くまで食い止めるが精いっぱいなのですね?」
レオナの問いかけに、セティアは黙って頷いた。
「そう、長時間の戦闘は無理。せめて持って1時間」
ティオが変わりに答える。
「だが、それでいい。1時間の間で彼らを一度足止めできれば、その間にこの島の封印を解けない様に細工ができる」
“駄目!”と刹那少女の声が響いた。その声の主はフィオナだ。
「それはどういう―」
「それは駄目!お母様を殺すなんて私にはできない!」
質問しようとしたジュンを遮って、フィオナはそう言い放った。
それを聞いたイグニスら3人は、言葉の意味を知った。
「フィオナ…」
涙を浮かべる彼女の前に、セティアは立ち、
「私もつらいし、本当ならこんなことはしたくない。だが、これ以上事態を悪化させるわけにはいかない」
悲しみを噛み殺しながら、ゆっくりとそう告げた。
それに“でも…でも…”と答えながら、フィオナは言葉を詰まらせ、それ以上反論できなかった。
作戦は、決まった…。
何も感じない兵士。考えず、ただ目的を達成するために事を為す。
そんな風にワタシが、ワタシで無くなりつつあったその頃…
その依頼はワタシとフレアの元に飛び込んできた。
“ロスト・アイランド”への強行潜入。
目的は二つ。この任務の前、同じく強行潜入した青年兵“R”を探すこと。
もう一つは、この島の最深部を偵察し、そこにある生体機械技術に関する情報を確保すること。
その作戦決行の日。AC“ソルジット”へと乗り込み、ワタシはフレアと共にロスト・アイランド領海を飛んでいた。
ロケットブースターを背面に取り付け、未確認の無人兵器の防衛網を強行突破する―
一言で99.99%成功するはずがない。今まで数多くの者が挑み、敗れて来たのだ。
最高と言われていたあの“R”でさえ…
その圧倒的な物量に。未確認が故の脅威に。
無謀とも言える、神風特攻に近いその戦闘は、ワタシの中にちょっとした綻びを生んだ。
“あの人にとって、ワタシは必要ではないのか?なぜこんな無謀なことをさせるのか?”
精密機械のように淡々と行く手を遮る鉄のウミヘビを駆逐していく中、ワタシはそう考えた。
どうしてその疑問がその時過ったのか分からない。ただ、それによってワタシの動きが一瞬遅れたのは事実。
撃ち漏らした一匹が足元に食らいついた。
堕ちる―
砂浜まで数百メートル。
重力で強制的に空中より引きずり落とされたワタシとソルジットは、ボールのように水面をバウンドしながら、その島へ辿り着いた。
“フレアはどうなった?”
義理の妹の姿はない。やられたか、あるいは、引き返したか…
“考えている暇はない”
島の光景を眺める間も、仲間の安否も考えている間もなく、敵を引き裂く音が周囲から聞こえる。
ACが喰われる。化物の触手に―
火花が散る。強硬なACの装甲がまるで役に立たない。絶望を知った瞬間、無慈悲な回転する刃が眼前のモニターを引き裂き、ワタシへと迫った。
『セレナ、やめろ!殺すことはない!』
だが、ワタシが死ぬことはなかった。息がつまりそうな状況下。眼前に見えるチェーンソーのような刃。
『その機体…。お前トゥーハンドか?』
聞き覚えのある声が聞こえる。それと同時に伸びていた触手は引いていき、
『待っていろ』
目の前の敗れたハッチが強制的にこじ開けられた。
まぶしい太陽と共に、その者のシルエットがワタシを覗きこみ、大きく手を伸ばした。
“彼と初めて会った日”と重なる前の光景に、ワタシは自然と手を伸ばし、ワタシはACのコクピット
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