、ここは任せる。奴らを破壊しろ」
 対峙するソルジット隊の長―スモークマンは、ただ黙って眼前に広がる光景を見届けると、大きくブースターを吹かして空へと舞い上がった。
「フレア。作戦変更だ。拠点を一気に強襲するぞ」
「了解しました」
 それを分かっていたかのように、後方から追いついた2機の大型ヘリがグローリー・スターとフォールン・ヴァルキュリアをキャッチ。さらに黒い円筒状の物を吊り下げた大型ヘリと護衛のソルジット3機を連れて山の傾斜を沿って山の頂上へと昇り始めた。
「待てッ!」
 それを追うとしたファントムとタイプTLに容赦ない銃撃が始まる。
 弾丸の嵐を避けるため、回避運動を取った二機の前に、二機の特機が躍り出た。
「イグニス!ジュン!二人は頂上へ向かって!ここは私達が引き受ける!」
 ノルンは愛機の周りに有線遠隔兵器オービットを複数展開して、パルスガンの弾幕を展開した。
「セティアさんとレナが、アルトセーレとフィオナを連れて管理棟へ向かっているわ!二人は合流して奴らを施設直前で喰いとめて!」
 AC二機を守るようにウィザードは盾となって二人の退路を確保する。
「すまない、二人とも…!ジュンさん!行きましょう!」
「あぁ!二人とも死ぬんじゃないぞ!」
 二機の特機を見送って、ファントムとタイプTLは反転・旋回し、グライド・ブーストを機動―、山を頂上へ向けて駆け昇っていった。
「さて、ティオ。残り30分。私達二人でどこまでやれるかしら?」
「恐らくこれが最後の出撃…。これが終われば私達は消える―」
 皺のよった手を見て、ティオは感慨深そうに答えた。戦う前から分かっていたこととだ。
 ヴァンツァーシリーズは規格外故の反動が付きまとう。
 それはもはや人として生きていけなくなることを意味していた。
 フィオナには告げていない。告げれば、彼女は悲しみ、自分を責めてしまう。
 しかし、今はそれでいい。なぜなら、彼女に最後まで付き添い、見守
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まろやか投稿小説 Ver1.50