11.『過去/激突』

から引きずり出された。
『よく無事だったな…。アルトセーレ』
 ワタシのコードネームを知る男は、知る限り二人しかいない。
 一人はスモークマン。そして、もう一人は…、今眼前に居る“R”こと、リューク・ライゼスだった。

 “たわいもない”
 それがフレア・アルトワースのその島に対する今の印象だった。
 ここへの上陸は、今回で3回目だ。
 1回目は、アルトとのコンビによる強制偵察。
 その時は、アルトの撃墜により撤退。
 2回目は、初めてこの島へ制圧戦を仕掛けた時。
 相手へと寝返ったアルトと共に、信用していたあの“R”の妨害により、もう一歩というところで、作戦は失敗に終わったのだ。
 そして、今―
「構わうなッ!我々の方が戦力では上だ!火力を集中して叩きのめせ!」
 フレアの指示と共に複数の太い火線が宙を走った。
 12機編成のソルジット部隊が持つガトリング砲が目の前を遮る蜂の様な警備機械を葬り去る。
 『数の暴力』
 それは2度にわたる過去の戦闘で蓄積された情報によって導き出された結果だった。
 ここの防衛機構は、この島の中心部にある管制棟より、造り出される。
 だが、それは無限ではなく、また一個一個の個体はそれほど強力なものではない。
 その理由として、全て動物や昆虫を象った形しかこれまで出現していないからだ。
 ACと同じ、完全な戦闘兵器と言える代物は今現在遭遇していない。
(恐らく、現れるとすれば例の特機“ヴァンツァー”シリーズのみだ)
 唯一、フレアが知る限りその特機は、ACと肩を並べる兵器だった。
 各個が能力に特化した力を持ち、それらを複数の組み合わせで戦闘に適したパッケージとして現れる。
 2回目の侵攻失敗の要因の一つだった。
『隊長、山間部へのルートを表示します。そのまま進軍を』
 オペレートする兵の声が聞こえ、フレアは愛機を進めた。
 それに連動するようにソルジットの軍団が森を出て、山間部の未舗装路を駆けあがっていく。
 鉄の兵の軍団は、やがて大きなレドームがある観測施設らしき建物が現れた。
 左右には崖。そして、道はボロボロの施設を貫き、頂上のカルデラへと続いている。
『各機、気をつけろ。何かがある』
 フレアの兵士としての感が彼女へそう告げた。4機菱形に陣形を固め、施設へと踏み込んでいく。
「…何もないようですね」
 ソルジットを駆る、ある若い兵士がフレアへ告げた。
 この兵士は今回が初陣だ。フレアも気にかけている将来有望の兵士だ。
「あぁ、だが奴らの事だ。この先には防衛戦を張れる場所はもうない。恐らく、ここが最後の防衛網になるだろう」
 上空待機型のリコンを打ちあげ、フォールン・ヴァルキュリアは周囲を探索する。
 機影と言う機影はない。強いてあるなら、生活用だったと思われる中規模のガスタンクとECMが複数―
「待て!止まれ!」
 フレアがそう叫んだとき、兵団はその直前まで進んでいた。
 刹那、ECMが作動したと同時に、“ドンッ!”と左右の崖の方で爆発音がし、左右から巨大な岩の塊が複数流れ込んできた。
「ッ!」
 舌打ち、反射的にACを跳躍させ、ブーストを吹かす。
 瞬く間に岩を含んだ大量の土砂が、施設ごと回避が間に合わなかったソルジット3機を呑みこみ、鉄屑に変える。その中にあの新人の機体も合った。
フォールン・ヴァルキュリアは近くの施設建屋の壁をサルのように張り付いて、壁を蹴り、残るソルジット7機と共に空高く跳びあがった。
―と、今度は複数の、異なる種の火線がソルジット2機を襲う。
「罠か!?」
 無残に爆散する味方を見
[2]前へ|[3]次へ
ページ移動[1 2 3 4 5 6]
[7]TOP [9]目次

まろやか投稿小説 Ver1.50